世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


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<   2007年 10月 ( 6 )   > この月の画像一覧

鉄道員

映画って「ラストシーンがすべて」みたいなところがありますよね。

先日同期会の席上で、ひょんな切っ掛けから、出席者それぞれの印象に残っている映画のラストシーンを披露し合うという奇妙な展開になりました。

出席者は、同期の入社で、むかしから互いに気心の知れた映画好きの少人数の会なので、いつも最後には映画の話題に落ち着いてしまうというのが、だいたいのパターンです。

ラストシーンといえば、まずアレだろうなと思っていると、やはり経理の橋本さんが「シェーン」を持ち出してきました。

「シェーン・カムバック!」のあれです。

土地を追われそうな無力で貧しい開拓民のために、ならず者に立ち向かう孤独な早撃ちガンマン・シェーン、しかし最後は、ジョーイ少年の目に映る自分の「英雄像」をみずから否定して(はずれ者の自分を自嘲しながら自己否定して立ち去る感じは、当時の西部劇では新鮮だったように思います。日本の股旅ものでは定番のシチュエーションでしたが)立ち去るあのニヒルな感じが、子供心にも大人の映画だなとつくづく感じたものでした。

「シェーン」があがってしまった以上、しばらくは西部劇づくしだなと思っていると、すかさず営業の近藤さんが「荒野の決闘」をあげてきました。

「クレメンタイン、実にいい名前だ。」

血生臭い決闘のあとで呟かれるこのひと言で、アメリカ人が愛する「クール」の意味がなんだか分かったような気になりました。

それから「真昼の決闘」とか「駅馬車」があげられたあとで、四国から転勤してきたばかりの法務室の相沢さんが「明日に向かって撃て」をあげました。

あれは、僕も愛してやまないとても素晴らしいラストシーンです、そして僕の感覚としては、あの映画以来、ホモセクシャルな作品がだんだん社会的に許容されていったのではないかという印象をもっています。

ここからが、映画好きばかりが集まる宴会の醍醐味です。

誰かが「明日に向かって撃て」と「冒険者たち」の近似性をひとくさり話したあと、さらに人事の渡邉さんが、この2作品と「俺たちに明日はない」との近似性について話しました。

もう喧々諤々の大変な大論争になりました。

映画のマニアたちを魅了するなにかが、それらの作品の中に悪魔のようにひそんでいるに違いありません。

その「なにか」とは、例えば、弱々しい余韻のなかに、残照のようにいつまでも後をひく哀しみの郷愁、とでもいえば少しは近いでしょうか。

どうもうまく言葉では表現できそうにありません。

しかし、これらの作品のなかの「哀しみの郷愁」の感覚は、きっと誰もが感じていたに違いありません。

不意に座談が途切れ、しばらく沈黙が続きました。

それはきっと誰もが、今年に入って相次いで急逝した同期会のメンバー2人のことを考えていたからでしょう。

この作品群のラストに共通している「早すぎる死」のテーマが、あっけなく僕たちの目の前から姿を消した同期のふたりを連想させるものがあったからだと思います。

なんだか座が、しんみりしてしまいました。

こうなってしまったら、もう宴会も潮時かな、それにしてもこのまま帰るのでは後味が悪いなと思っていると、普段無口な資料課の大野さんが、突然話し始めました。

大野さんの挙げた映画は「鉄道員」です。

鉄道員? もちろんタイトルは、よく知っていますし、かなりむかしですが、見た記憶もあります。

この作品って、ネオリアリズモの洗礼を受けた映画にしては、随分メロドラマの要素をもった異色作で、変に甘ったるい印象が強く残っている作品です。

しかし、ともかく名画であることに異存はありません。

だけど、そのラストシーンとなると、思い出せません。

「あれって、どういうシーンだったっけ?」

聞き手の僕たちは、思わず互いに目を見合わせて相手の訝しげな顔を確認するばかりでした。

大野さんの話す映画のあらすじを聞いているうちに、だんだん思い出してきました。

貧しい家庭ですが、少年は鉄道員の父親を物凄く尊敬しています。

誰かが、「あの子役は、自転車泥棒と同じ子役か。」「違うだろう」、とかなんとかチャチャが入ります。

大野さんは、そんなことなど意に介さず話し続けます。

そうそう、大野さんの話しを聞きながら、だんだん思い出してきました。

あの映画は、少年の父親への尊敬の念の「揺らぎ」がテーマだったのかということも遅ればせながら、大野さんの話を聞きながら気がつきました。

大野さんは続けます。

「父親は、家庭内と浮世のゴタゴタをすべて乗り切ったあと、一家和解のパーティを終えて、やっと一息ついた夜に、深い安堵の中に沈み込むかのように、ひとり静かに死んでしまうのです。
あそこに描かれている死は、少なくとも、思い半ばで未練をこの世に残したままの不慮の事故死とか不意の死とかじゃない。
すべてを成し遂げ、見届けたあとの死ですよね。
果たして、このような充たされた死を何人の人間が迎えられ、許されるのか考えさせられてしまいました。」

充たされた安堵の中で迎える静かな死、そんなこと考えたこともありませんでした。

宴会がはねた後、駅までの道を終電に急ぐ人の波に押されながら、映画「鉄道員」のことをいつまでも考えていました。

(56イタリア、エニック・ポンティ・ラウレンティス)製作:カルロ・ポンティ、監督:脚本:ピエトロ・ジェルミ、脚本:アルフレード・ジャンネッティ、ルチアーノ・ビンセンツォーニ、脚本修正・エンニオ・デ・コンチーニ、カルロ・ミュッソ、原案・アルフレード・ジャンネッティ、撮影:アイエチ・パロリン、レオニーダ・バルボーニ、音楽:カルロ・ルスティケリ、美術・カルロ・エジーディ、
出演:ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネヴォラ、ルイザ・デラ・ノーチェ、シルヴァ・コシナ、カルロ・ジュフレ、サーロ・ウルツィレナート・スペツィアーリ、サーロ・ウルツイ
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by sentence2307 | 2007-10-27 12:19 | 映画 | Comments(0)

洲崎パラダイス 赤信号

「月夜の傘」を見て意外に感じたことのひとつに、新珠三千代の清楚で品のいい美しさへの驚きがありました。

しかも、いかにも初々しい。

映画通の友人との雑談の折に、友人にそのとき感じた彼女の印象を伝えたら、新珠三千代は「その線」で売り出した女優なんだから当然だろうと切り返され、逆に、それじゃお前が「驚いた」というその理由というのは何だったんだと聞き返されてしまいました。

僕が最初に見た新珠三千代の作品、つまり川島雄三監督の「洲崎パラダイス 赤信号」に出演していたあの演技のことについて話しました。

友人いわく「新珠三千代の第一印象を形成するにしては、そりゃあ最悪な出会いだったわけだな。しかし、最初に出会ったその作品が彼女にとって最高の演技と評価を受けた作品だったことは、本当の意味では幸運だったと云えなくもないかな。」

帰宅してから、そのときの会話が気に掛かって、佐藤忠男の「日本映画史」のページを繰って新珠三千代について書かれた部分を探してみました。

「日本映画史」の第8章「危機と変革の1960年代」の15「俳優たち」の項には、こんなふうに記されていました。

《新珠三千代は、美しく品よくふるまって貴婦人崇拝的な愛の対象になるというメロドラマ的な役柄の多いスターであるが、川島雄三の「洲崎パラダイス 赤信号」56ではずるくて冷酷でもある娼婦を鮮やかに演じて演技的に代表作とした(・・・やっぱり、そうだったんだ・・・)。
堀川弘通の「女殺し油地獄」57では、やさしさと美しさが仇となって親しい不良少年から殺されてしまう商家のお内儀を演じて凄艶であった。
小津安二郎の「小早川家の秋」61では、中村鴈次郎の老父に意見するしっかり者の娘であり、折り目正しい演技だった。》

そうだ、「小早川家の秋」に出ていたんだった。

「折り目正しい演技」とは、まさに小津安二郎好みの女優ではないかと気がついて、松竹編「小津安二郎新発見」にあった「小津映画の名優たち」のひとりに加えられているのではないかと思い、ページを繰ってみましたが、残念ながら特別な項目が立てられてはいませんでした。

肩透かしを食わされた気分です。

そして、佐藤忠男の「日本映画史」の中で、もうひとつ気に掛かる部分がありました。

「洲崎パラダイス 赤信号」のなかで新珠三千代が演じた役・蔦枝が「娼婦」と記されている部分です。

僕はいままで、彼女が演じたあの役は、食い詰めて、そのままでは娼婦に落ちてしまいかねない危うい境遇の女だと思い込んでいました。

そうだったのだろうか、もしそうなら、僕がいままで持っていた固定観念を修正する必要が生じる。

撮り溜めたストックのなかに、この作品のビデオがきっと保存されているとは思いますが、整理が悪いので、すぐには見つかりそうもありません。

そうそう、以前書いた感想ならブログの中にあるかもしれないと気がつきました。

そんなわけで、少し以前のブログを探してみたところ、ありました、ありました。

自分自身の心覚えのために、以下に貼っておこう思います。

《食い詰めた男と女が行き場所を失い、切羽つまって、洲崎に流れてきます。

しかし、川向こう洲崎遊郭で働き口を見つけるまでの決心はつかないまま、女は橋のたもとの一杯飲み屋で働き、男は蕎麦屋の出前持ちになります。

離れ離れの生活を送るうちに、女は男との腐れ縁を絶つように電気屋の主人の囲われ者となり男の前から姿を消すと、一時は男も半狂乱になって女を探しますが、それもやがて諦めて仕事に精を出すうちに、飲み屋の亭主が昔の女に殺されるという事件が起こり、それをきっかけとなって再び女とよりが戻ります。

離れたりひっついたりしながら、男と女は誰もが今にも千切れそうな生活という一本の綱の上で危なっかしい世渡りを続けているのだと描かれます。

だが、この映画の本当の主人公は、むしろ、橋の袂に踏み止まる二人を絶えず脅かし続ける川向こう、洲崎パラダイスからの、堕ちる所まで堕ちて捨て身の逞しさで生きる様々な人間たちの、お祭り騒ぎのようなどよめきと賑わいです。

あの溝口健二の最期の作品「赤線地帯」は、奇しくもこの同じ年に撮られています。

地獄のような赤線の町から抜け出すためには、死ぬか気違いにでもならなければ駄目なのだと、売春制度の悲惨を憎悪を込めて告発したこの作品の悲惨な女たちの数々の運命が、まるで見本市のように蒐集されて描かれていく果てのラストで、ひとりのいたいけな少女が無理矢理塗りたくった厚化粧の中から、恐る恐る客に声をかける初店の鬼気迫る場面には、溝口の女性崇拝を基盤にした非人間的制度への怒りと怨念の告発が漲っていました。

しかし、過酷な運命に弄ばれ、されるがままになっている人形のような、どこまでも被害者でしかない溝口の描く女たちに比べると、川島雄三の描く女たちは、惨めな生活に絶望しながらも、だからこそ限られたその人生の、女として味わい得る快楽の悉くを享楽するために、露骨な欲情を押し隠すこともなく、とことん生き尽くそうとする貪欲な「人間の女」たちなのです。

思えば「幕末太陽傳」で、佐平次が、溢れ出る活力に任せて、はしゃぎ回り、暴れ回ったその後で、人知れず時折咳き込みながら見せた暗い不吉な表情が、彼のすぐ傍らにある死の存在を明確に仄めかすことで、作品自体に彫りの深いニヒリスティックな陰影を与え得て、物語に更に一層の豊かな奥行きを持たせることに成功し、また、それだけに観る者に強烈な印象を与えることが出来たのだと思うのですが、この「洲崎パラダイス・赤信号」における、佐平次のそうした「死」に見合うだけの謎といえば、それはきっと女(蔦枝)の「過去」の得体の知れなさではないでしょうか。

食い詰めた二人が洲崎まで流れてきて、橋の手前で躊躇する感じが何やら意味ありげなのです。

そして物語が進行するにつれ蔦枝が元娼婦だったらしいことが、周囲で取り交わされる会話や雰囲気で何となく分かり始めます。

そのことで、更に蔦枝の迷いも少しずつ分かり始めます。

食うためなら、少しの間、体を売ってもいいかも知れない、と考えたかも知れません。

彼女が、体を売ること自体に抵抗を持っていたとは考えにくいものがあります。

もしあるとすれば、亭主に対する遠慮だけだったのではないでしょうか。

ここで川島雄三が描いている蔦枝という女は、溝口健二の描いた日本の古い因習に囚われた痛ましい女たちとは、だいぶ様子が違います。

蔦枝には、そもそも性に対する罪悪感が全然ありません。

むしろ、蔦枝は、「洲崎遊郭」という解放区で性の魅力と自由さに再び魅入られ虜にされてしまうことを恐れているかのようにさえ思えてしまいました。

彼女が持て余しているのは、絶望的なくらいに生き生きとした彼女自身の「女であること」の決定的なバイタリティです。

ここまで書いてきて、この作品は、もしかすると売春防止法というものに対する川島雄三の意思表示だったのかもしれないと思えてきました。

もし金のために嫌々身を売らねばならない不幸な女が一人でもいるなら、売春防止法は有効であるという論理の裏側で、1人だけの男に独占されることを拒み、様々な男たちとの性交渉を通して自分の肉体が持つ官能の可能性の総てを欲望のままに享楽し尽くそうとする女がひとりでもいる限り、売春防止法は無効であるという論理も成り立つ可能性も在り得るのではないか、というような・・・。

この作品は、川島雄三の最高傑作です》

しかしなんですよね、その新珠三千代も既に亡くなってしまっているのですから、やっぱりこのあたりが映画の残酷なところなんでしょうか。

そういえば「小早川家の秋」の最後の場面はこんなふうでしたよね。

火葬場の煙突から出る煙を見ながら、河原の夫婦が言葉を交わします。
「爺様や婆様やったら大事ないけど、若い人やったら可哀想やなあ。」
「うーむ、けど、死んでも死んでも、あとからあとからせんぐりせんぐり生まれてくるわ。」
「そうやなあ、よう出来とるわ。」

この死の影に覆われた壮絶な台詞を聞いてしまったら、「映画って、本当に素晴らしいものですね」なんて、口が曲がっても僕には言えそうにありません。

(56日活)(監督)川島雄三(原作)芝木好子(脚本)井手俊郎、寺田信義(撮影)髙村倉太郎(美術)中村公彦(音楽)眞鍋理一郎
(出演)新珠三千代、轟夕起子、河津清三郎、三橋達也、芦川いづみ、牧眞介、桂典子、田中筆子、植村謙二郎、冬木京三、小澤昭一、山田禪二、菊野明子、隅田恵子、津田朝子
(81分・35mm・白黒)

新珠三千代出演作
1.1951.06.22 平安群盗伝 袴だれ保輔  東宝
2.1952.06.12 娘十八お転婆時代  宝塚映画
3.1952.10.01 その夜の誘惑  宝塚映画
4.1953.03.05 悲剣乙女桜  宝塚映画
5.1953.04.29 妻  東宝  
6.1953.12.29 鞍馬天狗斬り込む  宝塚映画
7.1955.03.01 人形佐七捕物帖 めくら狼  滝村プロ
8.1955.04.24 花のゆくえ  日活
9.1955.05.29 あした来る人  日活
10.1955.07.12 若き魂の記録 七つボタン  日活
11.1955.08.02 青空の仲間  日活
12.1955.08.09 三つの顔  日活
13.1955.08.21 月夜の傘  日活
14.1955.08.31 こころ  日活  
15.1955.10.25 江戸一寸の虫  日活
16.1956.01.03 ただひとりの人  日活
17.1956.01.21 ただひとりの人 第二部  日活
18.1956.02.19 風船  日活  
19.1956.02.25 神阪四郎の犯罪  日活
20.1956.03.14 死の十字路  日活
21.1956.04.04 東京の人 前後篇  日活  
22.1956.05.03 雑居家族  日活
23.1956.05.31 続ただひとりの人  日活
24.1956.07.31 洲崎パラダイス 赤信号  日活  
25.1956.11.14 乳母車  日活
26.1957.01.03 お転婆三人姉妹 踊る太陽  日活  
27.1957.01.03 川上哲治物語 背番号16  日活  
28.1957.03.20 「廓」より 無法一代  日活
29.1957.08.10 夜の鴎  東宝  
30.1957.09.15 初恋物語  東宝  
31.1957.11.15 女殺し油地獄  東宝  
32.1957.11.29 遙かなる男  東宝
33.1958.02.18 母三人  東京映画  
34.1958.03.25 葵秘帖  東映京都  
35.1958.04.15 東京の休日  東宝
36.1958.05.26 結婚のすべて  東宝  
37.1958.07.12 若い獣  東宝
38.1958.08.19 炎上  大映京都  
39.1958.09.02 鰯雲  東宝
40.1959.01.15 人間の条件 第一部純愛篇、第二部激怒篇  にんじんくらぶ=歌舞伎座映画
41.1959.01.28 かげろう笠  大映京都
42.1959.04.12 私は貝になりたい  東宝
43.1959.06.13 千代田城炎上  大映京都
44.1959.08.09 新・三等重役  東宝
45.1959.08.19 新吾十番勝負 第二部  東映京都  
46.1959.08.29 お役者鮫  大映京都
47.1959.11.20 人間の条件 第三部望郷篇、第四部戦雲篇  人間プロ
48.1960.01.15 新・三等重役 旅と女と酒の巻  東宝  
49.1960.01.27 現代サラリーマン 恋愛武士道  東宝
50.1960.03.22 若い素肌  東宝
51.1960.03.29 国定忠治  東宝
52.1960.04.26 新・三等重役 当るも八卦の巻  東宝  
53.1960.06.26 接吻泥棒  東宝
54.1960.07.12 新・三等重役 亭主教育の巻  東宝  
55.1960.08.28 濹東綺譚  東京映画
56.1960.09.18 自由ケ丘夫人  東京映画
57.1960.11.19 赤坂の姉妹 夜の肌  東京映画
58.1960.12.25 サラリーマン忠臣蔵  東宝  
59.1961.01.28 人間の条件 完結篇 第五部死の脱出、第六部曠野の彷徨  文芸プロ=にんじんくらぶ
60.1961.02.14 南の風と波  東宝
61.1961.02.25 続サラリーマン忠臣蔵  東宝  
62.1961.04.25 社長道中記  東宝  
63.1961.05.16 女家族  宝塚映画  
64.1961.06.14 沓掛時次郎  大映京都  
65.1961.10.29 小早川家の秋  宝塚映画
66.1961.11.12 黒い画集 第二話 寒流  東宝
67.1962.01.03 サラリーマン清水港  東宝
68.1962.03.07 続サラリーマン清水港  東宝  
69.1962.04.29 社長洋行記  東宝  
70.1962.05.22 愛のうず潮  東宝
71.1962.06.01 続社長洋行記  東宝  
72.1962.06.20 おへその大将  宝塚映画
73.1962.09.01 かあちゃん結婚しろよ  松竹大船
74.1962.11.03 忠臣蔵 花の巻 雪の巻  東宝  
75.1963.01.15 憂愁平野  東京映画
76.1963.02.17 風の視線  松竹大船
77.1963.04.28 社長外遊記  東宝
78.1963.05.29 続社長外遊記  東宝  
79.1963.08.14 馬喰一代  東映東京
80.1963.09.14 丼池  宝塚映画
81.1963.11.16 江分利満氏の優雅な生活  東宝  
82.1963.12.08 暁の合唱  宝塚映画  
83.1964.02.29 今日もわれ大空にあり  東宝
84.1964.02.29 続社長紳士録  東宝
85.1964.04.04 喜劇 陽気な未亡人  東京映画
86.1964.07.11 悪の紋章  宝塚映画
87.1964.08.28 西の王将 東の王将  東宝
88.1965.01.03 社長忍法帖  東宝  
89.1965.01.03 侍  東宝=三船プロ
90.1965.01.06 怪談  文芸プロ=にんじんくらぶ  
91.1965.01.31 続社長忍法帖  東宝
92.1965.04.10 冷飯とおさんとちゃん  東映京都  
93.1965.05.28 霧の旗  松竹大船
94.1966.01.03 社長行状記  東宝
95.1966.01.25 女の中にいる他人  東宝  
96.1966.02.25 続社長行状記  東宝  
97.1966.02.25 大菩薩峠  宝塚映画  
98.1966.10.01 あこがれ  
99.1967.01.01 社長千一夜  東宝
100.1967.01.14 惜春  松竹大船
101.1967.06.03 続社長千一夜  東宝
102.1967.08.03 日本のいちばん長い日  東宝  
103.1967.09.23 斜陽のおもかげ  日活  
104.1968.01.14 春らんまん  東宝  
105.1968.05.25 喜劇 駅前火山  東京映画
106.1968.06.08 日本の青春  東京映画
107.1968.12.28 喜劇 大安旅行  松竹大船
108.1969.03.29 ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑みを  東京映画
109.1969.05.14 超高層のあけぼの  日本技術映画
110.1969.05.31 鬼の棲む舘  大映京都  
111.1970.01.15 男はつらいよ フーテンの寅  松竹大船  
112.1970.06.06 ある兵士の賭け  石原プロ
113.1973.09.08 人間革命  シナノ企画=東宝映像
114.1975.11.01 陽のあたる坂道  東宝映画
115.1976.06.19 続人間革命  東宝映像=シナノ企画
116.1976.10.02 喜劇 百点満点  東宝映画  
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by sentence2307 | 2007-10-20 21:36 | 映画 | Comments(2)

裕次郎のいない日活

「月夜の傘」を書いたついでに、長年気に掛かっていたことを調べてみようと思い立ちました。

この「月夜の傘」もそのうちの一本だと思うのですが、戦後日活が映画制作を始めてから、石原裕次郎が登場するまでの間に作られた作品というものにとても興味がありました。

きっと川島雄三なども該当するのだろうと思います。

とにかく石原裕次郎の登場は「出来事」というよりも、その圧倒的な人気によって、経営不振に陥り傾きかけていた日活という会社を、見事に立ち直らせてしまったという日本映画史における奇跡というか、現在でも語り継がれている「事件」と聞いています。

しかし、その「圧倒的な人気」の影で、失われてしまったものもきっと数多くあったに違いありません。

そういう意味でも、この「月夜の傘」は、そのうちの良質な一本だったはずだと思います。

その辺の事情を、田中純一郎著「日本映画発達史」第4巻・史上最高の映画時代の第74節「日活映画と『太陽の季節』」の項に、こんなふうに書かれています。

「昭和29年(1954)6月に、自主製作第一回作を発表以来、日活は年末までに12作品を公開したが、興行的にも作品的にもヒットしたのは、「黒い潮」一本であった。
不人気の大半は、スター・バリューが弱いためである。
「黒い潮」が好評だったのは、一時社会を騒がした下山国鉄総裁の怪死事件を扱った題材の魅力からである。
日活は、スター・バリューの弱体をカバーするために、企画を精選し、題材の魅力で吸引力をつけるほかないと考え、この旨プロデューサーに強調するとともに、東映の2本立て製作による全プロ契約館の獲得に倣って、30年度から、日活も2本立て全プロ製作を強行する旨声明した。
はじめ、日活の自主製作再開にあたって、月額製作能力は2本くらいと見た既成各社は、日活恐るるに足らずと考えたが、この2本立て全プロ製作の声明は、少なからぬ衝撃を各社に与えた。
なかでも、特作1本立てを主張する大映は、明らかに日活と対立的立場に立ち、ついに防御上やむを得ずとして、30年正月は、新東宝を除く各社が、すべて2本立てで対抗するという状況を呈した。
日活の全プロ攻勢は、29年11月に撮影所の第2次工事が完了して、ステージが8つになり、常時8班の撮影が進行できることになったことと、更に第3期工事の完成によって、4ステージが増加され、2本立ては特作級の製作を合わせても、完全に実施できる見通しがついたからであった。」

日活にとって1954年という年は、そういう年でした。

文中に記されている12本の映画(日本映画データベースで調べたら、13本ありました)とは、以下のとおりです。

1.1954.06.27 かくて夢あり  日活 千葉泰樹
2.1954.06.27 国定忠治  日活 滝沢英輔
3.1954.07.27 学生心中  日活 森永健次郎
4.1954.07.27 沓掛時次郎  日活 佐伯清
5.1954.08.31 黒い潮  日活 山村聡
6.1954.09.21 愛と死の谷間  日活 五所平之助
7.1954.09.21 泥だらけの青春  日活 菅井一郎
8.1954.10.26 からたちの花  日活 佐伯清
9.1954.11.23 白き神々の座  日活 高木俊郎
10.1954.11.23 女人の舘  日活 春原政久
11.1954.11.30 初姿丑松格子  日活 滝沢英輔
12.1954.12.28 お月様には悪いけど  日活 堀池清
13.1954.12.28 俺の拳銃は素早い  日活 野口博志

野口博志の「俺の拳銃は素早い」もあったんですね。

さて、田中純一郎著「日本映画発達史」には、さらに、この2本立て完全実施のために製作スタッフを拡充したと記され、名前が上げられていました。

【プロデューサー】山本武、坂上静翁、浅田健三、水の江滝子、児井英生、高木雅行、岩井金男、藤木了次、蘆田正蔵、

【演出者】川島雄三、滝沢英輔、西河克巳、小林桂三三郎、野口博志、堀池清、古川卓巳、森永健次郎、吉村廉(以上専属契約)、久松静児、マキノ)、久松静児、マキノ雅弘、春原政久、井上梅次、田坂具隆、山村聡、吉村公三郎、新藤兼人、田中絹代、市川崑、佐伯清(以上本数契約)

【撮影者】峰重義、柿田勇、中尾利太郎、伊佐山三郎、高村倉太郎、横山実、藤岡粂信、(以上専属契約)、山崎安一郎、姫田眞佐久、永塚一栄、三村明(以上作品契約)

【俳優】三国】三国連太郎、三橋達也、小林桂樹、三島耕、河津清三郎、坂東好太郎、伊藤雄之助、大坂志郎、伊沢一郎、月丘夢路、北原三枝、小田切みき、新珠三千代、南田洋子

そして、いよいよ1955年となるわけですが、1月に出てくるのは、もちろん田中絹代の「月は上りぬ」です。

出来栄えも好評で「日活の月も、ようやくこれで上がった、と下馬評された」と記されています。

そして、この年の11月に、田中絹代監督第3作目の「乳房よ永遠なれ」が撮られています。

1.1955.01.02 美男お小姓 人斬り彦斎  日活 佐伯清
2.1955.01.08 月は上りぬ  日活 田中絹代
3.1955.01.08 初恋カナリヤ娘  日活 吉村廉
4.1955.01.14 ソ満国境2号作戦 消えた中隊  日活 三村明
5.1955.01.23 スラバヤ殿下  日活 佐藤武
6.1955.02.03 警察日記  日活 久松静児
7.1955.02.11 青春温泉夜話 湯の町椿  日活 堀池清
8.1955.02.18 次郎長遊侠伝 秋葉の火祭り  日活 マキノ雅弘
9.1955.02.25 生きとし生けるもの  日活 西河克己
10.1955.03.04 坊ちゃん記者  日活 野口博志
11.1955.03.11 地獄の用心棒  日活 古川卓巳
12.1955.03.18 愛のお荷物  日活 川島雄三
13.1955.03.25 森蘭丸  日活 小林桂三郎
14.1955.04.01 銀座の女  日活 吉村公三郎
15.1955.04.10 おふくろ  日活 久松静児
16.1955.04.19 青春怪談  日活 市川崑
17.1955.04.24 花のゆくえ  日活 森永健次郎
18.1955.05.03 猿飛佐助  日活 井上梅次
19.1955.05.03 次郎長遊侠伝 天城鴉  日活 マキノ雅弘
20.1955.05.08 緑はるかに  日活 井上梅次
21.1955.05.15 うちのおばあちゃん  日活 春原政久
22.1955.05.24 落日の決闘  日活 野口博志
23.1955.05.29 あした来る人  日活 川島雄三
24.1955.06.05 六人の暗殺者  日活 滝沢英輔
25.1955.06.14 春の夜の出来事  日活 西河克己
26.1955.06.19 木曾の風来坊  日活 小林桂三郎
27.1955.06.26 女中ッ子  日活 田坂具隆
28.1955.07.03 少年死刑囚  日活 吉村廉
29.1955.07.12 若き魂の記録 七つボタン  日活 古川卓巳
30.1955.07.19 地獄の接吻  日活 野口博志
31.1955.07.26 おしゅん捕物帖 謎の尼御殿  日活 滝沢英輔
32.1955.08.02 青空の仲間  日活 堀池清
33.1955.08.09 三つの顔  日活 井上梅次
34.1955.08.16 大岡政談 人肌蝙蝠  日活 野口博志
35.1955.08.21 月夜の傘  日活 久松静児
36.1955.08.31 こころ  日活 市川崑
37.1955.09.07 白浪若衆 江戸快盗伝  日活 小林桂三郎
38.1955.09.16 銀座二十四帖  日活 川島雄三
39.1955.09.21 愛慾と銃弾  日活 野口博志
40.1955.09.28 自分の穴の中で  日活 内田吐夢
41.1955.10.11 沙羅の花の峠  日活 山村聡
42.1955.10.18 未成年  日活 井上梅次
43.1955.10.25 江戸一寸の虫  日活 滝沢英輔
44.1955.11.01 人生とんぼ返り  日活 マキノ雅弘
45.1955.11.09 幼きものは訴える  日活 春原政久
46.1955.11.16 続警察日記  日活 久松静児
47.1955.11.23 乳房よ永遠なれ  日活 田中絹代
48.1955.12.04 母なき子  日活 堀池清
49.1955.12.20 逢いたかったぜ  日活 小林桂三郎
50.1955.12.20 月がとっても青いから  日活 森永健次郎
51.1955.12.27 顔役  日活 古川卓巳
52.1955.12.27 力道山物語 怒濤の男  日活 森永健次郎
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by sentence2307 | 2007-10-16 00:03 | 映画 | Comments(4)

月夜の傘

この久松静児作品について書く前に、ひとつだけ告白しておかなければならないことがあります。

実はこの作品、タイトルに「月」とある日活作品で、田中絹代の名前もあったりということで、すっかり田中絹代の第2回監督作品「月は上りぬ」と思い込んでしまい、実際にこの作品を見るまで、そのことに気づきませんでした。

田中絹代の第1回監督作品「恋文」は、製作に至るまでの周辺事情があまりにもスキャンダラスすぎて(なにしろ絹代をめぐる溝口健二と小津安二郎と成瀬巳喜男が絡む人間臭丸出しのゴタゴタなので、どうしてもソチラに気を取られてしまい)、作品それ自体の評価の方はどうしても置き去りにされてしまった感じで、当時の評価を見ても、あまり芳しいものはなかったように記憶しています。

しかし、僕としては、男の身勝手な思い込みに傷つくあの繊細な女の描き方は、あまりにも「卑屈すぎる」という酷評を遥かに超える、「死んでも見返してやる」みたいな、閉ざされた時代と男たちに強いられる屈従を、死を賭して抗する力強い女の意地を感じました。

すでに田中絹代の生き様を知っている僕たちにとって、久我美子の熱演に絹代を二重写しにしてしまうハンディを差し引いたとしても、この「恋文」は僕の気持の深い部分にグサリと届く力作です。

そんな印象を持っている絹代の第2回監督作品という、深刻な錯覚を抱え込んで見ようとしているわけですから、当然に襟を正し、正座をするくらいの緊張感をもって、この「月夜の傘」を見始めたのでした。

(僕の勘違いを、ひとこと弁明させてもらうと、この2作品は同じ1955年の製作で、「月は上りぬ」は1月8日封切り、「月夜の傘」の方は8月21日の封切りですので、たとえこれが見当違いだったとしても、滅茶苦茶な勘違いだったわけではないと思うようにしています)

久松静児作品の真骨頂が、「軽さ」と「哀しみ」(ひとことで片付けてしまってすみません)だとすると、それを絹代作品の深刻さと比べるとき、この落差は物凄いものがあると思います。

なにしろこの映画、4人の女性たちが井戸端に集まって洗濯に精を出しながらペチャクチャと井戸端で世間話に興ずるという、いわば井戸端会議に始まって井戸端会議に終わるような作品です。

もっとも、各家庭がそれぞれ少しばかり深刻な問題を抱え込みながら、そして迷いながらも、停滞し、葛藤を重ねて、それぞれがどうにか解決の途を模索していくというホームドラマということが出来るかもしれません。

ただ、僕がとても面白いなと感じたのは、《いわば井戸端会議に始まり、井戸端会議に終わる》というシチュエーションでした。

ああでもない・こうでもないとペチャクチャと交わされる猥雑な世間話のおびただしい「雑談」のなかから、ひとつひとつストーリーが枝分かれしながら、ふたたび井戸端の世間話のなかに収束されていく、とても斬新で新しいスタイルのように感じました。

どんなに深刻な話も、どんなに軽い話も、「井戸端の世間話」に取り込まれてしまうという、残酷ではありながら自浄効果も併せ持っているという、浮世を生き抜く技術みたいなものをそこに感じました。

それぞれが自分なりの根深い不幸を抱えながら、しかし、他人の不幸を客観的に語ることの気楽な楽しみにふける庶民の「泣き笑い」の、洗練された点描画を見る思いがしました。

(55日活)監督・久松静児、製作・坂上静翁、原作・壷井栄、脚本・井手俊郎、撮影・姫田眞佐久、音楽・斎藤一郎、美術・木村威夫、録音・中村俊夫、照明・大西美津男
出演・田中絹代、宇野重吉、渡辺鉄彌、真塩洋一、加藤淳子、轟夕起子、三島雅夫、茂崎幸雄、飯田蝶子、坪内美詠子、二木てるみ、新珠三千代、三島耕、伊藤雄之助、桜井真、宍戸錠、杉幸彦、東山千栄子、新井麗子、加原武門、高田敏江、大森曉美、光沢でんすけ、須田喜久代、丘志摩子、竹内洋子
129分・モノクロ1955.08.21 14巻 3,492m



★姫田眞左久〔ひめだ・しんさく〕1916(大正5)年11月19日兵庫県生まれ。37(昭和12)年、東京帝国美術学校を中退、日活多摩川撮影所に撮影助手として入社。39~42年軍籍、42年大映に復帰。48年『母紅梅』で撮影者に昇進。54年日活に移籍、78年以降フリー。主に、小石栄一、久松静児、舛田利雄、今村昌平、中平康、西村昭五郎、神代辰巳などの作品の撮影を担当。生涯に162本の映画作品を撮影した。1997(平成9)年7月29日、心不全のため死去。享年80歳。

<撮影作品>

1949(昭和24)年
1)母紅梅 監督/小石栄一 出演/三益愛子、三条美紀
2)母三人 監督/小石栄一 出演/水戸光子、入江たか子
3)流れる星は生きている 監督/小石栄一 出演/三益愛子、三条美紀

1950(昭和25)年
4)母椿 監督/小石栄一 出演/三益愛子、菅井一郎
5)一匹狼 監督/小石栄一 出演/藤田進、三条美紀
6)拳銃の前に立つ母 監督/小石栄一 出演/三益愛子、植村謙二郎
7)三悪人と赤ん坊 監督/小石栄一 出演/藤田進、三条美紀
8)午前零時の出獄 監督/小石栄一 出演/岡田英二、宇野重吉

1951(昭和26)年
9)暴夜物語 監督/小石栄一 出演/藤田進、乙羽信子
10)飛騨の小天狗 監督/小石栄一 出演/菅原謙二、荒川さつき
11)江の島悲歌 監督/小石栄一 出演/宇佐見淳、久我美子
12)奴隷の街 監督/小石栄一 出演/堀雄二、久我美子

1952(昭和27)年
13)群狼の街 監督/小石栄一 出演/菅原謙二、久我美子
14)死の街を逃れて 監督/小石栄一 出演/水戸光子、細川ちか子
15)母子鶴 監督/小石栄一 出演/三益愛子、若尾文子
16)街の小天狗 監督/吉村廉  出演/菅原謙二、三条美紀

1953(昭和28)年
17)新・江の島悲歌 監督/小石栄一 出演/南田洋子、根上淳
18)続々 十代の性典 監督/小石栄一 出演/若尾文子、南田洋子

1954(昭和29)年
19)心臓破りの丘 監督/木村恵吾 出演/根上淳、宇野重吉
20)心の日月 監督/木村恵吾 出演/若尾文子、菅原謙二
21)こんなアベック見たことない 監督/小松原力 出演/星光、神楽坂はん子
22)神風特攻隊 監督/小石栄一 出演/宇佐見淳、堀雄二

1955(昭和30)年
23)警察日記 監督/久松静児 出演/三國連太郎、森繁久彌
24)おふくろ 監督/久松静児 出演/望月優子、木村功
25)春の夜の出来事 監督/西川克巳 出演/三島耕、伊藤雄之助
26)月夜の傘 監督/久松静児 出演/田中絹代、新珠三千代
27)続・警察日記 監督/久松静児 出演/伊藤雄之助、大坂志郎

1956(昭和31)年
28)朝やけ決戦場 監督/マキノ雅広 出演/大坂志郎、北原三枝
29)神坂四郎の犯罪 監督/久松静児 出演/森繁久彌、滝沢修
30)雑居家族 監督/久松静児 出演/轟夕起子、左幸子
31)志津野一平シリーズ・謎の金塊 監督/野口博志 出演/河津清三郎、日高澄子
32)逆光線 監督/古川卓巳 出演/北原三枝、香月美奈子
33)牛乳屋フランキー 監督/中平康 出演/フランキー堺、市村俊幸

1957(昭和32)年
34)フランキー・ブーチャンのあゝ軍艦旗 監督/春原政久 出演/フラ
キー堺、市村俊幸
35)ジャズ娘誕生 監督/春原政久 出演/江利チエミ、石原裕次郎
36)殺したのは誰だ 監督/中平康 出演/菅井一郎、青山恭二
37)江戸の小鼠たち 監督/冬島泰三 出演/長門裕之、津川雅彦

1958(昭和33)年
38)心と肉体の旅 監督/舛田利雄 出演/南田洋子、葉山良二
39)母三人 監督/久松静児 出演/山田五十鈴、仲代達矢
40)美しい庵主さん 監督/西川克巳 出演/小林旭、浅丘ルリ子
41)知と愛の出発 監督/斎藤武市 出演/芦川いづみ、川地民夫
42)星は何でも知っている 監督/吉村廉 出演/岡田真澄、丘野美子
43)赤い波止場 監督/舛田利雄 出演/石原裕次郎、北原三枝
44)果しなき欲望 監督/今村昌平 出演/長門裕之、中原早苗

1959(昭和34)年
45)女を忘れろ 監督/舛田利雄 出演/小林旭、浅丘ルリ子
46)今日に生きる 監督/舛田利雄 出演/石原裕次郎、北原三枝
47)男が爆発する 監督/舛田利雄 出演/石原裕次郎、北原三枝
48)その壁を砕け 監督/中平康 出演/長門裕之、小高雄二
49)ゆがんだ月 監督/松尾昭典 出演/長門裕之、芦川いづみ
50)にあんちゃん 監督/今村昌平 出演/長門裕之、松尾嘉代

1960(昭和35)年
51)鉄火場の風 監督/牛原陽一 出演/石原裕次郎、北原三枝
52)海から来た流れ者 監督/山崎徳次郎 出演/小林旭、浅丘ルリ子
53)邪魔者は消せ 監督/牛原陽一 出演/赤木圭一郎、清水まゆみ
54)海を渡る波止場の風 監督/山崎徳次郎 出演/小林旭、浅丘ルリ子
55)霧笛が俺を呼んでいる 監督/山崎徳次郎 出演/赤木圭一郎、芦川いづみ
56)闇を裂く口笛 監督/森永健次郎 出演/沢本忠雄、笹森礼子

1961(昭和36)年
57)俺の血が騒ぐ 監督/山崎徳次郎 出演/赤木圭一郎、笹森礼子
58)豚と軍艦 監督/今村昌平 出演/長門裕之、南田洋子
59)紅の拳銃 監督/牛原陽一 出演/赤木圭一郎、笹森礼子
60)生きていた野良犬 監督/舛田利雄 出演/二谷英明、葉山良二
61)用心棒稼業 監督/舛田利雄 出演/宍戸錠、二谷英明
62)太陽、海を染めるとき 監督/舛田利雄 出演/小林旭、浅丘ルリ子
63)太陽は狂ってる 監督/舛田利雄 出演/浜田光夫、川地民夫
64)暗黒街の静かな男 監督/舛田利雄 出演/二谷英明、白木マリ
65)ずらり俺たちゃ用心棒 監督/松尾昭典 出演/二谷英明、和田浩二

1962(昭和37)年
66)黒いダイス 監督/牛原陽一 出演/二谷英明、和田浩二
67)キューポラのある街 監督/浦山桐郎 出演/吉永小百合、浜田光夫
68)太陽と星 監督/牛原陽一 出演/二谷英明、和泉雅子
69)当りや大将 監督/中平康 出演/轟夕起子、長門裕之
70)若くて悪くて凄いこいつら 監督/中平康 出演/高橋英樹、山内賢
71)激しい河 監督/牛原陽一 出演/高橋英樹、和泉雅子

1963(昭和38)年
72)危いことなら銭になる 監督/中平康 出演/宍戸錠、浅丘ルリ子
73)空の下遠い夢 監督/牛原陽一 出演/和田浩二、山内賢
74)アカシアの雨がやむとき 監督/吉村廉 出演/高橋英樹、浅丘ルリ子
75)現代っ子 監督/中平康 出演/中山千夏、鈴木やすし
76)その人は遠く 監督/堀池清 出演/山内賢、芦川いづみ
77)にっぽん昆虫記 監督/今村昌平 出演/左幸子、北村和夫

1964(昭和39)年
78)美しい十代 監督/吉村廉 出演/西尾三枝子、浜田光夫
79)赤い殺意 監督/今村昌平 出演/春川ますみ、西村晃
80)大日本コソ泥伝 監督/春原政久 出演/長門裕之、藤村有弘

1965(昭和40)年
81)拳銃無頼帖・流れ者の群れ 監督/野口晴康 出演/小林旭、宍戸錠
82)日本列島 監督/熊井啓 出演/芦川いづみ、二谷英明
83)明日は咲こう花咲こう 監督/江崎実生 出演/吉永小百合、三田明

1966(昭和41)年
84)帰ってきた狼 監督/西村昭五郎 出演/山内賢、ジュディ・オング
85)「エロ事師たち」より・人類学入門 監督/今村昌平 出演/小沢昭一、坂本スミ子
86)放浪のうた 監督/野村孝 出演/小林旭、広瀬みさ
87)涙くんさよなら 監督/西村昭五郎 出演/ジュディ・オング、山内賢
88)愛と死の記録 監督/蔵原惟繕 出演/渡哲也、吉永小百合
89)私は泣かない 監督/吉田憲二 出演/和泉雅子、山内賢

1967(昭和42)年
90)青春の海 監督/西村昭五郎 出演/吉永小百合、浅丘ルリ子
91)終りなき生命を 監督/吉田憲二 出演/和泉雅子、岡田英次
92)波止場の鷹 監督/西村昭五郎 出演/石原裕次郎、丹波哲郎

1968(昭和43)年
93)かぶりつき人生 監督/神代辰巳 出演/殿岡ハツエ、丹羽志津
94)「経営学入門」より・ネオン太平記 監督/磯見忠彦 出演/小沢昭一、西村晃
95)星影の波止場 監督/西村昭五郎 出演/浜田光夫、和泉雅子
96)青春の風 監督/西村昭五郎 出演/吉永小百合、山本陽子
97)東シナ海 監督/磯見忠彦 出演/田村正和、内田良平

1969(昭和44)年
98)野獣を消せ 監督/長谷部安春 出演/渡哲也、藤本三重子
99)夜をひらく・女の市場 監督/江崎実生 出演/小林旭、山本陽子
100)極道ペテン師 監督/千野晧司 出演/フランキー堺、伴淳三郎
101)刺客列伝 監督/西村昭五郎 出演/高橋英樹、大辻司郎
102)華やかな女豹 監督/江崎実生 出演/浅丘ルリ子、二谷英明

1970(昭和45)年
103)戦争と人間 第一部・運命の序曲 監督/山本薩夫 出演/滝沢修、芦田伸介
104)トラ・トラ・トラ! 監督/舛田利雄 出演/山村総、三橋達也
105)いちどは行きたい女風呂 監督/江崎実生 出演/夏純子、浜田光夫
106)女子学園・悪い遊び 監督/江崎実生 出演/夏純子、岡崎二朗

1971(昭和46)年
107)戦争と人間 第二部・愛と悲しみの山河 監督/山本薩夫 出演/芦田伸介、浅丘ルリ子
108)未帰還兵を追って 監督/今村昌平 TVドキュメンタリー

1972(昭和47)年
109)濡れた唇 監督/神代辰巳 出演/谷本一、絵沢萠子
110)白い指の戯れ 監督/村川透 出演/荒木一郎、伊佐山ひろ子
111)真夏の夜の情事 監督/藤井克彦 出演/白川和子、高橋明
112)官能地帯・哀しみの女街 監督/村川透 出演/青山美代子、谷本一
113)一条さゆり・濡れた欲情 監督/神代辰巳 出演/一条さゆり、白川和子
114)官能教室・愛のテクニック 監督/田中登 出演/田中真理、絵沢萠子
115)OL日記・牝猫の情事 監督/加藤彰 出演/中川梨絵、山田克郎
116)哀愁のサーキット 監督/村川透 出演/峰岸隆之介、木山佳

1973(昭和48)年
117)戦争と人間 完結篇 監督/山本薩夫 出演/北大路欣也、吉永小百合
118)恋人たちは濡れた 監督/神代辰巳 出演/大江徹、中川梨絵
119)四畳半襖の裏張り 監督/神代辰巳 出演/宮下順子、江角英明

1974(昭和49)年
120)濡れた欲情・特出し21人 監督/神代辰巳 出演/片桐夕子、芹明香
121)鍵 監督/神代辰巳 出演/観世栄夫、荒砂ユキ
122)四畳半襖の裏張り・しのび肌 監督/神代辰巳 出演/宮下順子、江角英明
123)不明
124)青春の蹉跌 監督/神代辰巳 出演/萩原健一、桃井かおり
125)赤線玉の井・ぬけられます 監督/神代辰巳 出演/宮下順子、蟹江敬三
126)宵待草 監督/神代辰巳 出演/高橋洋子、高岡健二

1975(昭和50)年
127)櫛の火 監督/神代辰巳 出演/草刈正雄、ジャネット八田
128)アフリカの光 監督/神代辰巳 出演/萩原健一、田中邦衛
129)東京エマニエル夫人 監督/加藤彰 出演/田口久美、村上不二夫
130)黒薔薇昇天 監督/神代辰巳 出演/谷ナオミ、岸田森

1976(昭和51)年
131)パリの哀愁 監督/出目昌伸 出演/沢田研二、クロディーヌ・オージェ
132)オイディプスの刃(未完) 監督/村川透(『オイディプスの刃』は一九八六年、成島東一郎監督、杉村博章撮影、角川春樹事務所製作で製作された)
133)女教師童貞狩り 監督/加藤彰 出演/渡辺外久子、三上剛
134)「妻たちの午後は」より・官能の檻 監督/西村昭五郎 出演/宮下順子、渡辺外久子
135)性処女ひと夏の経験 監督/蔵原惟二 出演/東てる美、堀井永子

1977(昭和52)年
136)悶絶!! どんでん返し 監督/神代辰巳 出演/鶴岡修、遠藤征慈
137)壇の浦夜枕合戦記 監督/神代辰巳 出演/渡辺とく子、風間杜夫
138)人間の証明 監督/佐藤純彌 出演/三船敏郎、岡田茉莉子
139)16歳・妖精の部屋 監督/加藤彰 出演/早瀬しおり、内田良平

1978(昭和53)年
140)順子わななく 監督/武田一成 出演/宮下順子、殿山泰司
141)野性の証明 監督/佐藤純彌 出演/高倉健、薬師丸ひろ子

1979(昭和54)年
142)復讐するは我にあり 監督/今村昌平 出演/緒形拳、三國連太郎

1980(昭和55)年
143)天平の甍 監督/熊井啓 出演/中村嘉葎雄、田村高廣
144)少女娼婦・けものみち 監督/神代辰巳 出演/吉村彩子、内田裕也

1981(昭和56)年
145)ええじゃないか 監督/今村昌平 出演/泉谷しげる、桃井かおり

1982(昭和57)年
146)飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 監督/木下亮 出演/名高達郎、竹下景子
147)誘拐報道 監督/伊藤俊也 出演/萩原健一、小柳ルミ子
148)赤い帽子の女 監督/神代辰巳 出演/永島敏行、クリスティーン・ファン・アイク

1983(昭和58)年
149)OKINAWAN BOYS オキナワの少年 監督/新城卓 出演/藤川一歩、我那覇文章
150)嵐を呼ぶ男 監督/井上梅次 出演/近藤真彦、田原俊彦

1984(昭和59)年
151)海に降る雪 監督/中田新一 出演/和由布子、田中隆三
152)ルージュ 監督/那須博之 出演/新藤恵美、火野正平

1985(昭和60)年
153)きみが輝くとき 監督/森川時久 出演/西山剛史、三國連太郎

1987(昭和62)年
154)螢川 監督/須川栄三 出演/三國連太郎、十朱幸代
155)ハチ公物語 監督/神山征二郎 出演/仲代達矢、八千草薫
156)あぶない刑事 監督/長谷部安春 出演/館ひろし、柴田恭兵

1988(昭和63)年
157)極道渡世の素敵な面々 監督/和泉聖治 出演/陣内孝則、麻生祐未

1989(平成元年)年
158)マイフェニックス 監督/西河克巳 出演/富田靖子、宍戸開
159)花の降る午後 監督/大森一樹 出演/古手川祐子、桜田淳子

1990(平成2)年
160)飛ぶ夢をしばらく見ない 監督/須川栄三  出演/細川俊之、石田えり
161)マドンナのごとく 監督/門奈克雄 出演/名取裕子、加藤昌也

1991(平成3)年
162)ふたりだけのアイランド 監督/すずきじゅんいち 出演/中川安奈、荒井紀人
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by sentence2307 | 2007-10-14 13:06 | 映画 | Comments(702)

第三の男

ちょうど時間のめぐり合わせがいいのか、日曜の夜は、大抵TBSの「世界ウルルン滞在記」を見てしまいます。

若手タレントが、海外の一般家庭(とはいっても、特殊な技術を持った職人さん宅とか、なんらかの緊急事態に直面している地域とか、文化の恩恵をあずかれない時代から取り残されたような辺境の民族とかなので、それを「一般家庭」といえるかどうか分かりませんが)に数日ホームステイをして、日常生活を共に過ごし、その家族に打ち解けたあとの別れの日に、そこの主婦から「わたしの息子よ、また帰っておいで」とか抱き着かれて共に大泣きするという定番のシチュエーションで、視聴者もついウルウルさせられてしまうという番組です。

まあ出来の悪いドラマを見て疲れるよりも余程爽やかな余韻に浸れるので、つい毎週見てしまうのですが、さて、昨日の特番は、少し考えさせられる「滞在記」でした。

3人のゲストのうちの一人、大友康平が絶滅の危機にある楽器チターの職人(オーストリア最後のチター職人と紹介されました)ペーター氏を訪ねるという企画です。

チターといえば、もちもんキャロル・リード監督の「第三の男」のアントン・カラスを思い出さないわけにはいきません。

しかし、番組の中で幾度も語られるアントン・カラスの名前が、はたして好意的に語られていたのかどうか、番組が終わった後の印象を思い返しても判然としません。

「最後のチター職人」ペーター氏は、世界を席巻したアントン・カラスの名曲「第三の男」のテーマがヒットして以来、あの曲を超えるものがなかったために、チター人気も衰え、そしていま絶滅の危機を迎えたのだと話していましたが、それは暗に、アントン・カラスの「第三の男」(ハリー・ライムのテーマ)がなければ、チターがこんな絶滅の危機を迎えずに済んだのだ、それもこれもみんなあのアントン・カラスが悪いのだと聞こえなくもありませんでした。

このチター人気の凋落説について、大友康平が、この楽器の操作があまりにも複雑すぎるために愛好者が次第に敬遠したのかもしれないと必死になって指摘するのですが、この若きチター職人の耳には届きそうにありませんでした。

チターは、日本の筝に似た形をした弦楽器です、31本の伴奏用の弦と5本のメロディ弦が張られ、親指につけたプレクトラムと呼ばれる爪を使い、一台のチターでメロディと伴奏を同時に奏でます。

それにしても、この最後の職人ペーター氏が、見るからに若いのには少し意外な感じを受けました。

きっと、いまが「絶滅の危機」どころではなく、もはや絶滅してしまった楽器の「復興」という時期的状況にあることを認めたくないという現状認識のギャップがあったからかもしれません。

ここまで書いてきて、不思議な思いがひとつ残りました。

ここに登場するチターを愛するオーストリアの人々が、あの美しい名曲「第三の男」のメロディーを繰り返し奏でながらも、一度として映画「第三の男」のことを語らない(語りたがらなかった、と言うべきなのでしょうか)ことでした。

それはチターという楽器を使った名曲を世に送り出したことによって、チターを世界的に有名にし、しかし、逆に絶滅の危機を招いたと見ている若き職人のアントン・カラスへの冷ややかな印象(僕はそう印象しました)と、それは奇妙に符号することに気がついたからでした。

アメリカ・ソ連・フランス・イギリスという4大国の連合国軍の熾烈な占領下にあった当時の荒廃したウィーンが描かれたこの世界的な名作が、オーストリア人にどういう思いを抱かせたのか。

戦争によって破壊されたわが祖国を舞台にしたこの犯罪映画の背景にあったもの、占領した者が、された者を追い詰めるシチュエーションに、きっと複雑な思いを感じずにおれなかったと思います。

国を追われ、また祖国を破壊され、勝者によって狩りたてられていく敗者たちの苦渋、そういう思いが踏みにじられ無視されている本質が、名作「第三の男」には隠されていると考えているからこそ、この番組に登場したオーストリア人は、あえてこの作品を語ろうとしなかったのではないかと勘繰りました。

連合国に占領され、幾作かの屈辱的で珍妙な「フジヤマ・ゲイシャ映画」を見せ付けられ、それでも卑屈な薄笑いを浮かべて、へつらい、迎合するしかなかった極東の被占領国の東洋人の子孫として、複雑な思いに駆られざるを得ませんでした。

この絶望感と虚無があのハリー・ライムの言葉を、悪の哲学という観念を超えて、より一層のリアルを感じさせたのかもしれませんね。

「イタリアは、ボルジア家の30年の圧制で血の雨が降り続いたが、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてルネッサンスを生んだ、しかし、スイスの 500年のデモクラシーと平和は何を生んだ? 鳩時計さ。」

(49イギリス)監督・製作:キャロル・リード、制作:キャロル・リード、デヴィッド・O・セルズニック、アレクサンダー・コルダ、原作・脚本:グレアム・グリーン、撮影:ロバート・クラスカー、音楽・ツィター演奏:アントン・カラス、助監督:ガイ・ハミルトン
出演:ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァリ、トレヴァー・ハワード、バーナード・リー、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト、エリッヒ・ポント、エルンスト・ドイッチュ、ジークフリート・ブロイアー、パウル・へルビガー
THE THIRD MAN  140分
アカデミー賞1950年:撮影賞(白黒部門)、カンヌ国際映画祭1949年:グランプリ(42回まではグランプリが最高賞・現在のパルム・ドール) 、英国アカデミー賞 (1949年):作品賞(国内部門)
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by sentence2307 | 2007-10-08 23:30 | 映画 | Comments(29)

大地のうた

もう随分むかしの話になりますが、この「大地のうた」を見たとき、映画の中で、雨が降るという場面を初めて見たような、そんな強烈な印象を持ちました。

雨が降る場面なら、それまでだって、映画のなかでそれこそ数え切れないくらいあったはずなのに、そうした記憶のすべてを全否定されてしまうような、それは強烈な印象だったのだと思います。

不意に襲い掛かるように驟雨が突然やってきて、大地を一瞬にして潤したかと思うと、またたくまに過ぎ去っていく、そのような雄大な大自然の営みによって旱魃と潤いが繰り返される広大な荒野の広がりを前にして、そのまえに佇む人間の儚さみたいなものを思い知らされ、その「思い知らされた」象徴として、大自然に息づく生き物としての「雨」を、そのとき初めて見たのだと感じたのかもしれません。

しかも、そういう光景をつぶさに捉えた視点が、貧しいひとりの少年のものだったことも、きっと不思議な感銘を与えたのだと思います。

ですので、映画「大地のうた」は、僕が初めて出会った「映像詩」なのだと思います。

この作品は、ボンドパッダエの自伝的小説をサタジット・レイ監督が映画化したものです。

舞台は1920年頃のインドのベンガル地方の片田舎、貧困に苦しむ家族の物語てすが、そうした貧しさのなかから、輝くような自然が主人公の少年オプーの澄んだ優しい目で捉えられています。

詩人でもあり教養人でもある父は僧侶階級ですが、今は地主の書記になって、わずかな生活の糧を得ています。

その生活費を稼ぐことには不器用な貧しい下級官吏の父ハリと、先祖が残してくれた果樹園も借金のかたに取られてしまうような苦しい経済の家庭を守る母のもとで、オプー少年は可愛がられて育っています。

父は、せいぜい宗教儀式で僅かな金を稼ぐだけで、そのため母はいつも満たされず、いらいらしている状態です。

「子供に1日2度の食事を与え、年に2枚のサリーがあれば」という母のささやかな望みも叶わないまま、親戚の老婆がころがりこみ生活は更に苦しくなり、諍いが絶えない状態になっています。

そんなある日、「金の入る仕事を見つけた」と父は出稼ぎにいったものの、あてにしていた仕事にありつけずに、5ヶ月も音信不通となってしまいます。

残された家族は食い繋いでいくために物を売って食料を買い飢えをしのぎます。

しかし、こうした貧しい生活のなかでも、オプーと姉のドゥルガは無邪気に草原を駆け回り、屈託なく遊び回っています。

貧しさに息詰まるような大人の世界から遠く離れて、子供たちの澄んだ視線が捉える自然の奇跡のような美しいシーンが、この作品の卓越した伝説のような評価を実感させてくれます。

姉ドゥルガと弟オプーが、すすきの生い茂る野原を歩き通して、遠くまで汽車を見に行くシーン、電柱に耳を押し着け振動音で列車の迫り来る響きを察知し、やがてすすきの穂に写される圧倒的な影の奔流と轟音で目の前を擦過する列車に、驚きと憧れで呆然と見送る姉弟のショットとか、池の蓮の葉に蜻蛉が羽を休め、やがて水面にポツンとひとつ水滴が落ちてつくる小さな波紋が池面を乱し、やがて幕を引くように一瞬に雨が降りかかるシーンには目を見張りました。

激しい雨に姉のドゥルガがずぶぬれになって木陰に立ちつくす不吉なショットが、この不運な家族の困難にみちた行く末を暗示していたのだと思います。

それにしても轟音とともに擦過する列車を、驚きと憧れとともに呆然と見送る姉弟の眼差しの、聖性を帯びたとでも形容したくなる数々のシーンが深く心に刻み込まれました。

このあと姉ドゥルガは風邪をこじらせて肺炎になり、嵐の夜に母に看取られて死んでいきます。

その一夜が明けた不気味な静けさと、出稼ぎに行っていた父親の数カ月ぶりの帰郷、そして母の慟哭。

愛する家族を失った一家は、残った息子オプーを連れて住み慣れたこの村を離れ、都会ベナレスへと旅立つところでこの作品は終わります。

伝説のように人々の記憶に残る素晴らしいラストシーン、主を失った廃屋に蛇が棲みつくあの場面に、永劫を見定めた東洋の、「希望」と同じ意味の「諦念」という、生き変わり死に変わる人生の儚さの意味を感じ取ったのは、きっと僕だけではなかったと思います。

サタジット・レイは、「自転車泥棒」を見たときに、この題材をどう描けばよいかが分かったといわれています。

西欧の手法によって導かれるようにして描かれたこのインドの寒村に生きる貧しい一家の物語、さらにその少年の目を通して輝くような美しい自然を背景に貧しさと夢を描き出したこのつつましいアジアの人間ドラマが、逆に西欧の映画人に強い衝撃を与えたことに感動します。

インド年間最優秀作品賞やカンヌ国際映祭ヒューマンドキュメント賞などを受賞した詩情ゆたかなこの不朽の映像詩をデビュー作として持つ監督サタジット・レイは、1992年に他界しましたが、それよりずっと以前、僕たちがこの作品を見た頃は、確かこの監督は、「サタジット・ライ」と日本では紹介されていたように記憶しています。

黒澤監督がこの作品を見たあと、もう他の映画が見られなくなったと伝えられていると聞いたことがあります。

(55バハラティア・ナーティア・サング)監督脚本サタジット・レイ、原作ビブティブション・ボンドパッタエ、撮影シュブロト・ミットロ、美術バンシ・チャンドラグプタ、音楽ラヴィ・シャンカール
出演シュビル・バナルジー、カヌ・バナルジー、コルナ・バナルジー、チェニバラ・デビィ、ウマ・ダス・グプタ
125分、35mm、白黒、ベンガル語
 
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by sentence2307 | 2007-10-06 21:39 | 映画 | Comments(1)