ヒーローと悪役
2004年 12月 15日
アメリカCBSテレビの特別番組「AFI’s 100 Years…100 Heroes & Villains」だそうです。(BEST 1~2 までの詳細は②参照)
それぞれの1位として、まず、ヒーローの方は「アラバマ物語」のアティカ・フィンチ弁護士(グレゴリー・ペックが演じました)と、悪役は「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士(もちろん、名優アンソニー・ポプキンスですよね)が選ばれています。
アメリカ映画に登場する約400のキャラクターを対称に、俳優・監督・批評家・映画業界関係者ら計1500人が投票して選んだということですが、最新のキャラが選ばれて当然と思っていた先入観が軽く裏切られることとなったこの結果は、拍子抜けするくらいオーソドックスでマトモすぎて、かえって意外な印象を受けてしまいました。
この結果を見ると、アメリカの業界人て僕たちが考えているよりも、更に、もっともっと保守的なのかもしれないな、と考えたとき、いやいや、逆に、そこにこそ彼らの映画に対するきちんとした歴史観があるのだろう、と思い至り、彼らの先輩たちが営々として築いてきた映画の歴史に対する深い愛情と敬意を実感しないわけにはいきません。
アメリカ映画が与えるあの何もかも包み込んでしまうかのようなおおらかな豊穣感は、もしかすると、自国の映画史からエッセンスのすべて吸収し、その精神を次の世代に受け継いでいこうとする貪欲さと志の高さに基づいているのかもしれませんね。
僕たちが同じように日本の映画の歴史から、これほどの愛情と敬意を払い、いままで作られてきた諸作品を理解し吸収しようとしているかどうか、残念ながら確信する自信はありません。
アメリカのそういう志の高さをまるで表わすかのような、今回のヒーロー第1位となったアティカ・フィンチ弁護士は、人種差別の偏見が強い南部において白人女性をレイプしたとして訴えられた黒人男性を弁護して正義を貫く高潔な弁護士の闘いを描いた作品です。
妻を失い男手ひとつで娘と息子を育てながら、どこまでも誠実なアメリカ市民を格調高く演じていました。
今年の初めBSでハリウッド作品BEST100作品を選ぶ番組で、この「アラバマ物語」を語るゲストのバート・レイノルズが、父親を介してと前置きして、この作品を見て始めてアメリカの人種差別を知ったときの驚きと同時に、その差別に敢然と立ち向かう高潔な正義もまたこのアメリカにあることを知った誇らしさを目頭を潤ませながら語った印象深いシーンが忘れられません。
ヒーロー部門
1位は、「アラバマ物語」グレゴリー・ペック演じるフィンチ弁護士
2位は、「レイダース/失われたアーク」ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズ
3位は、「ドクター・ノオ」のショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンド
4位は、「カサブランカ」ハンフリー・ボガード演じるリック・ブレイン
5位は、「真昼の決闘」ゲイリー・クーパー演じるケーン保安官
6位は、「羊たちの沈黙」ジョディ・フォスター演じるクラリス・スターリング
7位は、「ロッキー」シルベスター・スタローン演じるロッキー・バルボア
8位は、「エイリアン」シガニー・ウィバー演じるエレン・リプリー
9位は、「素晴らしき哉、人生!」ジェームズ・スチュアート演じるジョージ・ベイリー
10位は、「アラビアのロレンス」ピーター・オトゥール演じるT・E・ロレンス
悪党部門は
1位「羊たちの沈黙」アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士
2位「サイコ」アンソニー・ホプキンス演じるノーマン・ベイツ
3位「スターウォーズ/帝国の逆襲」のダース・ベイダー
4位は、「オズの魔法使い」マーガレット・ハミルトン演じる西の魔女
5位は、「カッコーの巣の上で」演じるラチェッド婦長
6位は、「素晴らしき哉、人生!」ライオネル・バリモア演じるポッター氏
7位は、「危険な情事」グレン・クローズ演じるアレックス・フォレスト
8位は、「深夜の告白」バーバラ・スタンウィック演じるフィリス・ディートリクソン
9位は、「エクソシスト」リンダ・ブレア演じる
10位は、「白雪姫」の女王
ヒーロー、悪役の両部門で唯一ともにランクインしたのは、アーノルド・シュワルツネッガー演じるターミネーター。
「ターミネーター」は、悪役部門22位、「ターミネーター2」は、ヒーロー部門48位にランクインしました。
このほか、実在する英雄として「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)が13位、
「エリン・ブロコビッチ」のエリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)が31位など。
人間以外の悪党では、「2001年宇宙の旅」のコンピューターHAL9000が13位、
「ジョーズ」のサメが18位などとなっています。