世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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はたらく一家

ここのところインターネットの無料動画にハマっています。

未見の映画が何本も公開されていることを知り、片っ端から見てやろうと頑張っています。

つい先日も成瀬巳喜男の1938年製作「はたらく一家」を見ました。

この作品は、自分のところにも録画したものがあるのですが、TVの前に座っている時間よりも、パソコンの前にいる方が、はるかに長い最近の生活習慣からいうと、パソコンで映画(「だけ」でないところも凄いことですが)を見られるということの計り知れない利点を痛感しています。

たとえば、映画鑑賞が机の上でできるので、近くの書棚からキネマ旬報社の「日本映画監督全集」をすぐに取り出せたり、「俳優名鑑」やそのほかの資料も傍らに積み上げておいて映画が見られるので、自分の映画鑑賞環境は、このところ激変した感じです。

この「はたらく一家」もそういう環境下で見た1本でした。

さて、この作品の見終わったあと、はたしてこの作品が、本当に成瀬らしい作品といえるのか、それとも、らしからぬ作品なのか、ちょっと思い悩んでしまいました(どのような映画を見たあとも、シンプルな質問を一応設定し、自分に問い掛けてみることにしています)。

というのも、この作品は、プロレタリア作家・徳永直の短編小説を成瀬巳喜男が脚色したということなので、本来なら「貧乏好き」の成瀬巳喜男のことですから、プロレタリア文学とは感覚的にごく近しいはずなのに、まあ、製作年からみて、いまだ「成瀬演出の未成熟」という部分を一応差し引いて考えたとしても、なんだかたどたどしく、後年僕たちが見るような、主人公が縷々煩悶し絶望し失意に向けて下降しながらも、諦念の中にあって微かな光明を見出していくという成瀬演出の核というか、繊細な部分を見い出すことができなかった、いわば「ミスマッチ」というか、違和感がどうしてもぬぐえませんでした。

この違和感は、いったいなんだろうと思い悩んだわけで、手元にあった幾つもの資料をめくり・めくり読んだのですが、そこには、どれもだいたい同じような書き方・見方をしているものばかりでした。

代表的なものをちょっと書き写してみますね(資料といっても、目に付いたものを手当たり次第に複写してアナログ的に編綴しているだけなので整理が行き届かず、出展を明記できない場合も多々あり、これもそのひとつであることをオコトワリしておかねばなりません、乞寛容)。

《貧しい大家族を舞台に、自立するために家を出て苦学して資格をとりたいと願う長男と、その長男に同情し、兄の思いに自分たちの将来の不安をも投影せざるを得ない弟たち・否応なく家族の家計を背負わされた子供たちの反抗を受けて、その苛立ちを心情的には理解しながらも、大家族を抱えて息子たちの収入を当てにしなければならない不甲斐ない父親の、息子の自立をどうしても認めてあげることができない父親の葛藤の物語が、成瀬の温かい眼差し(この指摘は、あきらかに間違っています)によって描写されている。
日常的生態描写の連続のなかで、そこから脱出しようとする長男の焦りと、それを理解しながら叶えてやることのできない父親の苦衷と葛藤が、この映画の主題として浮上している。
成瀬にとっては、かつて体験した現実に近く、後年《たいへん気持ちよく撮れた、好きな作品です。僕の一番よく分かっている貧乏の話ですからね。》と回想しているくらいだが、それだけに、視野が一家の貧困の現実に限られ貧困の環境にまで及んでいない。
「はたらく一家」といいながら、彼らが実際に働いている場面がないのは、彼自身が脚色したことによる客観性の不足だろうか。
したがって貧困の構造も見えず、曖昧で無意味な結末に終わってしまったのは当然であった(原作でも未解決のままだが)。
とはいえ、これは安定した技術をもとに久々の成瀬らしい作品となった。》

ここに書かれた批評の要諦は「視野が一家の貧困の現実に限られ貧困の環境にまで及んでいない」の一文に集約されます。

しかし、これは、なんの見識もない左翼批評家が、プロレタリア文学の立場と称し、多くのすぐれた芸術作品を批判する(実は「批判」でもなんでもなく、オトシメルというのが実態でした)ときの常套句みたいにして乱用されたものと同質のものにすぎず、カレらは、この無思考で愚劣なフレーズを駆使することによって、多くの芸術家たちの若い芽を摘み取ってしまったことを改めて想起する必要があります。

つまり、この成瀬作品が、一家の貧困の描写ばかりにとらわれ、「貧困の環境」を一向に描いていないと批判しているわけですが、その「貧困の環境」とかいうのは、いったいなんなんだということでしょう、逆に、そんなものを描いてどうするのだという気がします。

あらゆる芸術が、大衆を教育することや、啓蒙するためだけに「有効な手段」でなければならないという定型の観念に成瀬作品を無理やり取り込もうとした愚かな一文というしかなく、この成瀬作品の要点をはずした、まったくの見当違いの評文というしかありません。

極貧のなかの一家の困窮を救うために、息子は、もっといい給料を得ることのできる資格を取ることを思い立ちます。

そのためには、自分に勉強する時間を与えてほしい、たとえいまは苦しくとも、この時期を耐えれば、いつの日か近い将来にきっと希望が持てる時がくる、と家族を説得します。

家族を現在の苦境から救い出し、将来の展望を断たれたような自己犠牲ではない、自分の将来につながる家族再生のための計画なのに、いま息子たちの給料を当てにしている目先のことしか見えない親には、どうしてもそれが届きません。

ここには、苦しすぎる「いま」を乗り越えられない「貧困」の苛烈さ残酷さが描写されているのですが、しかし、この成瀬作品は、ただそれだけを描こうとしているわけではないと感じました。

夢を断たれ、仕方なく家族のために再び将来の見えない「労働」に戻ることを決意した長男・希一の思いの中には、不思議に「悲壮感」というものは感じられません。

そこには、静かな諦念のなかで、延々と続けられる日常に立ち戻っていく庶民の揺るぎないリアリズムが、しっかりと捉えられているからかもしれません。

この作品「はたらく一家」が撮られた1939年は、苛烈を極めた戦時下にあって、その実力を発揮できずに低迷を余儀なくされたことが「日本映画監督全集」を読んでいると実感できます。

それなりにキャリアのある日本映画界の巨匠たちが、若い世代の監督たちのように軍部の求めに呼応し、変わり身早く時局に迎合して器用な戦意高揚映画を撮るなど、そうやすやすとできるはずもなかったことを考えれば、その「低迷」も当然の結果だったかもしれません。

時代に対して超然と距離を保った小津安二郎にしろ、どうにか自分なりに「時代」を消化しようとして七転八倒した溝口健二などに比べると、成瀬巳喜男の「時代」への対し方は、いかにも成瀬らしい、消極的で女々しい印象(もちろん、テコでも動かない頑固な芯の強さを隠して、ですが)を受けます。

だからといって、その軍部の圧力の反発から、素直に「ブロレタリア文学」的な思潮に同調できたかということの答えが、クシクモこの「はたらく一家」に描かれているのだと思います。

(1939東宝東京撮影所)製作・武山政信、原作・徳永直、監督脚色・成瀬巳喜男、製作主任・大岩弘明、演奏・P.C.L.管弦楽団、装置・撮影・鈴木博、美術・松山崇、音楽・太田忠、録音・下永尚、編集・岩下広一、照明・岸田九一郎、
出演・徳川夢声(職工・石村)、本間教子(女房・ツエ)、生方明(長男・希一)、伊東薫(次男・源二)、南青吉(三男・昇)、平田武(四男・栄作)、阪東精一郎(五男・幸吉)、若葉喜世子(長女・ヒデ)、大日向傳(小川先生)、椿澄江(喫茶店の娘・光子)、真木順(工場の組長)、藤輪欣司(職工)、
65分、35mm、1787m(8巻)白黒スタンダードサイズ 3月11日・日本劇場 1939.03.11 
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Commented by longchampoutlet at 2013-06-25 01:49 x
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Commented by 威哥王 at 2013-09-10 16:30 x
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by sentence2307 | 2012-12-02 11:30 | 成瀬巳喜男 | Comments(3)