小津安二郎のスタイル ①
2004年 12月 06日
例えば、昭和26年7月「麦秋」の撮影真っ只中、真夏の大船撮影所第4ステージでたくさんの照明が使われて蒸し風呂状態の中で
「暑いのなんのって、ここは映画を作る所じゃないね。納豆を作る所だよ。」
と言ったという言葉などを見ると、そういう感じを強くします。
まあ、例えばの話しですが、
「暑いのなんのって、オメエ、そんな生易しいもんじゃねえやな。納豆が出来ちまわあ。」
みたいに江戸っ子風に読み替えた方が、なんか小津監督らしく、しっくりくるような気がしてなりません。
実際は、小津監督という人は、もっと紳士で、そんな下品な言い回しはしなかったのでしょうが、深川生まれという先入観が僕の中で次第に肥大して、しかも世俗のことには一定の距離をとり続け超然と生きた「反骨の人」という印象を考え合わせた結果、勝手に「僕だけの小津像」が出来上がってしまったのかもしれません。