世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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リュウグウノツカイ

昨日だったか、それとも日曜日にリアルタイムで配信を見たのか、すっかり忘れてしまいましたが、ネットでニュースをチェックしていたら、CNNのニュースでこんな見出しに遭遇しました。

《看護師16人が同時に妊娠、全くの偶然 米病院》
8/19(日) 15:32配信 CNN.co.jp

というのです。

な、なにっ、「集団妊娠」!?

これまでカルト教団の集団自殺というのは聞いたことがありますが、「集団妊娠」とは、これはまた凄いじゃないですか。

まあ「集団自殺」といっても、アメリカ・カルト教団の場合は、「せ~の!!」で全員同時に逝ってしまう小学校の運動会を連想させる一斉感というか一体感に富んでいます、どこかコミカルで幸福感に満ちた「救い」をイメージさせる「仲良し自殺」みたいな印象ですが、最近の日本の集団自殺事件(こそこそした実に寒々しい自殺形態です)ときたら、その孤独で陰惨なことったらないですよね、これに比べたらアメリカ・カルト教団の集団自殺など、あまりにも楽観的過ぎて、日本から見たら子供の遊びとしか思えません。

あっ、それでもむかし日本にも「死のう団」というのがあって、「せ~の!!」で切腹を試みて「あ痛たたた!」みたいな写真を見たことがありました。規制と弾圧が激しかった当時の戦前の日本では、当然批判的な団体は作れなかったので、「右のさらに右」みたいな逆説的極右宗教団体のかたちをとって政治批判をしなければならなかったために、そういう生まれ方をしたのだと思います。現政治体制への不満を抗議するために自殺するその手段というのが、カッコイイ憤死=「切腹」だったわけですが、頭で考えていた切腹と、実際に腹を切ってみた「あ痛たたた!」のギャップが、笑ってはいけないと思いながらも、思わず失笑してしまいました。

なにごとにつけても真面目過ぎて逃げ場を断ち破滅にむかうしかない「殉死精神」みたいなものが、現代まで脈々と続いていて、日本の集団自殺というのは、とてもシビアで凄惨です。

最近報道された事例でいうと、自殺願望のある人をサイトで募集して一緒に自殺しちゃうなんてのはごくフツーで(自殺なんか一人でやれ、道連れなんか募集するな、趣味のサークルじゃあるまいし)、手を貸して逝かせるとか(西部邁事件などもふくめて、これなどは救命活動としてのボランティアというものの対極に位置する「殺人」か、その疑似の行為が、もしかしたら究極のボランティアなのではないかと錯覚しかねないものがあります。あ~、こわい、こわい。

しかし、かの「高瀬舟」はあくまでも例外中の例外に過ぎず、こういう行為を緩く容認してしまうと「殺人罪」に混乱をきたすおそれがあります、何人も自殺させておいて、ちゃっかりキャッシュカードだけをねこばばして生活費の足しにするなんていう、貧しさの極みで歪み切ったニートの妄想を具現化させてしまう異常性を社会に露呈して衝撃を与えた、なんともやりきれない事件もありました。

目の付け所がクールすぎるというか、せこい詐欺師が善良な自殺願望者を装って、「一緒に死のう」なんてエサ言葉で人集めをして(募集に応じてノコノコ出かけて行った側の無知蒙昧、「死」を媒介にしてお友だちを探そうという、なんとも絶望的な咎はありますが)、手を貸して死なせ(あるいは、躊躇で決断できなければきっと積極的に殺したに違いありません)金品を奪うという、この話のどこに救いがあるのかと暗然とした気持ちになりました。まさに死を弄ぶという言葉がぴったりの慄然とする行為です。もしドストエフスキーでも生きていたら、深刻なこのネタで物凄い小説を書いてしまうに違いありません、作家らしい作家が死に果てた現代日本では、もはやその心配はありませんが。いやいや、君、わが国にはノーベル賞を受賞した大江健三郎がいるじゃないか。それは承知していますが、その存命の事実を含めたうえで、あえて「もはや現代日本には、まともな作家は死に絶えた」と言わせていただこうと思った次第です。

貧しさに異常に歪められながらも、功利にかけてはすこぶる冷静、小悪党特有のずる賢いまでに客観的、見事な打算能力に長けていて、死体の処理も手慣れたもの、そういうヤカラがその辺を徘徊し、気持ちが弱くなっている人間とみれば、すかさず近寄り、弱さに付け込んだ理解者ヅラして甘い言葉で親切気に「一緒に死のう」とささやきかけ、目はぎらぎらと懐の財布だけを狙っているという、これじゃあウカウカ安心して自殺もできやしない世知辛い世の中になったものだなと思います。

あっ、そうそう、「集団妊娠」の話でしたよね、うっかり忘れてしまいました、「集団自殺」という魅惑的な言葉の響きに惹かれてしまい(連想させるシチュエーションは、物語的にも無限の発展性があって、とてもダークで魅力的です)、ついながながと寄り道をしてしまいました。

でも、この見出し

《看護師16人が同時に妊娠、全くの偶然 米病院》

を見せられたら、思わず、「なになに」と身を乗り出して、いったいどういうわけなのだと記事を熟読しないわけにはいきません。

「見出しだけ」飛ばし読み人間だったはずの自分の足を思わず止めさせ、記事を熟読させるのには十分のインパクトがあって、怠惰な読者の目を覚まさせ、強引に読ませてしまうという、最近ではあまり経験したことのない挑発的で実に力のある見出しです。

さて、記事の内容というのは、だいたいこんな感じです。

(CNN) 米アリゾナ州の病院の集中治療室で働く女性看護師16人が同時期に妊娠を一斉に報告する珍事がこのほどあった。数人は不妊治療を受けていたが、妊娠が相次いで重なったことは全くの偶然としている。
16人が働いている病院は同州メサの「バンナー・デザート・メディカル・センター」で、それぞれ3つの集中治療班に配属されている。妊娠続発を受け病院は数カ月にわたって続くとみられる看護師不足への対応策を検討しているという。
集中治療室に勤務する看護師の総数は伝えられていない。
16人は妊娠中の食事の好みを満たすため全員で食堂へ出掛け、サラダバーを妊婦向けに改善させることなども申し出ている。ピクルスとオリーブを要望したら翌日に用意されていたこともあったという。
また、集中治療室の患者はお腹が大きくなり始めた看護師に気付き始めているという。
16人の出産予定時期は今年9月から来年2月にかけてで、いずれも12週間の産休休暇を取得する見通し。病院は妊娠を祝い、「気を楽にして。私のママはバンナーの看護師!」とのメッセージが記されたベビー服「ワンジー」を全員に贈呈した。

まあ、以上を要約すると、
 1 女性看護師16人が同じ時期に妊娠して、相次いで産休をとる予定
 2 この事態は、まったくの偶然である
 3 妊娠続発を受け病院は数カ月にわたって続くとみられる産休による看護師不足への対応策を検討している
 4 病院は、妊娠を祝ってベビー服を贈呈した

ほかに2本の類似記事がありましたが、上記の記事と異なる部分は、

《病院側はまた、産休に入るまで放射線治療には従事させないなど妊婦の体調管理に配慮するとともに、系列の病院と融通し合って看護師の不足を補い、ICUの態勢を維持することにしている。
医療現場における看護師の不足は日本と同様にアメリカも深刻になっている。
アメリカでは多くのメディアが、16人の妊娠が偶然重なったことを驚きをもって伝えるとともに、病院が温かく祝福していることも好意的に取り上げるなど話題になっている。》

という部分だけでした。

こう要約すると、この記事の中でわざわざ「まったくの偶然である」が2度出てきます。

とつぜん「16人同時妊娠」という記事を突き付けられて、当然抱くであろう読者の「なにか理由でもあるのか」という(自分のようにカルト教団の「集団自殺」の連想からなにかブードゥー教みたいなものの秘祭や祭儀の結果による妊娠なのかとか)そそっかしい憶測や妄想をあらかじめ叩くために、あえて2度念押しして「偶然」と書いたものと考えられますが、しかし、そう書かれても、この「16人同時妊娠」という異常事態に対して納得できる明確な理由は、幾度読んでも文中から探し当てることはできません。

だって、「カトリック神父300人が性的虐待 被害者は数千人か」なんて記事があったのは、つい数日前のことですし、映画にも「スポットライト 世紀のスクープ」というのがあったくらいですから、「神父さんたちが聖なる腰をつかって頑張ってくれた結果かもしれません」くらいのジョークでもあれば、あるいは安心してやり過ごせたかもしれません。自分なども、職場の休み時間などで、芸能人の「懐妊」のニュースが話題にのぼるたびに、必ず「おれじゃない」と付け加えたり、飲み会の最中に中座する若手がいると、「今日は予定日か」とひとこと温かい言葉をかけて場を和ませることに努めています。

しかし、この「16人同時妊娠」記事を読んで、まず連想したのは、実は、カルト教団の「集団自殺」ではありません、数年前に自分は、「リュウグウノツカイ」という映画(詳細なデータは末尾に掲載)を見たことがあって、たしかあの映画のテーマも集団妊娠(しかも、こちらはみなピチピチの女子高生)でした、自分たちが子供をたくさん産んで衰退した地元を活性化させる(映画の中では、確か自分たちの国を作るといってました)のだと、だれかれ構わず大人を捕まえてはsexするというストーリーでした。

ただし、あっち系の映画ではありません、ごく真面目な作品です。そのあまりにも突飛な発想に鮮烈な印象があってよく覚えていました。

主役は武田梨奈、やはり「ハイキック・ガール!」の印象が強烈ですが、「祖谷物語 おくのひと」という刮目する出演作もあり、以来、注目している女優さんです。いい役がくれば、きっと大化けするに違いありません。

この「リュウグウノツカイ」を見たあとで、実はこの話に元ネタのあることを知りました。

なんと「リュウグウノツカイ」のなかでホームレスの男とsexする場面がありましたが、そもそもアメリカの「実話」のなかにそのエピソードがありました。

ネット検索の結果を要約しました、以下の通りです。



アメリカで起きた17人の女子高生による集団妊娠事件

明るみに出たのは、マサチューセッツ州グロスリー高校でのこと。
この漁村に住む女子高生17人が妊娠したという。
背景には、この漁師町が不況に襲われて家庭崩壊が深刻な状態にあり、誰からも愛されていないと感じ将来を悲観して悩んでいた女子高生たちが、「自分の生んだ子なら、自分を愛してくれるに違いない」「自分を愛してくれる存在が欲しかった」と、みんなで協定を結んで妊娠したというのが理由のようだと報じられていました。
彼女たちはグループで、集まった際に「1年以内に一緒に赤ちゃんを産んで育てよう」と約束を交わしていたという。
タネをくれさえすれば、たとえ好きでなくとも男なら誰でもよかったのか(sexへの多大な興味がそこはクリアできたかもしれないとしても)、しかし、そんな事情で生まれてきたことを知った子供たちが、そういう親を愛せるか、逆に、親を軽蔑しているそういう子供を、はたして親として愛せるか、そこまで想像を働かせたかは疑問ですが、高校生にして子供を抱えた彼女たちの将来は、以前よりもさらに暗澹たるものであることを彼女たちが知るのは、もうすぐそこ。
きっかけは、ブリトニー・スピアーズの妹のジェイミー・リン・スピアーズが昨2007年に妊娠し、今月17歳で子供を産んだこと。さらに16歳の少女が妊娠・出産、生まれた子供を養子に出す『JUNO』というコメディー映画が大ヒットしたこと。
アメリカのメディアは、「妊娠をピアスやタトゥーと同じファッション感覚と思っているが、ハリウッドスターではないので、彼女たちには厳しい将来が待っている」と報じている。

今回の場合は、教養も分別もある優秀な看護師さんたちで、不妊治療が有効だったからこそ、16人が同時に妊娠することができたという、ただただ、おめでたいニュースなので、カルト教団だの、ブードゥー教だの、「死のう団」だの勝手なことを並べ立てて余計なことを書くべきではなかったかもしれません、という気がだんだんしてきました。



まあ、ついでといったらなんですが、参考までに、Wikiから映画「リュウグウノツカイ」の「あらすじ」と「スタッフキャスト」を引用・貼付しておきますね。


【「リュウグウノツカイ」のあらすじ】
開発工事の影響で漁業不振に陥っている田舎の小さな漁師町では、工事に対する抗議活動が漁師たちによって盛んに行われている。
ある朝、日課である浜の水質調査を行う女子高校生グループたちの前に巨大な深海魚「リュウグウノツカイ」が現れる。この魚には「豊漁の兆候」「災いの予兆」という両極端な言い伝えがあった。翌日、3年前に上京した同級生・千里が町に戻ってくる。千里は妊娠していることを真姫に明かす。真姫はグループのメンバーに千里の妊娠と、自らも妊娠していることを明かし、「国創ろうよ。私達の国。」と、集団で出産することを提案する。彼女たちはこの計画に賛同し、全員で出産すべく奮闘する。

(2013)脚本監督編集・ウエダアツシ、プロデューサー・梅本竜矢、豊里泰宏、撮影・松井宏樹、録音・弥栄裕樹、照明・深谷昌平、特殊造形・織田尚、ヘアメイク・升水彩香、音楽・佐藤和生(チムニィ)、宣伝プロデューサー・浦田佳代子、公式サイト制作・服部孝志、製作・slash、nomadoh、企画制作配給・slash
出演・寉岡萌希(真姫)、武田梨奈(幸枝)、佐藤玲(孝子)、樋井明日香(千里)、石崎なつみ(早智子)、菅原瑞貴(京子)、相葉香凛(真帆)、高木古都(久美)、小野木里奈(けい)、森田望智(若菜)、関根大学(真姫の父)、芹沢礼多(幸枝の父)、三浦俊輔(地元新聞社のライター)、佐藤勇真(健二)、汐谷恭一(吉田先輩)、森永悠希(竜男)、菜葉菜(女性ディレクター)、古舘寛治(鈴木先生)、
2013年/日本/60分/HD/16:9サイズ/デジタル5.1ch
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014オフシアター・コンペティション部門北海道知事賞を受賞




参考
≪デジタル時代にあらがい、若者たちが劇場用の35ミリフィルムで自主製作した映画が反響を広げている。蔦哲一朗監督『祖谷物語 / おくのひと』(15日公開)。東京国際映画祭「アジアの未来」部門で特別表彰され、ノルウェーのトロムソー映画祭で最高賞を受けた。舞台は徳島の山間部。老人(田中泯)と若い娘(武田梨奈)の自然と共生した暮らしを軸に土建業者と自然保護団体の対立、害獣と農民の対立といった問題を絡め、現代文明の矛盾に迫る。「電気も水も使い放題の東京の暮らしに僕自身が罪悪感をもっている。山と寄り添った祖谷のつましい生活を通して、自然に生かされていることを描きたかった」と蔦。自らの故郷である山村の価値観の軋轢も臆せず描いた。映画は娘が水の浄化を研究する後半から幻想的色彩を帯びる。「次代の課題を表したかった。我々は掃除を任された世代」と蔦。29歳、東京工芸大時代の仲間を集め、春夏秋冬にわたり撮影。地元三好市などの支援を受け、直接製作費2500万円で撮った。「映画のタッチ」にこだわり、在学中からフィルムで撮り続ける。祖父は池田高校野球部の蔦文也監督。「故郷に貢献したい思いは僕にも強くある」。今後も東京と徳島を拠点に撮り続けたいという。≫日本経済新聞「文化往来」掲載日時不明




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by sentence2307 | 2018-08-21 13:44 | 映画 | Comments(0)