山中貞雄「丹下左膳・百萬両の壷」
2004年 11月 06日
素晴らしい映画でした。
話しの組み立て方の緻密さとテンポの良さには、驚かされました。
僕たちの知っている大河内伝次郎の丹下左膳といえば、いままで「憤怒と威厳を併せ持った形相で人気を博し、その仕草はグロテスクの域に達し、権力から放逐された存在で、挫折感とニヒリズムにさいなまれながら、とりわけ片目片腕というハンデキャップにも拘わらず、卓越した剣さばきで暗黒の世界を跳梁した。」という本による予備知識とは、この作品は全然勝手が違いました。
気のいい子供好きのただのおっさんで、子供を気遣っておろおろするところは、まさに時代を感じさせない堂々とした仕上がりでした。リメイクしようかという誘惑を感じるのも、これなら当然かな、と。
どこか「寅さん」的な魅力さえ感じました。
こうした軽目の作品をこれだけの仕上がりにもっていけるのは、並大抵の力ではできないことでしょうね。