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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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トリュフォーと小津安二郎

僕の知る限り、トリュフォーは最初、小津作品に対して、どうも好意的ではなかったように聞き及んでいます。

1965年、フランソワ・トリュフォーは、小津作品について次のようなコメントを残しています。

「いつもテーブルを囲んで無気力な人間たちが座り込んでいるのを、これも無気力なキャメラが、無気力にとらえている。
映画的な生命の躍動感がまったく感じられない。」

つまり、トリュフォーは、小津の映画は死んだ映画だと断定し嫌悪感をあからさまに表明しています。

フランス・ヌーヴェルヴァーグに多大な影響を与えたといわれている中平康作品や溝口健二作品の、生きることを真正面から切実に問う激しい作品が評価されたことを考えれば、このトリュフォーの感想は無理からぬものだったと思います。

そして、この小津作品へのトリュフォーの「嫌悪感」が、現在僕たちが当然のように認識している小津監督への「敬愛」に変わるまでに、資料的には、1975年の来日時のコメント(自らの誤謬を認め、小津作品の魅力に囚われていることを表明しました)を待たねばなりませんでした。

トリュフォーが評論活動を展開していた時期を考えれば、その変節には、きっと20年近い歳月を要したに違いありません。

それが何を意味しているかと言えば、ひとつにはヌーヴェルヴァーグそのものの作品的な変化、映画を創作していく過程での必然的な成熟が、まずはあげられるでしょう。

「大人は判ってくれない」を経て「恋のエチュード」や「アデルの恋の物語」に至るトリュフォーの創作者としての成熟が小津作品を「見えさせた」のだと思います。
Commented by Susann Lugabihl at 2013-04-05 09:54 x

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by sentence2307 | 2004-12-12 13:00 | 小津安二郎 | Comments(1)