世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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雷魚

これは、ピンク・ヌーヴェル・ヴァーグの一翼をになうと言われている瀬々敬久の確かな力量を感じさせる鮮烈な作品です。

社会から取り残されたような殺伐とした寒々しい工業団地を背景に、行き場のない男と女が「殺人」という行為を通して交差する荒涼とした映画です。

人妻の紀子は、入院中の病院を抜け出し、不倫相手の田辺を訪ねますが、会うことを拒まれます。

そして、その動揺に耐え切れずに、テレクラで知り合った相手・裕幸とホテルで性交します。

行為のあと、セックスの報酬のように金を渡された紀子は、隠し持っていたナイフで、無表情のまま裕幸をめった刺しにして殺します。

警察で聴取を受ける紀子の面通しをしたガソリンスタンド従業員・和昭は、事件当日に二人を見たにもかかわらず、嘘の証言をし釈放された紀子の後をつけて彼女と関係を結びます。

この物語の要約は、別に殺伐とした感じを強調する意図とかで、あえて形容詞をはぶいたり、感情の起伏を書かなかったりした訳ではありません。

映像もそのとおりの淡々とした描写に徹しています。

殺人のある浴室での夥しい血が流される場面も、感情を抑えた即物的な描写です。

しかし、それでもほんの僅かながら、彼らの生活史がほのめかされている部分もありました。

裕幸に子供が誕生したらしく幼児服を購入する場面が、奥さんの不在を狙って不倫相手を電話で物色する彼の一連の行為の中に描き込まれています。

紀子がラブ・ホテルの浴室で裕幸を刺し殺したあと、彼が持っていたその幼児服を見て彼女は泣きます。

紀子には、かつて愛人の子供を中絶した記憶の傷があり、そのことを和昭に話す場面は、同時に、和昭もまた、愛人によって自分の子供を焼き殺されたことを紀子に話す場面でもあります。

互いに子供の親になれないまま、生きる意味をも失ってしまった陰惨な過去を話すことで、彼らが社会から徹底的に拒まれ、彼ら自身も抱え持つ「ある欠落」によって、肉欲の関係などでは到底成り立ち得ない程の絶望的な孤独を悟らされます。

そして、和明が紀子に語りかける言葉は、当然愛の言葉などではなく、「人を殺すときの気分」を彼女に尋ねます。

やがて、行為のあと、死を望む紀子の願いを聞き入れて、和昭は紀子を絞殺し、死体を田舟に乗せ焼き捨てます。

この死体を焼く場面は、まるで害虫を焼いて処理するような、どうしようもない人間は焼き殺すしかない、とでも言うような自嘲を込めた寒々しいシーンでした。

人と人とのつながりをどう求めていけばいいのか。

一昔前なら純粋でほほえましい恋情として描かれるべき行為も、現代にあっては、すべての行為は風俗というフィルターを通した金で買える薄汚い「欲情」でしかないような、そんな時代を生きねばならないことを、瀬々は、この映画で描こうとしていたのではないのかと思えました。

奇しくも、この映画は、一般劇場で上映された後、ピンク映画館で「黒い下着の女」のタイトルでも公開されたということです。

象徴的な瀬々の素晴らしい挑発行為と考えていいと思います。

(97国映=新東宝映画)企画・朝倉大介 衣川仲人、プロデューサー・福原影、監督原案・瀬々敬久、助監督・坂本礼、脚本・井土紀州 瀬々敬久、撮影・斉藤幸一、音楽・安川午朗、美術協力・安宅紀史 丹治拓実、録音・シネ・キャビン、編集・酒井正次
出演・佐倉萌、伊藤猛、鈴木卓爾、穂村柳明、のぎすみこ、外波山文明、佐野和宏、岡田智弘、河名麻衣、佐々木和也、吉行由美、泉由紀子、
1997.05.31 75分 カラー ワイド
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Commented by levitraagepailerry at 2013-03-19 15:51 x
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by sentence2307 | 2006-06-25 18:29 | 映画 | Comments(1)