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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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豆腐屋は、豆腐しか作れない

よく引用される小津監督の有名な言葉に「豆腐屋は、豆腐しか作れない。」というものがあります。

この言葉を最初に聞いたときの印象は、まず「スマートな開き直り」という印象でしたが、しかし、直に「かなり追い詰められた棄て台詞」のようにも思えてきました。

つまり、そこには、映画作家・小津安二郎を絶えずおびやかしていた世評というものがあったのではないかという気がしてきたのです。

去年の12月に放送していたBSの小津監督特集の番組の中で、ゲスト出演していた山田洋次監督は、松竹での小津安二郎の印象はどうだったかという質問に答えて、(当時は誰もがそうだったと思うが、と前置きして)、黒澤明や木下恵介、川島雄三には魅かれていたけれども、家庭内の退屈な小さな事件を飽くことなく繰り返し古臭い手法で骨董品のような作品を撮り続ける小津監督には、別にどうという関心も持たなかったと正直な感想を述べられていました。

多分それが、当時の映画愛好家をはじめ多くの一般大衆の小津安二郎という監督に抱いていたごく普通のイメージだったと思いますし、また、起伏のあるドラマを描き切り一歩先んじて国際的な評価を得た映像作家・黒澤明や溝口健二が脚光を浴びたということに照らしても、その当時、世界がどういう作品を求め、そして評価したのかという時代的雰囲気もなんとなく分かると思います。

小津安二郎に対する世評には、卓越した映画技法への高い評価とはウラハラに、家庭内の小さな事件を相も変らぬ古臭い手法で繰り返し撮り続ける小津安二郎の方法をもってして、はたして戦争の悲惨や、荒廃した日本の混乱の只中にある戦後社会や失意の日本人を描き切ることができるのか、という小津作品の存在意義そものを問う厳しい批判が絶えず小津監督に浴びせかけられていたといいます。

いま目の前に厳然とあるこの悲惨な現実を描き切ることができず、現実に働きかける力を持たない映画人としての存在そのもの、あるいは資質を致命的な欠陥として疑問視する厳しい問いでもありました。

そして、小津安二郎が、戦争の悲惨をどのように受け止めていたのか、という問いに対するひとつの答えが、迷いと葛藤に満ちた「風の中の牝鶏」だったのですが、この小津監督らしからぬ作品を撮ったことの混迷から更なる迷いと葛藤を経て生み出された作品が「晩春」でした。

「豆腐屋は、豆腐しか作れない。」という小津監督の言葉が、ひときわズシリと重く感じられます。
Commented by mbt online at 2013-11-18 22:33 x
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Commented by mbts paris at 2013-12-28 23:43 x
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by sentence2307 | 2004-12-07 23:15 | 小津安二郎 | Comments(3)