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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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小津監督の女性観

渋谷実監督との息の合った数々の絶妙な仕事を残している斎藤良輔は、松竹を代表するメロドラマの達人といわれたドル箱的脚本家でした。

「てんやわんや」50、「自由学校」51、「本日休診」52、「現代人」52、「やっさもっさ」53、「青銅の基督」55、「正義派」57と連なる作品群は、まさに「つるべ打ち」とでもいいたくなるような物凄い勢いで、ちょっと他に例がみつけにくいかもしれません。

それ程までに充実した数年間だったといえるでしょう。

そのピークの直前をまさに迎えようとしている時に、斎藤良輔が小津監督と組んで書いたのが「風の中の牝鶏」48です。

斎藤良輔にとっては、企画倒れに終わってしまった「遥かなり父母の国」や「オン・ツウ・デリー」の挫折を乗り越えて、ようやく実現することができた小津映画だったのですが、「小津安二郎映画讀本」には、小津作品としては失敗作と酷評されたこの「風の中の牝鶏」の製作事情が、聞き役・田中眞澄のインタビューによって詳細に語られています。

しかし、このインタビュー記事が面白いのは、そうした製作裏事情よりも、最後の数行で語られるエピソード・若き斎藤が恋人と別れ話をするためにこれから茅ヶ崎駅に行こうという時に小津監督からアドバイスを受ける部分です。

小津監督は斎藤良輔に言います。

「行っちゃ駄目だ。もう切れるんだから、そんな所に行くな。」

しかし、斎藤は小津監督の反対を押し切って駅に行きます。

だが結局、当の女は来なかった。

帰ってきた斎藤に小津監督は言います。

「ほれ見ろ。それじゃ駄目なんだ。誰も来ないで雨が降っていて、これがラストにならなきゃ駄目なんだ。」

そして斎藤は続けます。

「男の気持ちも女の気持ちも、本当はこれくらいだったというのが、小津さんのラストだとよく出るしね。
別れの駅に、時間になっても誰も来なくて、それで雨が降っている方がいいラストになるんだよ。
そういういい芝居じゃないと(駄目なんだよ)って、小津さん言っていた。
まるで、ホンを作っている時みたいにね。」

ここに描かれている小津監督のエピソードは、この世のあらゆる事象を映画的な虚構の中でしか受け入れることを辞めた小津監督の深い絶望感を表しているとともに、その美しさとともに、女性の本質を冷ややかに見透かしている醒めた眼差しも感じてしまいます。

原節子に初めて逢った時「節っちゃんて、きれいだなあ」と感嘆した部分と、彼女を・そして他の誰をも生涯の伴侶としなかった小津監督の絶望と孤独と嫌悪を、このエピソードは、ほんの僅かながら僕たちに垣間見せてくれているのかもしれませんね。
Commented by Propecia merck at 2011-10-17 05:52 x
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by sentence2307 | 2004-12-11 17:43 | 小津安二郎 | Comments(1)