愛の流刑地
2008年 04月 29日
かつて流行作家だった主人公は、いまではどうしても新作が書けないというスランプのなかにいます。
いつかまた、再び小説がバリバリ書けるようになりたいと切望し、また、彼の作品を扱っていた編集者も彼のことをなにかと心配しています(その結果、女性編集者は、彼に刺激を与えるために隣家に住む彼の熱烈なファンである美人の若奥さんを紹介するという、まるで文学に捧げる「つつもたせ」みたいな真似までしています。)。
そう考えると、この物語を形成しているのは、渡辺淳一自身が、いつか自分も小説が書けなくなってしまう日がくるのではないか、明日にでもそういう事態に見舞われるかもしれないという恐怖がひたすら肥大していった妄想がそのまま映画になってしまったような気がしました。
ここでは、あらゆる犠牲を払っても惜しくない「文学」こそが至上のものという考えが支配している妄想の物語であることの認識を欠くと、この映画への失望が深刻なものになりかねません。
もはや「書けない」のなら、せめて以前当たった小説の焼き直しだって構わないとばかり、「柳の下の二匹目の泥鰌を狙った」のがこの扇情的な作品となったのではないかなんて、つい勘繰りたくなりますよね。
そういえば、この作品が出版されたとき、あるいは映画化されたときだったか、渡辺淳一のインタビュー記事なるものを読んだことがありました。
そこで、渡辺淳一は、「社会的緊張感にみちた困難な極限の状況下でこそ、肉体的な圧倒的な愛があり、肉体も精神も深く溶け合って燃え上がる真実の愛が成立する。」
「そういう愛の在り方を法律が裁けるのか」なんて、この物語の種明かしみたいなことを話していました。
公序良俗を踏みにじり、世間の良識に背を向けて道ならぬ不倫におちいれば、そこでは当然社会からの手厳しい指弾を受ける。
確かに「失楽園」は、そこのところを明確に描きぬいた作品だったと思います。
仕事に躓き、日の当たる職場の中枢からはずされ、体よく組織から捨てられた男が、その失意のとき、運命的な性のパートナーと出会うことによって、自分の中にぽっかりと空いた無残な空白を埋めるように性行為にのめりこむ。
お互いの「性」がぴったりと合致する運命のパートナーとの宿命的な出会いがあり(現実の世界では、なかなかそううまい具合にはいきませんが)、ふたりは社会とのつながりを絶って、ひたすら性行為にのめり込むという熾烈なシチュエーションを、すでに僕たちは、「愛のコリーダ」や「赫い髪の女」によって、社会から追い立てられた者たちの絶望の果ての自己破壊といってもいい性行為の在り様を、それらの峻烈な映像によって知らされています。
しかし、そのような性の「つながり」を、作者・渡辺淳一が言うように、はたして「真の愛の形」とまで言い切ってもいいものかどうか、疑わしいとずっと思っていました。
古来、人の歴史は、制度によって「性」を押さえつけようとして、特定の人間の所有物と企てながらも、しかし蹉跌を繰り返してきた破綻の歴史だったという気がします。
主人公の作家・村尾菊治が法廷で「死ぬほど人を愛したことがあるのか」と空々しく絶叫したあの場面の背後に座る傍聴人たちの誰一人として、失笑か冷笑する表情をその画面に映し込んでいなかったことに虚を突かれた思いがしました。
いかなるシロモノであろうと、まず最初にその「愛」とかいうもの、ちゃちなお伽噺をただ盲信しなければ成立しないようなこれは極めて愚劣な子供だまし程度の映画なのだと気がつきました。
もはや往年の勢いは失われたとはいえ、作家の名声にすり寄ってきた人妻・入江冬香を誘惑し、合意のうえで性交し、やがて女からの求めに応じて快楽の頂点で絞殺したことが、なんで「真実の愛」などになるのかが理解できませんでした。
自殺願望のあった女の依頼を断り切れずに(弱みがあったわけですから)ちょっと手を貸しただけの嘱託殺人(おかげで極刑を免れました)でしかありません。
性交し続けることの極点に、反社会性を見据えた「愛のコリーダ」や「赫い髪の女」の持った深い絶望感が、さらに「愛する」ことの意味を照らし返したことと比べると、晴れがましい法廷で堂々と絶叫する茶番に立ち会わなければならなかった僕たちは、「映画」というものが決して進歩するものでも、そして多くの名作群の記憶から学習するものでもないことを思い知らされただけの、そんな貧弱な映画でした。
心底疲れました。やれやれ。
(2006東宝)監督脚本・鶴橋康夫、原作・渡辺淳一『愛の流刑地』(幻冬舎刊)、製作・富山省吾、撮影:村瀬清、鈴木富夫、音楽・大島ミチル、仲西匡、長谷部徹、福島祐子、編集:山田宏司、美術:部谷京子、照明:藤原武夫、プロデューサー:市川南、大浦俊将、秦祐子、協力プロデューサー:倉田貴也、企画:見城徹、主題歌:平井堅『哀歌(エレジー)』、製作統括:島谷能成、三浦姫、西垣慎一郎、石原正康、島本雄二、二宮清隆、録音:甲斐匡、助監督:酒井直人、プロダクション統括:金澤清美、
出演・豊川悦司、寺島しのぶ、長谷川京子、仲村トオル、佐藤浩市、陣内孝則、浅田美代子、佐々木蔵之介、富司純子、津川雅彦、貫地谷しほり、松重豊、本田博太郎、余貴美子、
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