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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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「マイ・ベスト10」

なにせ性分なのでどうにも仕方がないのですが、映画を10本見るごとに、どうしても順位をつけずにはいられません。

むかしからずっと続いているこの習慣(ほとんど性癖です)を知った友人も「そんなことして、どうする」と訝しがりますが、「したいから、しているだけ」と、まるで小学生のような受け答えしかできないでいます。

べつに、このことを吹聴して、世間に対してどうこうする積りなど毛頭ありません。

たとえば、メモを大切に保管して2000本溜まったら(安打じゃねーし)集大成の一覧表でもつくって世界に向けて発信するとかなんて、ひとむかし前なら、こんなこと、大風呂敷のただの戯言として失笑されるのがオチだったのが、いまでは世界がネットで繋がっていて情報が世界の隅々にまで瞬時に拡散する時代です、到底冗談なんかでは済まされるわけもなく、こういう無責任な言いっぱなしは深刻な混乱を招きかねないので、そのへんは慎重に発言しなければならないと肝に銘じています。

このあたりがインターネットの面倒くさいところですよね、それに情報がまたたく間にグローバル化する「便利さ」が行き過ぎると、「自由」のはずのネット社会の盲点をつくみたいに、異常にナーバスな部分(弱者に対する「差別」意識とか、犯罪のたくらみとかテロの陰謀など)が密かに醸成され、単なる言い回しなどにも生真面目に反応し、皮肉にも、逆にひと言も発せられない「言葉の魔女狩り」みたいな息苦しい時代が迫っているような不吉な予感がします(いや、いまだって、十分「そう」かもしれません)。

この世から差別をなくすために、一挙手一投足にびくびくと気を使い、他人の行動にも異常に反応して、お互いを監視し合うサイト狩りに狂奔し、そうしたことに無知・無頓着な人々の揚げ足をとるみたいに暴き出しは糾弾し、正当化された「いじめ」みたいに苛烈に、まるで集団リンチのような集中攻撃をかけて追い詰め、自殺などという陰惨な結果を再生産しているのではないか(そもそも、その「正義」っていったいなんなんだと問いたいです)と胸を痛めているこの頃です。

さて、「映画を10本見ると、それごとに順位をつける」という自分のオタク的な私的行事(今どきの言葉でいえば「ルーティン」ですが)のことを書きますね。

あのとき、「そんなことして、どうする」と訝しがられた友人に、自分がささやかながらも映画のコラムを書く習慣があること(いずれにしても、べつに大したものではありませんが)を知らせていたら、せっせと「マイ・ベスト10」を考えたり、思いついたフレーズを手帳に書きとったりしていたことも、きっと友人はあんなふうに訝しがらずに済んだかもしれません。

友人には、自分の趣味は「映画鑑賞」と漠然と伝えていたので、そのへんで「いつもなにをそんなにメモしているわけ?」と戸惑わせてしまったことを、いつか機会があれば弁解したい気持ちです。

しかし、ただのコラムとはいえ、やはり「書く」よりも「見る」方が、はるかに楽なので、あるひとつの作品にこだわり続けていると、ずるずると書けない状態を長引かせてしまうので(なんだって長引かせれば煮詰まるのが当然です)、その期間に日々見ている映画の在庫をひたすら増大させてしまうという状態が常にあるわけですが、問題はテンションの高め方が、「書く」ことと「見る」こととは、まったく違うために、その切り替えが容易でないというところにあるかもしれません。

それに、どう転んでも自分には到底書くことのできないジャンルの作品というものがありますし、いざ書き始めても、モタモタしている間に「見る」方がどんどん捗って本数が増え、さらに10本に届いてしまったなんてこともざらにあります、自分の日常はその繰り返しで成り立っているといってもいいくらいです。

それに、「さらなる10本」の方が、現在モタモタとかかずらわっている作品より、はるかに優れた作品ぞろいだったりした場合など(多くの場合は「そう」なります)、かなり悲惨な状況で、「いったい自分は、なにをやっているんだ」みたいな惨憺たる気分におちいるわけなのです。

嫌味がましくなるかもしれませんが、例えば、安藤尋監督の「花芯」のコラムにグズグスとかかずらわっていた時が、まさに「それ」でした。
あのコラム全体に漂っている「まったく、もう」という苛立ちの半分は、その背後に、もっと書くに値する優れた作品があったこと、しかし、現状は、どうでもいいような作品に時間をとられていて、そのあいだにも、すぐれた作品を検討する機会を失い続けている外的圧力に対する腹立たしさだったと思います。

恨みごとみたいになりますが、今回は、「花芯」のコラムにかかずらわっていた間にやり過ごさねばならなかった作品群について、「マイ・ベスト10」を検討するみたいに(いつもの方法です)書いてみようと思い立ちました。

まずは、ラインナップを見た順に書きますね、数えていませんでしたが、当然10本は超えていると思います。

「ドリームホーム 90%を操る男たち」(2014)監督:ラミン・バーラニ
「ニーチェの馬」(2012)監督:タル・ベーラ
「スモーク」(1995)監督:ウエイン・ワン
「朗らかに歩め」(1930)監督:小津安二郎
「さよなら歌舞伎町」(2014)監督:廣木隆一
「座頭市 地獄旅」(1965)監督:三隅研次
「箱入り息子の恋」(2013)監督:市井昌秀
「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」(2011)監督:瀬田なつき
「ターザン:REBORN」(2016)監督:デヴィッド・イエーツ
「カミハテ商店」(2012)監督:山本起也
「裸足の季節」(2015)監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
「ブルックリン」(2015)監督:ジョン・クローリー
「教授のおかしな妄想殺人」(2016)監督:ウデイ・アレン
「ティエリードグルドーの憂鬱」(2015)監督:ステファヌ・ブリゼ
「裁かれるは善人のみ」(2014)監督:アンドレイ・スビャギンツェフ
「ひつじ村の兄弟」(2015)監督:グリームル・ハウコーナルソン
「黄色いからす」(1957)監督:五所平之助
「ザ・ギフト」(2015)監督:ジョエル・エドガートン
「セトウツミ」(2016)監督:大森立嗣
「若者のすべて」(1960)監督:ルキノ・ヴィスコンティ
「ジュラシック・ワールド」(2015)監督:コリン・トレヴォロウ
「ある終焉」(2015)監督:ミシェル・フランコ
「ジュリエットからの手紙」(2010)監督:ゲーリー・ウィニック
「座頭市 牢破り」(1967)監督:山本薩夫
「地獄」(1979)監督:神代辰己

ざっとこんな感じです。なるほど、なるほど、25本になりますか。

一応、見た順に並べましたが、この作品群からベスト10なるものを選び出すとなると、これはもう相当な難題です。

しかし、それがまた愉しみでもあるんですよね。

さて、上記の作品のうち、自分的に「ベスト10」としてイメージできない作品を、まずは抜き出してみました。

【「ベスト10」としてイメージできない作品とその理由】
*「ドリームホーム 90%を操る男たち」・・・最初被害者だった主人公が、加害者の側に加担しようとした悪への決意が明確に描かれていないのでは。
「朗らかに歩め」・・・もう少し気持ちに余裕があるときに見たら小津ワールドを堪能して、あるいは素直に評価できたかも。
「座頭市 地獄旅」・・・三隅研次監督作品として失望した。あの「座頭市物語」の孤独の深さはどこへいった。
「箱入り息子の恋」・・・夏帆のオヤジ役・大杉漣の演技は、アレで良かったのか。
「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」・・・怖い話なら、それなりの語り口で話してほしい。
「ターザン:REBORN」・・・今度のターザンは、とても小男に見えたのだが、ああいう理解でよかったのか。
「カミハテ商店」・・・自殺の名所の脇にある売店の老女の話で、そのたびごとに自殺者に立ち寄られて、彼女、最後まで鬱から抜け出せない。
「黄色いからす」・・・母親に甘えて纏わりつく設楽幸嗣の嫌らしさに、ちょっと嫌悪感を持ちました。
「ザ・ギフト」・・・ギフトが意味する最後のこのオチ、以前どこかで見たような。それともこれってリメイク。
「ジュラシック・ワールド」・・・改めてみると、ストーリーは、ジョーズそのまま。緊迫感だけが欠如。
「ジュリエットからの手紙」・・・恋でも愛でも、むかし失ったものは、それなりの理由があってそうなったわけだから、いまさら取り戻せないし、失われたものは、そのままでいいというのが、自分の立場です。
「座頭市 牢破り」・・・山本薩夫に座頭市を撮らせるなって。結果は最初から見えてたよ。あの「先生」とやらを、最後に腹黒い詐欺野郎だったとラストでバラしたら、結構座頭市らしくなっただろうに。タケシはそうしてたよね。
「地獄」・・・前振りのストーリーが理屈っぽくて長すぎて、これじゃ中川信夫に到底敵うわけない。


そして、いよいよ「ベスト10」作品です。

評価基準は、以下の5項目

荒涼たる風景、または心象風景が、自立した映像として捉えられている
荒廃した都市に見捨てられた人々の絶望と希望
孤独の深さと物語の完結度
痛切な演技
シナリオのちから


そして【「ベスト10」としてイメージできる作品】は、以下の通り

「ニーチェの馬」(2012)監督:タル・ベーラ
「裁かれるは善人のみ」(2014)監督:アンドレイ・スビャギンツェフ
「ひつじ村の兄弟」(2015)監督:グリームル・ハウコーナルソン
「ブルックリン」(2015)監督:ジョン・クローリー
「若者のすべて」(1960)監督:ルキノ・ヴィスコンティ
「スモーク」(1995)監督:ウエイン・ワン
「さよなら歌舞伎町」(2014)監督:廣木隆一
「裸足の季節」(2015)監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
「教授のおかしな妄想殺人」(2016)監督:ウデイ・アレン
「ティエリードグルドーの憂鬱」(2015)監督:ステファヌ・ブリゼ
「セトウツミ」(2016)監督:大森立嗣
「ある終焉」(2015)監督:ミシェル・フランコ

一応、順不同ですが、上位5本は、圧倒的な映像のチカラで、ねじ伏せられてしまった5作品です。





by sentence2307 | 2017-06-17 22:26 | 映画 | Comments(0)