「2013 フランス映画祭」の傾向と対策 ①
2013年 06月 09日
しかし、プログラムから見たい作品を選び出し、どんな映画かと想像しながら、印をつけていくという楽しみはありますので、「2013 フランス映画祭」でもそのデンで作品の情報だけでも筆者してみました。これだけでもじっくり読み込んで、想像をめぐらして愉しむことにしようと思います。
【Dans la maison (英題)In the House】
個人授業は、いつしか息詰まる心理戦に変わる。フランソワ・オゾン監督史上、最高傑作、ついに日本解禁。
かつて作家を志していたジェルマンは、今は高校で国語の教師をしていた。凡庸な生徒たちの作文の採点に辟易していたとき、才気あふれるクロードの文章に心をつかまれる。それは、あるクラスメイトとその家族を皮肉な視点で綴ったものだが、羨望とも嫉妬ともつかない感情に満ちた文章に、ジェルマンは危険を感じ取りながらも文章の才能に魅せられ、クロードに小説の書き方を手ほどきしていく。やがて才能を開花させたクロードの書く文章は、次第にエスカレートして行く。若き作家と教師の個人授業は、いつしか息詰まる心理戦に変わっていく。
第60回サン・セバスチャン国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀脚本賞をダブル受賞、第37回トロント国際映画祭では国際映画批評家連盟賞を受賞するなど、ますます国際的に評価が高まっているフランソワ・オゾンのスリリングな最新作。フランスを代表する名優ファブリス・ルキーニと、これが本格的なデビューながら一歩も引かないエルンスト・ウンハウワーとの手に汗握る駆け引きに、一瞬たりとも目が離せない。
監督・フランソワ・オゾン、出演・ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、ドゥニ・メノーシェ、エルンスト・ウンハウワー、バスティアン・ウゲット
2012年/フランス/105分/ビスタ/5.1ch 配給:キノフィルムズ
<受賞歴>2012年 サン・セバスチャン国際映画祭 最優秀作品賞&最優秀脚本賞、2012年 トロント国際映画祭 国際映画批評家連盟賞
★監督:フランソワ・オゾン Francois OZON
1967年フランス・パリ生まれ。1990年、国立の映画学校フェミスの監督コースに入学、次々に短編作品を発表し、『サマードレス』(96)でロカルノ国際映画祭短編セクショングランプリを受賞。1999年の『クリミナル・ラヴァーズ』がベネチア国際映画祭に正式出品され、続く『焼け石に水』(00)で、ベルリン国際映画祭 テディ2000賞を受賞。
2001年『まぼろし』がセザール賞の作品賞と監督賞にノミネートされ国際的にも高い注目を集め、翌年『8人の女たち』で、ベルリン映画祭銀熊賞を受賞。その後『スイミング・プール』(03)、『エンジェル』(07)、『しあわせの雨傘』(10)など多種多様な作品を発表し続けている。
★出演:ファブリス・ルキーニ Fabrice LUCHINI
1951年フランス・パリ生まれ。イタリア移民の一家に生まれる。美容室に勤める一方、文学や音楽に親しみ、1969年に『Tout peut arriver』で映画デビュー。続いてエリック・ロメール監督の『クレールの膝』(70)に出演。以後、同監督の常連俳優として、『聖杯伝説』(78)、『飛行士の妻』(80)、『満月の夜』(84)などに出演している。1991年には、クリスチャン・ヴァンサン監督の『恋愛小説ができるまで』(90)で、セザール賞主演男優賞にノミネート、そして1994年には、クロード・ルルーシュ監督の『Tout ça... pour ça !』で、同賞の助演男優賞に輝いた。その他の主な出演作品には『百貨店大百科』(92)、『親密すぎるうちあけ話』(04)、『PARIS(パリ)』(08)、『屋根裏部屋のマリアたち』(10)などがある。オゾン作品は『しあわせの雨傘』(10)に続き、2度目の出演となる。
★出演:エルンスト・ウンハウワー Ernst UMHAUER
1989年フランス・シェルブール生まれ。2011年、短編映画"Le Cri"で初めての役を得る。続いてドミニク・モル監督の『マンク~破戒僧~』(11)でヴァンサン・カッセルと共演。本作でフランソワ・オゾン監督にクロード役に抜擢され、リュミエール賞の新人男優賞を受賞し、セザール賞にもノミネートされる。今後の活躍が期待される若手俳優の一人である。
★出演:クリスティン・スコット・トーマス Kristin SCOTT THOMAS
1960年イギリス・コーンウォール生まれ。19歳で、演技を学ぶためにパリに移住。1986年、プリンスが監督を務めた『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』で映画デビュー。大ヒット作『フォー・ウェディング』(94)の演技で絶賛され、英国アカデミー賞助演女優賞を受賞。さらにアンソニー・ミンゲラ監督の『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、演技力への評価を確実なものとする。その後、『ずっとあなたを愛してる』(08)に主演し、ヨーロッパ映画賞最優秀賞女優賞他、数々の賞を受賞。また2003年には大英帝国勲章を、2005年にレジオン・ドヌール勲章を受けている。最近の主な出演作には、『ブーリン家の姉妹』(08)、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(09)、『サラの鍵』(10)、『砂漠でサーモン・フィッシング』(11)、『ベラミ 愛を弄ぶ男』(12)、待機中の作品に、レイフ・ファインズがメガホンをとる『The Invisible Woman』(13)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作、ライアン・ゴズリングと共演する『Only God Forgives』(13)などがある。
★出演:エマニュエル・セニエ Emmanuelle SEIGNER
1966年フランス・パリ生まれ。祖父は俳優のルイス・セニエ、父は写真家で母はジャーナリスト。14歳からモデルとして活躍。ヨーロッパの有名誌の表紙を飾り、シャネルのCMにも抜擢された。1985年にジャン=リュック・ゴダール監督の『ゴダールの探偵』で映画デビュー。その後ロマン・ポランスキー監督の『フランティック』(88)でハリソン・フォードを惑わす謎の美女を好演。翌年ポランスキーと結婚。以降『赤い航路』(92)や『ナインズ・ゲート』(99)とポランスキー監督作に出演し、妖艶な美貌を醸し出している。その他の作品として、オリヴィエ・ダアン監督『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』(07)、ジュリアン・シュナーベル監督『潜水服は蝶の夢を見る』(07)、イエジー・スコリモフスキ監督『エッセンシャル・キリング』(10)などがある。
【わたしはロランスLaurence Anyways】
彼は、女になりたかった。彼は、彼女を愛したかった。弱冠23歳のグザヴィエ・ドラン監督が描く"スペシャル"な、愛の物語。
モントリオール在住の国語教師ロランスは、恋人のフレッドに「女になりたい」と打ち明ける。それを聞いたフレッドは、ロランスを激しく非難するも、彼の最大の理解者であろうと決意する。あらゆる反対を押し切り、自分たちの迷いさえもふり切って、周囲の偏見や社会の拒否反応に果敢に挑む長い年月。その先に待ち受けるものは? 弱冠23歳にしてカンヌ国際映画祭に3作品を出品し話題となったグザヴィエ・ドラン監督による、10年に渡る美しく切ない愛を描いたラブ・ストーリー。ロランス役をメルヴィル・プポー、ロランスの母をナタリー・バイが演じる。フレッド役のスザンヌ・クレマンは、2012年カンヌ国際映画祭ある視点部門で最優秀女優賞を受賞した。
監督・グザヴィエ・ドラン、出演・メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
2012年/カナダ=フランス/168分/スタンダード/5.1ch 配給:アップリンク
<受賞歴>2012年 カンヌ国際映画祭 ある視点部門正式出品作品 最優秀女優賞受賞、2012年 トロント国際映画祭 最優秀カナダ映画賞受賞
★監督:グザヴィエ・ドラン Xavier DOLAN
1989年カナダ生まれ。6才で子役としてデビュー。2008年に処女作『マイ・マザー/青春の傷口』を制作。カンヌ映画祭監督週間部門出品、セザール賞外国映画部門ノミネートなど、高く評価を得た。その後、監督、脚本のみならず、プロデューサー、出演、編集、その他、衣装と美術の監修も務めた第二作『空想の恋』(09)はカンヌ映画祭「ある視点」部門に出品され、"非常にエキサイティングな新世代の一人"と紹介された。本作『わたしはロランス』では、再びカンヌの「ある視点」部門で上映され、その気鋭ぶりが話題を集めている。
★出演:メルヴィル・プポー Melvil POUPAUD
1972年フランス生まれ。母親がキャスティング・ディレクターだったことから、子役としてラウル・ルイス監督作品に度々出演。その後学業に専念するが15歳の時ジャック・ドワイヨン監督作『15歳の少女』にて再デビュー。セザール賞の有望若手男優賞にノミネートされる。以後、主な出演作に『愛人(ラマン)』(92)、『おせっかいな天使』(93)、『いちばん美しい年齢』(94)、『エリザ』(95)、『夏物語』(96)、『ぼくを葬る』(05)、『ブロークン・イングリッシュ』(07)などがある
★出演:スザンヌ・クレマン Suzanne CLÉMENT
1969年カナダ生まれ。
主な出演作に、TVシリーズ「Watatatow」、「Sous le signe du lion」、「Jean Duceppe」、「Cover Girl」、 「Les hauts et les bas de Sophie Paquin」、「Unité 9」、 映画作品に「The Confessional」(94)、「L'Audition」(05)、「C'est pas moi, je le jure!」(08)、「Tromper le silence」(10) などがある。グザヴィエ・ドラン監督作品への出演は『マイ・マザー/青春の傷口』(94)に続き二回目。本作ではカンヌ映画祭ある視点部門主演女優賞を受賞した。
★出演:ナタリー・バイ Nathalie BAYE
1948年フランス生まれ。代表作に、フランソワ・トリュフォー監督『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)、『緑色の部屋』(78)、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手に逃げろ/人生』(79)、『ゴダールの探偵』(85)など。近年の出演作に、クロード・シャブロル監督『悪の華』(03)、ギョーム・カネ監督『唇を閉ざせ』(06)などがある。受賞歴は 1980 年『勝手に逃げろ/人生』でセザール賞助演女優賞、1982 年『愛しきは、女/ラ・バランス』ではセザール賞主演女優賞、1999 年『ポルノグラフィックな関係』でヴェネチア国際映画祭女優賞を獲得。
【Populaire (原題)Populaire】
"ローズの夢は、パリ、ニューヨーク、そして世界をつかむことー。"50年代フランスを舞台に、タイプライター世界大会に全てをかけるヒロインを描く、カラフルなサクセス・エンターテインメント!
世界がドラマティックに変化した、1950年代末。女性たちは自由を求めて社会へ飛び出し、夢に向かって羽ばたいた。スターになれる道は色々あったが、今では想像もつかないのが、〈タイプライター早打ち大会〉。オリンピックさながらの各国代表による激戦を勝ち抜いた女王は、国民のアイドルだった。そんな時代のフランスを舞台に、早打ち以外は何ひとつ取り柄のない女の子が、世界大会を目指す姿を描くサクセス・ストーリーが完成した。敏腕コーチが伝授する、メンタルを鍛え、駆け引きに強くなるコツは、ハードな今を生き抜く私たちにも役立つアイディアでいっぱい。さらに『アパートの鍵貸します』『シェルブールの雨傘』など、当時の傑作へのオマージュに溢れ、フランスのマスコミも大絶賛、本年度セザール賞5部門にノミネートされた。ロマンティックな女の子の夢と、興奮と感動のスポ根が不思議にマリアージュ、50年代カルチャー満載のポップなエンターテインメントが誕生した!
監督・レジス・ロワンサル、出演・ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ、ベレニス・ベジョ
2012年/フランス/111分/シネマスコープ/5.1ch 配給:ギャガ
<受賞歴>2013年 セザール賞 5部門ノミネート
★監督・脚本:レジス・ロワンサル Régis ROINSARD
映画制作を学んだ後、スタッフとして制作現場全体を経験するために、撮影アシスタントやセット、音響などを務める。1998年、短編「Madame Dron」で監督デビュー。続いて短編「Simon」(01)、ジェーン・バーキン、マリアンヌ・フェイスフルらが出演するドキュメンタリービデオ「Rendez-vous avec Jane」(05)、短編「Belle, enfin possible」(05)を監督する。劇映画は全作、脚本も担当している。その他、フランスのシンガー、ジャン・ルイ・ミュラのPVも手掛ける。長編映画監督デビュー作となる本作で、セザール賞 作品賞にノミネートされ、今国内外で最も注目されている監督の一人である。
★出演:デボラ・フランソワ Déborah FRANÇOIS
1987年、ベルギー、リエージュ生まれ。2005年、ダルデンヌ兄弟監督の『ある子供』でデビュー。この作品はカンヌ国際映画祭パルムドールに輝き、フランソワもセザール賞有望若手女優賞にノミネートされ、たちまち注目される。その後、『譜めくりの女』(06)でも同賞にノミネートされ、「Le premier jour du reste de ta vie」(08)で同賞受賞を果たす。2010年には、フランス人女性監督が阪神・淡路大震災の被災者のその後を描いた『メモリーズ・コーナー』に出演し、西島秀俊、阿部寛と共演する。その他、ソフィー・マルソー主演の『レディ・エージェント 第三帝国を滅ぼした女たち』(08)、『21番目のベッド』(09)、ヴァンサン・カッセル共演の『マンク ~破壊僧~』(11)などに出演、今最も期待されている若手女優の一人。
【ウェリントン将軍~ナポレオンを倒した男~(仮) Linhas de Wellington】
世界の巨匠ラウル・ルイス監督最後のプロジェクト。超豪華キャストで贈る美しき"戦争絵巻"。
1810年、ナポレオン皇帝はマッセナ元帥にポルトガル征服を命じる。フランス軍は難なくポルトガルへの進攻に成功したが、それはウェリントン将軍の罠だった。本作はウェリントン将軍率いる、イギリス・ポルトガル連合軍が、ナポレオンを破るまでの戦いの中で巻き起こる、数々のドラマを詩情豊かに描く壮大なる大河ロマンである。本作は一昨年この世を去った、名匠ラウル・ルイスの最後のプロジェクト。シューティング前に亡くなったため、生涯のパートナー、バレリア・サルミエントがメガフォンをとり、ジョン・マルコヴィッチ、マチュー・アマルリックほか、特別出演としてカトリーヌ・ドヌーヴ、ミシェル・ピコリ、イザベル・ユペール、キアラ・マストロヤンニ、メルヴィル・プポー等、豪華キャストの出演が話題を呼んだ。新たなる出会い、切ない別れ、大切な人との死別、そして育まれる愛― さまざまな人間ドラマが、混乱の時代の中で繰り広げられる、美しき"戦争絵巻"。 監督・バレリア・サルミエント、出演・ジョン・マルコヴィッチ、マチュー・アマルリック、カトリーヌ・ドヌーヴ、ミシェル・ピコリ、イザベル・ユペール、キアラ・マストロヤンニ、メルヴィル・プポー
2012年/フランス=ポルトガル/152分/16:9/ステレオ 配給:アルシネテラン
<受賞歴>2012年 ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門 正式出品作品
★監督:バレリア・サルミエント Valeria SARMIENTO
1948年チリ、バルパライソ生まれ。チリ大学で哲学と映画製作を学ぶ。1969年にバルパライソ・カトリック教大学芸術院の映画学科教授となったラウル・ルイスと出会い、結婚。以後、「Que hance!」(70)などでルイスの助監督を務め、「Los minuteros」(72)といった短篇をルイスと共同監督し、編集も担当。1972年には短篇「Un sueño como de colores」を単独で監督。73年にはルイスと「La expropiación」の追加撮影をパリで行った後、パリに亡命。その後はルイス監督作「Dialogo de Exilados」(74)の編集を担当すると共に、夫以外の作品でも編集を担当。79年にはベルギーで「Gens de nulle part, gens de toutes parts」を監督。以後、ドキュメンタリー作家として活動すると共に、ルイス共同脚本「Notre mariage」(84)で劇映画の監督としてもデビュー。以後『アメリア・ロペス・オニール』(91)、「Elle」(95)、「ストラスブールの見知らぬ人」(98/CS放映)、「Rosa la China」(02)、「Secretos」(08)といった劇映画を、夫の作品の編集を担当しながらも監督。そして「Linhas de Wellington」(12)を完成させた。
★出演:ジョン・マルコヴィッチ John MALKOVICH
1953年、アメリカ・イリノイ州生まれ。1976年にゲイリー・シニーズと設立したステッペンウルフ・シアター・カンパニーで数々の舞台に出演、ブロードウェイでも活躍。デビュー作『プレイス・イン・ザ・ハート』(84)でアカデミー賞助演男優賞ノミネート。個性的な演技派として『シェルタリング・スカイ』(90)、『二十日鼠と人間』(92)、『ザ・シークレット・サービス』(93)や、自身が題材になった『マルコヴィッチの穴』(99)にも出演。『ゴーストワールド』(01)、『JUNO/ジュノ』(07)を送り出すなど、プロデューサーとしても活躍。
★出演:マチュー・アマルリック Mathieu AMALRIC
1965年、フランス生まれ。「Les Favoris de la lune」(84)でデビュー。『そして僕は恋をする』(96)で、セザール賞有望若手男優賞を受賞。『キングス&クイーン』(04)と『潜水服は蝶の夢を見る』(07)で、セザール賞主演男優賞を受賞。近年はアメリカ映画にも出演し、スピルバーグの『ミュンヘン』(05)の情報屋ルイや、『007 慰めの報酬』(08)の悪役ドミニク・グリーンを演じた。監督としては『Mange ta soupe』(97)でデビューし、『さすらいの女神たち』(10)で、カンヌ国際映画祭コンペティション部門にエントリーされ、監督賞を受賞した。
★出演:メルヴィル・プポー Melvil POUPAUD
1972年、フランス・パリ生まれ。9歳の時にラウル・ルイスの『海賊の町』(83)でデビューし、『15才の少女』(88)で一躍脚光を浴び、『愛人/ラマン』(91)、『おせっかいな天使』(93)などに出演。『ファドの調べ』(94)でルイス作品に再び主演し、以降『ミステリーズ 運命のリスボン』(10)ほか計12本のルイス作品に出演。その他『いちばん美しい年令』(95)、『夏物語』(96)、『ぼくを葬る』(05)『イノセント・ライズ』(94)、『ル・ディヴォース』(03)、『ブロークン・イングリッシュ』(07)など多数出演し、現代フランス映画に欠かせない存在となる。
【母の身終い Quelques heures de printemps】
不治の病に自分の最後の日を決めようとする母親と出所したばかりの一人息子。永遠の別れに直面した母と息子の絆を静かな眼差しで描いた感動ドラマ。
48歳のアランは、長距離トラックのドライバーだったが、麻薬の密輸に加担したため服役し、出所したばかりだ。彼は母親が一人暮らす実家で人生のやり直しをしようとしている。だが几帳面な母親とは昔から折り合いの悪いアランは、なかなか希望しているような仕事につけない焦燥感もあり、事あるごとに母親とぶつかり合う。ボウリング場で知り合い一夜を過ごした女性ともちゃんとした恋愛関係を深める事ができない。しかし、ある時アランは、母親の脳腫瘍が進行しており、母親がスイスの会社と契約を交わし尊厳死を実行しようとしていることを知る・・・。そしていよいよ母親がスイスに出発する朝が来た。アランは母親の選択にどう対処するのか。息子役に個性派俳優ヴァンサン・ランドン、母親役に『人生は長く静かな河』でセザール賞助演女優賞を受賞したエレーヌ・ヴァンサン。共演に『潜水服は蝶の夢を見る』のエマニュエル・セニエ。監督に『愛されるために、ここにいる』のステファヌ・ブリゼ。お互いにきちんと向き合ったことがない、愛情表現に不器用な母と息子の絆を描いた感動ドラマ。
監督・ステファヌ・ブリゼ、出演・ヴァンサン・ランドン、エレーヌ・ヴァンサン、エマニュエル・セニエ
2012年/フランス/108分/ビスタ/ドルビーデジタル 配給:ドマ/ミモザフィルムズ
<受賞歴>2013年 セザール賞 4部門(主演男優賞・主演女優賞・監督賞・脚本賞)ノミネート
★監督・脚本:ステファヌ・ブリゼ Stéphane BRIZÉ
1966年フランス、レンヌ出身。工科大学で電子工学のディプロマ(DUT)を取得。1993年「Bleu dommage」で短篇映画の監督と脚本デビューで主演もする。これが94年のコニャック映画祭短篇グランプリを獲得。95年には役者として『パリのレストラン』と同作の撮影監督リュック・パジェスの短篇「Ada sait pas dire non」に出演。96年の短篇監督、脚本第二作目「L'oeil qui traine」で同年のヴァンドーム映画祭グランプリを受賞、翌年のレンヌ、マメール、アレスの短篇映画祭などでも賞を獲得。「L'oeil qui traine」の評価から99年長篇映画「Le bleu des villes」を監督、脚本。同年のカンヌ映画祭「監督週間」部門に選出され注目を浴びる。ドーヴィル映画祭ではミシェル・ドルラノ賞(脚本賞)を受賞。その後、中篇ドキュメント「Le bel instant」(03)、「Une vie de rêves」(05)を撮る。2005年の『愛するために、ここにいる』で、孤独に生きる初老の男が、タンゴのレッスンで知り合った女性との交流を通して輝きを取り戻すまでを繊細に紡ぎ上げ、セザール賞で3部門(主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞)にノミネートされる。
<フィルモグラフィー>
1999:Le bleu des villes (監督、脚本)
2005:愛されるために、ここにいる (監督、脚本)
2006:Entre adultes(監督、脚本)
2009:Mademoiselle Chambom(監督、脚本) セザール賞 脚色賞受賞/インディペンデント・スピリット賞 外国映画賞ノミネート 2012:Quelques heures de printemps セザール賞監督賞、脚本賞ノミネート
★出演:ヴァンサン・ランドン Vincent LINDON
1959年フランス、オー・ド・セーヌ出身。裕福な家庭で育つ。アラン・レネの『アメリカの伯父さん』(80)に衣装のアシスタントとして参加。その後渡米。フランスに戻ってからル・マタン紙の記者として働きながら俳優を志すようになる。1983年「Le Faucon」で映画デビュー。セザール賞の主演男優賞に『女と男の危機』(92)、「Ma petite entreprise」(99)、「Ceux qui restent」(07)の演技で三度ノミネートされた。98年に俳優サンドリーヌ・キベルランと結婚し一女をもうけた。
<主なフィルモグラフィー>
1986:ハーフムーン・ストリート Half Moon Street
1988:僕と一緒に幾日か
1990:ガスパール/君と過ごした季節(とき)
1990:セ・ラ・ヴィ
1992:女と男の危機
1998:パパラッチ
1998:肉体の学校
2001:女はみんな生きている
2005:チャーリーとパパの飛行機
2008:すべて彼女のために
2009:君を想って海をゆく
★出演:エレーヌ・ヴァンサン Hélène VINCENT
1943年フランス、パリ出身。舞台女優、また舞台監督としてのキャリアが長い。
<主なフィルモグラフィー>
1988:人生は長く静かな河、セザール賞助演女優賞受賞
1988:夫たち、妻たち、恋人たち
1993:トリコロール/青の愛
1996:ベルニー
1997:ぼくのバラ色の人生