ボウリング・フォー・コロンバイン ⑤
2004年 11月 14日
その辺で拾った素材集
インタビュー:「あなたは、小学生がクラスメートを射殺する現場にいた女教師が悲しみのあまり言葉に詰まらせた時、彼女を抱きしめましたが、報道はもっと客観的であるべきではないですか?」という質問に
「じゃあ、彼女を黙って見てろってのか?」ムーアは訊き返した。
「僕はレポーターじゃない。
ニュースを読み上げるだけのTVキャスターとも違う。
僕は何よりもまず人間だ。
目の前で教え子を殺された記憶に思わず胸ふさがれて絶句する女性教師をただ冷酷に見ているだけなのがジャーナリストのあるべき姿だってのなら僕は失格だ。
しかし、僕はマシーンなんかじゃない、血の通った人間だ。
見ていられなくて、とっさに彼女を抱きしめずにはいられなかった。
それを撮影して映画に使うべきではない、という人もいるだろうけど、しかし同時に僕は映画作家なんだ。
作品に自分の思いを込めるのは当然だろう。
言いたいことを言うのは当たり前じゃないか。
それがドキュメンタリーの命だろ。」
ヘストンに「なんで銃を持つ必要があるのか?」と聞いたら、「いろんな人種がいるからな」と答えた。
つまり銃は白人以外のいろんな人種を撃つためのものらしい。
「実はアメリカの国民1人当たりの銃の所有率はカナダやスイスを下回る。
でも、アメリカではカナダの百倍以上も銃で人が殺されている。
なぜか? 恐怖のせいだ。
人は普通、貧しい人を見ると可哀そうだと思うが、アメリカ人は貧しい人たちを見ると何かされそうで怖いと思う。
ひどい個人主義だ。
たとえば、健康保険。普通の国では貧しい人が医療を受けられるように健康保険てものがある。
アメリカには国民健保はない。
貧しい奴等の医療費まで金持ちが払ってやることはない、貧乏人を一度甘やかすと、奴等どこまでも凭れ掛かってくるからなというのがその理由。」
1999年4月20日、アメリカ合衆国は普段通りの穏やかな朝を迎えました。
人々は仕事に励み、大統領は、国民が名前さえ知らない国に爆弾を落とし、コロラド州リトルトンのコロンバイン高校の生徒2人は朝6時からボウリングを楽しんだあと、教科書の代わりに銃を学校に持ち込んで、笑いながら12人の友達と1人の教師の射殺し、そしてその薄笑いを絶やすことなく今度は自分の頭を同じ銃で撃ち抜きました。
図書室に乱入した彼らが、まるでスポーツのようにこの無差別の殺戮を始めたとき、ほどなく自分が殺されるかもしれないという恐怖の予感に気が動転しながら、しかしただ床に這いつくばって「待っている」しかなかった生徒は、まだずっと向こうで、伏せている生徒たちの後頭部や心臓のあたりを狙い定めて銃弾の打ち込みに熱中しながら、彼らが何ごとかを問い掛けていたと証言しています。
それが何と言っているのか分からなくとも、遠くかすかに聞き取れるその言葉の響きは、とても優しく穏やかで、まるで「愛しているよ」とでも言っているふうにも聞き取れたといいます。
やがて彼らが至近距離まで迫って来たときに、その言葉は、はっきりと聞き取れました。
彼らは、おびえる少女に「死にたいか?」と優しさく語り掛けたあとで3発の銃弾を頭と腹に撃ち込み、少女に生涯にわたる半身不随の余命をプレゼントしました。
また、別の証言によると、殺人者の死の問いに、勇敢にも「死にたくない」ときっぱり言い返した少女は、幸いにも命は救われたものの、すぐそばにいた親友の黒人の少女が身代わりに撃ち殺されました。
「白い肌」というただそれだけの理由で生き残った偶然に、彼女は今でも苦しめられているそうです。
しかし、彼らがなぜ、あの殺戮を敢行することとなったのか、彼女には、いまだに分かっていません。
マスコミが書き立てるバイオレンスの氾濫とか、家庭の崩壊とか、高い失業率やアメリカ建国以来の暴力など、そのどれもが、不随になった自分の半身の理由としてはふさわしくないように思われるとその被害者の少女は述懐しています。
アメリカ白人の他民族に対する根深い恐怖と、伝統的な暴力の歴史を説いて銃の必要性を強く主張する人々(例えば、NRA)が、銃規制に反対する論拠となっているのが以下に掲げるアメリカ合衆国憲法修正第2条(国民の武器・武装権)です。
この条項を掲げてアメリカ市民が銃を持つのは憲法で保障された当然の権利だとNRA(米国ライフル協会)はじめ銃規制反対派は主張しています。
そして、アメリカ人でも、その通りだと信じている人が多いと聞いています。
ARTICLE TWO
A well regulated militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear arms, shall not be infringed.
修正第2条
規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であり、人民が武器を保蔵しまた武装する権利は、これを侵してはならない。