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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


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生誕百年特集・斎藤寅二郎と野村浩将

フィルムセンターで今年生誕百年を迎える6人の日本映画監督の回顧上映(これまで稲垣浩、豊田四郎、成瀬巳喜男特集を実施してきました)も、いよいよ喜劇映画の神様・斎藤寅二郎と、「愛染かつら」1938などのメロドラマ作家として知られる野村浩将監督の特集です。

 斎藤寅二郎(1905-1982)は1922年に松竹蒲田に入社して助監督の修業を積んだあと、1926年にわずか21歳で監督デビューします。現存する「石川五右ヱ門の法事」1930をはじめ、数多くのナンセンスなスラップスティック・コメディをつぎつぎと発表し、またたく間に喜劇映画の旗手となります。東宝に移籍したあとも、「エノケンの法界坊」1938を皮切りに、古川緑波、横山エンタツ、花菱アチャコ等が主演する娯楽映画の傑作を生み出し、豊かな発想とギャグの連発により日本映画史に残る喜劇の傑作の数々を残しました。

 野村浩将(1905-1979)は1924年に松竹蒲田に入社し、1930年に監督デビュー、彼の初期のヒット作は、磯野秋雄、三井秀男(弘次)、阿部正三郎の3人が繰り広げる喜劇、「与太者」シリーズですが、このシリーズは1931年から1935年までの間に11作品が製作され、野村は全作を監督しました。さらに野村の名声を決定付けたのは、1936年の「人妻椿」(川崎弘子主演)や、1938年の大ヒット映画「愛染かつら」(田中絹代主演)などに代表される女性メロドラマです。戦後は主に新東宝で、喜劇、メロドラマ、サスペンス、戦記ものなど会社が求めるあらゆるジャンル映画を柔軟にこなす監督として活躍しました。


【斎藤寅二郎】

★モダン怪談 100,000,000円[松竹グラフ版]
斎藤寅二郎の絶頂期といわれている無声映画期の作品は残念ながらほとんど現存してないが、この作品は2004年に映画保存協会が発掘した16mmのダイジェスト版(松竹グラフ版)を35mmにブローアップしたもの。駆け落ちした若い男女(斎藤達雄・松井潤子)が赤城山に迷い込み、国定忠次の埋蔵金を発掘する人々や、忠次の幽霊(小倉)に遭遇するというナンセンス喜劇。松竹蒲田が「モダン怪談」というテーマで脚本を募集し、当選した脚本を映画化した。封切時は1399mの作品であったが、現存部分は2割ほどである。
(29松竹蒲田)(監督)斎藤寅二郎(原作)大森文雄(脚本)池田忠雄(撮影)武富善雄
(出演)斎藤達雄、松井潤子、坂本武、吉川満子、小倉繁
(15分・16fps・35mm・白黒・無声)

★のど自慢狂時代
当時の人気ラジオ番組のNHK「素人のど自慢」(1946年開始)を題材にした喜劇。東映の前身である東横映画は1947年に大映京都第二撮影所(現在の東映京都撮影所)を借用して映画製作をはじめた。本作は斎藤が美空ひばりを映画デビューさせた作品として知られるが、上映プリントにひばりのシーンは存在しない(公開当時は約80分)。ピアニストの和田肇は日活アクション・スター和田浩治の父である。
(49東横映画) (監督)斎藤寅二郎(原作)サトウハチロー(脚本)八住利雄(撮影)友成達雄
(出演)灰田勝彦、並木路子、花菱アチャコ、古賀政男、和田肇、清川虹子
(50分・35mm・白黒・不完全)

★石川五右ヱ門の法事[パテベビー短縮版]
「モダン怪談 100,000,000円」と並び、無声期の斎藤寅二郎作品の魅力を堪能できる快作。石川吾郎(渡辺篤)は、恋人の父親(坂本武)から結婚を反対されて撲殺される。成仏できずに幽霊になって甦った石川の前に現れたのは、先祖の大盗賊・石川五右衛門の幽霊であった。松竹の名子役である青木富夫(突貫小僧)が五右衛門の従者として腕白振りを発揮。上映プリントは、近年発見された9.5mmのパテベビー版を35mmにブローアップしたもの。
(30松竹蒲田) (監督)斎藤寅二郎(原作)絹川秀治(脚本)池田忠雄、伏見晁(撮影)武富善雄
(出演)渡辺篤、香取千代子、坂本武、横尾泥海男、青木富夫
(21分・16fps・35mm・白黒・無声)

★突貫驛長
古川緑波演ずる駅長の人情あふれる活躍を描くことで、戦時における陸運の重要性を強調する喜劇。「あまりにいわゆるドタバタ喜劇的構成」であったため、脚本検閲時に改訂を要求された。原作は「陸運新報」に連載された松下井知夫の4コマ漫画。映画の封切直前に、古川緑波は同名作品の舞台化も行っている。
(45東宝) (監督)斎藤寅二郎(原作)松下井知夫(脚本)如月敏、志村敏夫(撮影)立花幹也(美術)北川恵笥(音楽)伊藤昇
(出演)古川綠波、英百合子、志村喬、山根壽子、岸井明、藤間房子、渡邊篤、高勢實乘、三谷幸子、河野糸子、石田守英、堀井英一、横尾泥海男、坊屋三郎、白川道太郎
(62分・35mm・白黒)

★爆彈花嫁
1932年に佐々木啓祐監督が無声映画として完成させた「花婿奮戦」は、長い間お蔵入りとなっていたが、この作品は斎藤寅二郎が追加撮影して、改題のうえサウンド版として再編集をほどこしたもの。尺八の師匠(谷麗光)の娘(柳井小夜子)をめぐって、裕福な弟子(小倉繁)と貧乏な弟子(阿部正三郎)が恋の鞘当を繰り広げる。ロシアのゴスフィルモフォンドより里帰りしたフィルムの1本。
(35松竹蒲田) (監督)佐々木啓祐(原作脚本)池田実三(撮影)前野直之助(編集)斎藤寅二郎
(出演)谷麗光、柳井小夜子、小倉繁、阿部正三郎、出雲八重子
(23分・24fps・35mm・白黒・サウンド版[一部無声])

★子寶夫婦
斎藤寅二郎がしばしば好んでとり上げた題材のひとつに、子沢山の大家族を巡る喜劇がある(「子宝騒動」1935、「金語楼の子宝騒動」1949、「お父さんはお人好し」シリーズ[1955-56年])。本作は曽我廼家五郎の舞台を映画化したもので、15人の子供を持つ平田家の物語。娘のひとり純子(三谷幸子)は、クラスの恵美子(三邦映子)に怪我をさせてしまう。恵美子は、純子の父が働く会社の社長令嬢であり、それを知った父は当惑する。
(41東宝東京) (監督)斎藤寅二郎(原作)曽我廼家五郎(脚本)志村敏夫(撮影)木塚誠一(美術)北猛夫(音楽)飯田信夫
(出演)徳川夢声、英百合子、三谷幸子、月田一郎、岸井明、渡邊篤、淸川玉枝、三邦映子
(59分・35mm・白黒)

★エノケンの法界坊[短縮版]
1938年、斎藤寅二郎は前年に創立された東宝に招かれ、古巣の松竹をあとにした。この作品は移籍後の第1作で、歌舞伎の演目「隅田川続俤」に題材をとったオペレッタ風時代劇。金に目のない生臭坊主(榎本健一)が宝物「鯉魚の一軸」を手に入れるために悪戦苦闘。本作以降、斎藤は東宝で古川綠波や横山エンタツ・アチャコといった新たな俳優たちと出会いながら、戦時下の喜劇映画を模索してゆく。
(38東宝東京) (監督)斎藤寅二郎(脚本)和田五雄、小川正記、小國英雄(撮影)鈴木博(美術)中古智(音楽)栗原重一
(出演)榎本健一、宏川光子、小笠原章二郎、柳田貞一、中村是好、如月寛多、英百合子
(53分・35mm・白黒)

★思ひつき夫人[短縮版]
大阪朝日新聞に連載された平井房人の漫画「家庭報国・思ひつき夫人」の映画化。映画化にあたり、さまざまな思いつきで近所の人々に奉仕する“思ひつき夫人”よりは、八百屋の夫婦(花菱アチャコ・清川虹子)とその娘(霧立のぼる)が主に描かれている。上映プリントは「アチャコ青春日記」として戦後に改題再公開されたときのもので、“思ひつき夫人”を演じる竹久千恵子はほとんど登場しない(公開当時は約77分)。
(39東宝京都) (監督)斎藤寅二郎(原作)菊田一夫(脚本)小國英雄(撮影)友成達雄(美術)吉松英海(音楽)山田英一
(出演)竹久千惠子、花菱アチャコ、清川虹子、霧立のぼる、岸井明、山野一郎
(50分・35mm・白黒・不完全)

★親子鯨
南氷洋の捕鯨船で働く船員父子の愛情を描いた喜劇。ただし捕鯨場面は実際に南極ロケを敢行した訳ではなく、捕鯨の様子を捉えた記録映像を挿入したもの。捕鯨会社の小間使いをしている父の横山(渡邊篤)は、息子の福太郎(川田義雄)に捕鯨船の砲手をしていると偽っていた。福太郎が学校を卒業して帰省するので、横山は船長に頼んで一日だけ砲手にしてもらうことになる。
(40東宝東京) (監督)斎藤寅二郎(脚本)志村敏夫(撮影)立花幹也(美術)北辰雄(音楽)服部良一
(出演)渡邊篤、川田義雄、英百合子、山根壽子、小宮一晃、清川虹子、立花潤子、柳谷寛、若宮金次郎、杉寛
(75分・35mm・白黒)

★東京五人男
終戦後に疎開先から東京へ帰ってきた5人の男たちが、復興のために尽力する物語で、占領軍が指導した“民主主義思想の育成”という啓蒙性と、喜劇俳優たちの演技がかもし出す娯楽性がうまく融合した傑作。数多くのロケーション撮影によって、終戦直後の東京市街の様子が映し出されている点も興味深い。「のんき節」で人気のあった演歌師の石田一松は、翌年衆議院議員に当選して政治界で活躍した。
(45東宝) (監督)斎藤寅二郎(脚本)山下與志一(撮影)友成達雄(美術)北辰雄(音楽)鈴木静一(特殊技術)圓谷英一(円谷英二)
(出演)古川綠波、横山エンタツ、花菱アチャコ、石田一松、柳家權太樓、高勢實乘、鳥羽陽之助、永井栁筰、高堂國典、小高つとむ、石田守英
(84分・35mm・白黒)

★青空天使
中国大陸から引揚げる途中で母親(入江たか子)と生き別れてしまった少女マリ子(美空ひばり)が日本で母を尋ね歩くという、当時流行の「母もの」の1本。この作品は長らく失われたフィルムだと思われていたが、近年大阪で16mmの上映用ポジが発見され、大阪芸術大学を中心に復元プロジェクトが立ち上げられた(封切時は82分)。1947年に設立された太泉映画のスタジオは、現在の東映東京撮影所である。
(50太泉映画) (監督)斎藤寅二郎(脚本)山下與志一(撮影)友成達雄(美術)北辰雄(音楽)萬城目正
(出演)美空ひばり、入江たか子、花菱アチャコ、横山エンタツ、川田晴久、伴淳三郎、清川虹子、清川玉枝
(63分・35mm・白黒・不完全)

★花吹雪 御存じ七人男
法界坊、髪結新三、切られ与三郎など、歌舞伎の主人公たちが勢ぞろいする時代劇で、江戸の長屋に住む人々が、狡猾な兵蔵(山茶花究)の長屋乗っ取りに立ち向かう。与三郎を演じる中村錦之助は映画デビュー2作目で、本作出演後、東映に入社して時代劇スターとしての確固たる地位を築いた。
(54新東宝) (監督)斎藤寅二郎(原作)旗一兵(脚本)八住利雄(撮影)服部幹夫(美術)川村芳久(音楽)米山正夫
(出演)花菱アチャコ、田端義夫、伴淳三郎、嵯峨美智子、中村錦之助、鮎川十糸子、月丘千秋、川田晴久、益田喜頓、山茶花究、堺駿二、香川良介、野沢英一
(79分・16mm・白黒)

★ハワイ珍道中
日本初のイーストマン・カラー劇映画は大映の「地獄門」1953であるが、本作はその翌年に製作された新東宝初のイーストマン・カラー作品。斎藤組はハワイ・ロケを敢行して、南国の鮮やかな色彩を巧みに表現した。15年ぶりにハワイから日本へ帰国した花村(花菱アチャコ)は、親戚に預けた一人娘のチエミ(江利チエミ)と再会できず、さびしくハワイへ帰る。その後、歌手のチエミはハワイへ興行におもむき二人は邂逅するが。
(54新東宝) (監督)斎藤寅二郎(脚本)八住利雄(撮影)友成達雄(美術)加藤雅俊(音楽)原六朗
(出演)花菱アチャコ、田端義夫、堺駿二、伴淳三郎、江利チエミ、安西郷子、宮川玲子、清川虹子、斎藤達雄、潮万太郎、小倉繁、益田キートン、神楽坂はん子
(88分・35mm・カラー)

★大笑い江戸っ子祭
大金を拾った魚屋を描く「芝浜」、言葉が丁寧すぎる妻をもった男の悲喜劇「たらちね」、富くじをめぐる「千両富(宿屋の富)」など、名作落語を題材にした娯楽時代劇。斎藤の前作「勢揃い江戸っ子長屋」1959と同じ「長屋もの」の1本で、豪華な喜劇俳優たちが脇を固めている。
(59東宝) (監督)斎藤寅二郎(脚本)蓮池義雄、淀橋太郎(撮影)西前弘(美術)鳥居塚誠一(音楽)宅孝二
(出演)三木のり平、有島一郎、雪村いづみ、南部雄二、ミヤコ蝶々
(85分・16mm・白黒)


【野村浩将】

★涙の愛嬌者
監督デビューした翌年の中篇作品で、野球好きの少年とその家族の純朴な親子愛をやさしく描いた佳作。ユニフォームやバットを持っていない少年(小藤田正一)は野球チームに入れてもらえず、父に買ってくれるよう頼む。しかし、露天商として細々と生活を立てている父(新井淳)は、息子の将来を思い、なかなか首を縦に振らない。
(31松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作脚本)伏見晁(撮影)髙橋與吉
(出演)小藤田正一、髙尾光子、新井淳、阪本武、関時男、山口勇、半田日出丸、突貫小僧、小倉繁、大山健二
(41分・18fps・35mm・白黒・無声)

★玄関番とお嬢さん
就職口がみつからずに下宿を追い出された大学出の善吉(藤井)が、子供を助けた縁で屋敷の玄関番になり、家族とドタバタ喜劇を繰り広げる。主演の藤井貢は慶応大ラグビー部出身で、清水宏監督の「大学の若旦那」シリーズ(1933-34年)など、「カレッジもの」を得意とした。
(34松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作脚本)北村小松(撮影)高橋與吉(美術)浜田辰雄(音楽)今澤將矩、早乙女光
(出演)水久保澄子、藤井貢、伏見信子、齋藤達雄、吉川滿子、突貫小僧、葛城文子、坂本武、飯田蝶子、磯野秋雄、三井秀男、阿部正三郎、若水絹子
(67分・35mm・白黒)

★令嬢と與太者
磯野秋雄、阿部正三郎、三井秀男の3人組がくりひろげる「与太者」シリーズ(1931-35年)の第1作で、不良少年の収容施設で生活を送る3人組の更生物語。のちに類型化する「与太者」の人物造形とは異なり、この作品では3人の不良性と暴力性が強調されている。
(31松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作)一木歓(脚本)柳井隆雄(撮影)高橋與吉(美術)浜田辰雄
(出演)磯野秋雄、阿部正三郎、三井秀男、結城一朗、若水照子、武田春郎、井上雪子、大野秀郎、河村黎吉、阪本武
(118分・18fps・35mm・白黒・無声)

★與太者と藝者
「与太者」シリーズの第5作目。「与太者」トリオは呉服屋に勤める奉公人として登場。あるとき呉服屋が破産してしまい、若旦那の誠一郎(結城)は恋人のふみ江(若水絹子)を残して樺太へ旅立ち、誠一郎の妹(光川京子)は芸者として働くことに。5作目ではすでに「与太者」たちの役名が本名の磯野、三井、阿部となっており、彼らのネーム・バリューの高さを示している。
(33松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作脚本)柳井隆雄(撮影)高橋與吉(美術)脇田世根一
(出演)磯野秋雄、三井秀男、阿部正三郎、若水絹子、花岡菊子、光川京子、若水照子、結城一朗、市村美津子、河村黎吉
(104分・20fps・35mm・白黒・無声)

★應援團長の戀
1931年の「マダムと女房」の成功で日本映画はトーキー時代に入ったといわれるが、実際に多くの監督がトーキーに取り組むのはその数年後である。本作は野村のトーキー第1作で、当時の批評は野村が「相当トーキーをこなしている」と評価した。大学の応援団長・塚本(岡譲二)と下宿の娘・お美津(田中絹代)は仲が良かったが、ある日、塚本はピッチャー宮嶋(江川宇礼雄)の家で出会ったアヤ子に心魅かれる。
(松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作脚本)野田高梧(撮影)高橋與吉
(出演)岡譲二、田中絹代、江川宇礼雄、逢初夢子、沢蘭子、若水照子
(78分・35mm・白黒)

★與太者と花嫁
「与太者」9作目は、トリオがひとりの女性の結婚を成就させるまでを描いた人情味あふれる物語。道場の師匠だった緒方(岩田祐吉)は、2人の弟子(磯野秋雄、阿部正三郎)と、初恋の女性の遺児・きぬ子(大塚君代)を率いて田舎から上京する。きぬ子は幼馴染の松岡(加賀晃二)に再会して愛情を深め合うが、緒方は二人の結婚に反対する。「与太者」のひとり・三井秀男は物語の途中から登場する。
(34松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作脚本)柳井隆雄(撮影)髙橋與吉(美術)浜田辰雄(音楽)万城目正
(出演)磯野秋雄、三井秀男、阿部正三郎、岩田祐吉、大塚君代、加賀晃二、齋藤達雄、新井淳、水嶋亮太郎
(93分・35mm・白黒・サウンド版)

★與太者と小町娘
「与太者」シリーズ10作目。木曽の山中で森林伐採業を営むふたつの組はいつも縄張り争いでもめていた。「与太者」トリオは親方(上山草人)の娘(坪内美子)の苦境を救うために相手グループに戦いを挑む。本作完成後に三井秀男が東京発声へ移籍したため、11作目の「与太者と若夫婦」1935では代役が立てられたが、結局シリーズは11作をもって終焉を迎えた。
(35松竹蒲田) (監督)野村浩将(原作)野村浩将(脚本)池田忠雄(撮影)高橋與吉
(出演)磯野秋雄、三井秀男、阿部正三郎、坪内美子、上山草人、山口勇、大日方傳、河村黎吉、関口小太郎
(72分・35mm・白黒・サウンド版)

★人妻椿 前後篇
野村浩将のメロドラマ作家としての演出力が存分に発揮された大作。本作の興行的成功によって野村は松竹のドル箱監督として一目置かれる存在になった。殺人を犯した恩人の罪をかぶり、矢野(佐分利信)は国外へ逃亡。矢野の妻・嘉子(川崎弘子)は、幼い息子を育てながら夫を待ち続けるが、嘉子の前に次々と世間の荒波が押し寄せる。1956年に原研吉監督、1967年に市村泰一監督が同名タイトルでリメイクしている。
(36松竹大船) (監督)野村浩将(原作)小島政二郎(脚本)柳井隆雄(撮影)高橋通夫(美術)浜田辰雄(音楽)万城目正
(出演)川崎弘子、佐分利信、小嶋和子、上原謙、藤野秀夫、山内光、三宅邦子、上山草人、野寺正一、坂本武、飯田蝶子、笠智衆、大山健二、磯野秋雄、阿部正三郎、忍節子、河村黎吉、吉川満子、水島亮太郎
(142分・35mm・白黒)

★女醫絹代先生
タイトルが示す通り、田中絹代が聡明な若医者を演じる恋愛喜劇。漢方医である山岡家と、外科医の浅野家は先代から犬猿の仲。医学生の山岡絹代(田中絹代)と浅野安夫(佐分利信)は、両家の確執ゆえにライバル心を燃やして喧嘩ばかりしていたが、どこかお互いに魅かれるところもあった。本作と類似した物語設定に「お絹と番頭」1940がある。
(37松竹大船) (監督)野村浩将(原作)野村浩将(脚本)池田忠雄(撮影)髙橋通夫(美術)周襄吉(音楽)万城目正
(出演)田中絹代、佐分利信、坂本武、東山光子、吉川満子、島田富美子、水島亮太郎、谷麗光、大山健二、磯野秋雄、小林十九二、縣秀介、山田長生
(91分・35mm・白黒)

★愛染かつら[新篇總輯篇]
日本映画史に輝くメロドラマの名作で、看護婦の高石かつ枝(田中絹代)と病院の若い院長・津村浩三(上原謙)のすれ違い恋愛物語。「愛染かつら」1938の大ヒットを受けて、1939年に「続篇」と「完結篇」が製作された。現存プリントは戦後の再映時に3篇を再編集した総集篇。「花も嵐も踏み越えて」ではじまる主題歌「旅の夜風」を作曲した万城目正は、戦後も「悲しき口笛」1949や「東京キッド」1950の主題歌を作曲して活躍した。
(38-39松竹大船) (監督)野村浩将(原作)川口松太郎(脚本)野田髙梧(撮影)高橋道夫(音楽)萬城目正
(出演)田中絹代、上原謙、佐分利信、大山健二、水戸光子、三桝豊、桑野通子、藤野秀夫、葛城文子、森川まさみ、河村黎吉、吉川満子、小島敏子、斎藤達雄、坂本武、岡村文子、出雲八重子、東山光子、忍節子、草香田鶴子、久原良子
(89分・35mm・白黒)

★絹代の初戀
松竹大船が得意とする明朗な庶民劇の要素が凝縮された作品。せんべい屋を切り盛りする絹代(田中絹代)は父と妹の3人暮らし。ホテルのポーターとして働く父(河村黎吉)は物忘れがひどくて解雇される。妹(河野敏子)は勤務先の社長の息子から求愛されるが相手にしようとしない。絹代はある日、友人と歌舞伎見物へおもむき、偶然知り合った男性(佐分利信)に恋をしてしまう。
(40松竹大船) (監督)野村浩将(脚本)池田忠雄(撮影)高橋道夫(美術)濱田辰雄(音楽)早乙女光
(出演)田中絹代、河村黎吉、佐分利信、河野敏子、三桝豊、葛城久子、水戸満子、吉川満子、坪内美子、東山光子、久原良子、山口勇、寺門修、宮島健二
(82分・35mm・白黒)

★舞台姿
旅回りの一座を率いる芸熱心で頑固な座頭(河村黎吉)と、父のもとで一座を取りまとめる気丈な娘・お絹(田中絹代)の一種の「芸道もの」。この年、野村浩将は、池田忠雄(脚本)・田中絹代(主演)と組んで「絹代の初戀」や「お絹と番頭」といった快活な作品を監督したが、この作品には、お絹の恋人が軍需工場で働くプロットや結末部分などに、戦争の影が色濃く現れている。
(40松竹大船) (監督)野村浩将(脚本)池田忠雄、荒田正男(撮影)齋藤正夫(美術)浜田辰雄(音楽)伊藤宣二
(出演)田中絹代、島崎潑、河村黎吉、坂本武、小林十九二、水島亮太郎、阿部正三郎、磯野秋雄、三井秀男、飯田蝶子、吉川満子、小藤田正一
(102分・35mm・白黒)

★お絹と番頭
野村組の息の合った製作風景が目に浮かぶような微笑ましい正月映画。足袋商店・福屋の若い番頭幸どん(上原謙)と、福屋の一人娘で勝気なお絹(田中絹代)は、喧嘩するほど仲のよい間柄。しかし、ある日幸どんは地主(河村黎吉)の娘との縁談を持ちかけられ、それを知ったお絹はいつもの元気を失い、部屋に閉じこもってしまう。「与太者」トリオも福屋の職人として登場している。
(40松竹大船) (監督)野村浩将(脚本)池田忠雄(撮影)齋藤正夫(美術)濱田辰雄(音楽)伊藤宣二
(出演)田中絹代、上原謙、齋藤達雄、三宅邦子、藤野秀夫、小林十九二、磯野秋雄、阿部正三郎、三井秀男、岡村文子、近衛敏明、沖田儀一、河村黎吉、坪内美子、青山萬里子、久原良子、大塚君代、東山光子、草香田鶴子、葉山正雄
(73分・35mm・白黒)
by sentence2307 | 2005-10-07 23:54 | 斎藤寅二郎 | Comments(0)