ロベレ将軍
2007年 04月 07日
内容は、第二次世界大戦中、北伊のパルチザンと連絡を取るために連合軍がひそかに潜入させたイタリア人のロベレ将軍がドイツ軍に射殺されたあと、ナチは、偽のロベレ将軍を仕立て上げてオトリとしてパルチザン情報の得ることで、抵抗勢力を一挙に壊滅させようという謀略を立てます。
偽の将軍に仕立て上げられるのが、デ・シーカ演ずるベルトーニという賭博と女に身を持ち崩した詐欺師です。
彼は自分の密告によってナチに抵抗する若者が無残な拷問を受けながらも屈することなく、むしろ毅然として誇り高い自殺を選び取ってゆく姿を見、またロベレ夫人からの愛情と信頼に満ちた手紙を受け取って衝撃を受けます。
ナチの手先となり国のために闘うパルチザンを裏切って卑怯者の密告者として生きるより、勇敢な愛国者ロベレ将軍として尊敬されながら死んでいくことを選びます。
これは、いい映画だと思いました。
見た後の充実感や感動は嘘ではありません。
この作品に寄せる不評も知ったうえでの「感動」でした。
僕が読んだ不評のひとつに、このラストの「威厳に満ちた死顔の平板な描写」のどこがネオ・リアリズムだ、という批判がありました。
ロッセリーニが戦時下にレジスタンス映画を撮ったとき、そこには明確な善悪が存在し、敵と味方もはっきりしていました。
だから、そこでリアルに描写される単刀直入な激烈な憎悪と怒りが、思うさま真実味を持てたのだと思います。
戦争が終わり、時間の経過とともに平和な時代が訪れて様々な利害が交錯して、何が善で何が悪か単純には割り切れなくなってしまった複雑な社会を活写するためには、「無防備都市」の方法では最早通用しなくなってしまったことは、誰よりもロッセリーニ自身が分かっており、その戸惑いが、再び「あの時代」へ立ち返らせて「ロベレ将軍」を撮ったのだろうと思います。
あの死顔の平板な描写も、純粋な「怒り」で在り得たものも、時の経過によって、「威厳」に腐り変わってしまっただけなのだと思います。
なんの意識もないロッセリーニは、ただ、同じようにカメラを向けていたのだろうな、と考えてしまうのです。
もし、他の若手監督が、この「ロベレ将軍」を撮っていたらどう評価されたか興味はありますが、しかし、これは、やはり「無防備都市」を撮り「戦火の彼方」を撮ったロッセリーニの「ロベレ将軍」なのですよね。
そこには、ただ創造するというだけでは済まされない芸術家の限界のようなものを感じてしまいます。
自分を「追い詰める」創作行為が、逆に自分が(世間から)追い詰められてしまう結果になってしまったロッセリーニの生き方を考えているうちに、井筒和幸監督の著作にあった「表現は、主張なんかより、ずっと素晴らしい」という言葉を思い出しました。
「主張」することの絶望を知っている含蓄に富んだ奥深い言葉ですね。
1959年から1960年という期間は、イタリア映画にとっては、偉大な2つの作品が撮られたことによって記念すべき年と記憶されています。
フェリーニの「甘い生活」とアントニオーニの「情事」です。
この時期、イタリアで公開された約190本の作品のうち、興行収益トップだったフェリーニの「甘い生活」が21億2000万リラを稼いだことと並んで、このロッセリーニの「ロベレ将軍」が7億1000万リラの収益をあげるなど、ネオ・リアリズム期の巨匠たちが相次いで健闘し、やや低迷気味だった彼らの華々しい復活が騒がれました。
この「ロベレ将軍」も、一応興行的には十分に成功したのですから、記念碑的作品といっていいと思います。
しかし、国際的な大きな賞を相次いで得て世界的な名声を欲しい儘にしたこの時期のフェリーニに「華々しい」という形容詞がふさわしいとしても、「無防備都市」や「戦火の彼方」で既に国際的な名声を得ていたロッセリーニにとって、いつまでも世界が認知した「ロッセリーニ」であり続けることの困難にぶち当たり、どういう方向で映画を撮っていけばいいのか分からなくなっていく、そんなこの時期の彼は、まさに混迷の真っ只中にあったのだろうと思います。
やがて、散々な結果となる「ローマで夜だった」を撮り、世間に自身のあからさまな衰弱の姿をあらわにすることになる彼に、果たして「華々しい」という形容詞を被せることが相応しいかどうか疑問です。
興収面では好成績を挙げたこの「ロベレ将軍」が、本当のところどう評価されたのか、ロッセリーニは、この作品を撮った後、低迷が続いたまま劇場用映画を撮る場を失い、テレビ・フィルムで活動を続けていくしかなくなりました。
この作品がどのように評価されたのか、なんとなく察することが出来ます。
それを思うと、カンヌ映画祭グランプリを得た「甘い生活」と「ロベレ将軍」は、確かに、残酷なまでに「記念碑的な作品」だったのだろうなという感慨に、しばしとらわれました。
裏切り者のケチな詐欺師ではなく、いまや本物の将軍として、英雄として銃殺されていく雪の処刑の美しいラストシーンを「深読み」したくなる誘惑に駆られました。
(59イタリア)監督・脚本:ロベルト・ロッセリーニ、製作・モリス・エルガス、脚本:セルジョ・アミディ、ディエゴ・ファッブリ、原作脚色・インドロ・モンタネッリ、撮影:ルイジ・フィリッポ・カルタ、カルロ・カルリーニ、音楽:レンツォ・ロッセリーニ、
出演:ヴィットリオ・デ・シーカ、ハンネス・メッセマー、ヴィットリオ・カプリオーリ、ナンド・アルジェリーニ、サンドラ・ミーロ、アンヌ・ヴェルノン、ジョバンナ・ラリ
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