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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カンザスシティ映画批評家協会賞 発表

作品賞:『ミュンヘン』(スティーヴン・スピルバーグ監督)
監督賞:スティーヴン・スピルバーグ『ミュンヘン』
主演男優賞:フィリップ・シーモア・ホフマン『カポーティ』
主演女優賞:リース・ウィザースプーン『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』
助演男優賞:ポール・ジアマッティ『シンデレラマン』
助演女優賞:マリア・ベロ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
脚本賞:『グッドナイト&グッドラック』
脚色賞:『ミュンヘン』トニー・クシュナー
外国語映画賞:『ヒトラー 最期の12日間』(ドイツ)
ドキュメンタリー映画賞:『Grizzly Man』、『Murderball」』
アニメーション映画賞:『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』


前哨戦序盤で順調に実績を積み重ねていながら、ゴールデン・グローブ賞では、まさかの落選を喫した「ミュンヘン」。

和平の道を歩み始めているイスラエルとパレスチナの微妙な情勢が一転、シャロン首相の緊急入院で和平の行く末が、にわかに危ぶまれ始めたという報道を聞きながら、この「カンザスシティ映画批評家協会賞発表」の記事を見ていました。

逆風のなか、苦戦しているスピルバーグの「ミュンヘン」が、この批評家賞で浮上してきたので、少し状況分析をしておきましょう。

1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたイスラエル国籍選手襲撃テロ事件を扱った本作。

エリック・バナ扮するイスラエルの特殊部隊モサドの隊員を主人公に主犯(パレスチナ人)の捕獲作戦を描くという微妙なテーマだけに、製作当初から物議をかもし、賛否がはっきり分かれていましたが、Newsweek、Entertainment Weekly、New York Post、Premiere、Chicago Sun-Times、ReelViews、Slateなどの有力誌を見る限り、批評家たちは、「やや絶賛」から「おおむね好意的」な評価をしているようです(しかし、もっと評価されてもいい、という見方も当然ありますが)。

また、Los Angeles TimesやThe Hollywood Reporterなども、抑え気味ながら好意的な評価を寄せているようですね。

例えばこんな感じです。「非凡な深みと知性と卓越した感性を有した作品、テロ事件を客観的に見つめており、政治的に公明正大、なおかつ知的、映像にもスピルバーグの技が冴え渡っており、張り詰めた緊張感の盛り上げの巧みさは、かの巨匠ヒッチコックに匹敵する」とか。

しかし、この手の社交辞令には、「眉唾」で読んでおかないと予想を狂わされてしまうことが往々にしてあるものですよね。

ここは、否定派の意見もじっくりと聞いておく必要があります。いわく「作り手の意思がまるで感じられず、話の展開もスピルバーグとは思えない鈍さで無駄に長いうえに、真新しい教訓は何もなく説得力もない」とこきおろしています。

いずれにしても批評の対象は、なんといってもスピルバーグ渾身の一作という観点から、作品自体の力量を問う「作品賞」と、演出力を問う「監督賞」というスピルバーグ個人に関心が集中しているような感じがします。

そういう意味では、この歴史ある批評家賞の「カンザスシティ映画批評家協会賞」で選出されたというのは、いい刺激になりますよね。

もっとも、この賞、すこしヘソまがりな選出をすることで有名なのですが。

まあ、これで「ミュンヘン」は、2つ目の批評家賞受賞となるのですが、懸念したとおり題材のリスキーさが足を引っ張っている感じで、規模の大きな映画賞では軒並み無視され、重要賞では結果を残せない苦戦を強いられています。

やはり、最大の武器は、スピルバーグ・ブランドがどこまでアカデミーに通用するかに注目が集まっているところでしょうか。
by sentence2307 | 2006-01-05 22:39 | 映画 | Comments(0)