世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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OUT

「カミュなんてしらない」を酷評しすぎて、我ながら後味の悪い思いをずっと引き摺っているみたいで、なんかスッキリしません。

僕の場合、後々のことを考えて、いい気分を味わいたいために、余程の作品でない限り、だいたいは「褒め倒す」ことにしているのですが(そこが「映画好き」たる所以だと思っていますし、そんなようなことをアノ淀長さんも言っていましたよね)、あんなふうに言うなんて(「カミュなんてしらない」をしたたかにコキオロシました)、きっと虫の居所でも悪かったのだと思います。

なんであんなふうな言い方になってしまったのか、しばらく考えてみたのです。

いろいろ思いつくなかで、自分は、そもそも人を殺す映画が生理的に嫌いなのであって、気持ち的に受け付けないためにああなったのだという仮説を立ててみました。

「うん、多分そうに違いない」と自分を納得させる相槌を、すぐに打ち消すかのような作品が思い浮かびました。

平山秀幸監督の「OUT」です。

あの「OUT」こそ、殺したあとで、更に死体の解体までもやり遂げてしまう壮絶にしてグロテスクな主婦たちの、なんとも凄惨な物語でした。

実際にこのハードな映画を観る前なら、この超グロテスクなストーリーを言葉でたどっていくだけでも、それはもう、かなり気分が悪くなる作業に違いないと思います。

殺した亭主の死体の処理に困り、弁当屋のアルバイト仲間の主婦たちが、仕方なく力を合わせて(彼女たちは金銭の貸し借りに基づく負い目という固い絆で結ばれています)浴場で死体を切り刻んで生ゴミの日に捨ててしまうという、客観的にストーリーを説明していけば、吐き気をもよおすばかりの壮絶にして絶望的な物語なのに、しかし、実際には映画が進行していくなかでは、左程の嫌悪感もなく、この作品を見通せてしまったことが、なんかたまらなく不思議です。

でも、多分、それこそが、この作品の魅力であり、優れているところなのかもしれません。

この犯罪に加担するどの女たちも、家庭崩壊・姑の介護・カード破産・そして夫からの理不尽な暴力など、現代社会の最悪な立場に追い込まれている女たちです。

そこでは、現代に生きる女たちが囚われている熾烈な現実が描かれながら、彼女たちが有り得ない選択(死体の損壊と遺棄)を強いられていくなかで、不思議な連帯感を結び合うこのストーリー展開に引き込まれてしまうのは、多分そこにそれぞれの生活の場で孤立しながら、しかし必死に戦い続けた女たちの孤独が、しっかりと描きこまれていたからだろうと思います。

それは、同時にあの「カミュなんてしらない」という作品に欠けている部分でもあったはずです。

鼻持ちならないエリート大学生たちの、生活感のない絵空事のお喋りに辟易し、そして感じた嫌悪感の、それが正体だったのだろうなと思いました。

(02)監督・平山秀幸、製作・古澤利夫・木村典代、製作総指揮・諸橋健一、プロデューサー・中條秀勝、藤田義則、福島聡司、原作・桐野夏生、脚色・鄭義信、撮影・柴崎幸三、特殊メイク・松井祐一、音楽・安川午朗、美術・中澤克巳、編集・川島章正、衣装(デザイン)・宮本茉莉、録音・田中靖志、スクリプター・近藤真智子、スチール・竹内健二、音響効果・斉藤昌利、その他・鈴木剛、松本良二、荒木経維、佐光朗、橋本満明、平興史、松井祐一、橋爪謙始、助監督・蝶野博、照明・上田なりゆき
出演・原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美、香川照之、間寛平、千石規子、吉田日出子、大森南朋、小木茂光、吉永雄紀、江藤漢、斎藤歩、浜田道彦、田中要次、伊藤グロリア、眞島秀和、佐藤貢三、和泉今日子、西美子、中山恭子、西尾百合子、谷川大介、秋定里穂、松崎剛也、工藤亮二、森富士夫、持田篤、濱近高徳、吉村光司、かねこゆきこ、麻宮華、大塚和彦、佐藤希美、土井里美、首藤貴恵、CHUN KIN DA、JUNG SOO-JI、TOMIYAMA KATY、SONIA VALDIVIA
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by sentence2307 | 2007-04-04 00:08 | 映画 | Comments(0)