ナビィの恋
2004年 11月 07日
太陽の強烈な光の中で繰り返し歌われる素朴な旋律の沖縄民謡。
いい映画です。
長い間待ち続けた最愛の人との再会によって成就する老女の恋を絡ませながら、豊かな風土の中で、少女から女へと成熟してゆく奈々子の恋が描かれていくのですが、こう書いてくると、何だか純愛映画のお座成りな紹介文のようになってしまい、自分が体験した感動がうまく伝えられないことに少し苛立ちを覚えます。
なめまわすような女体の描写があるわけではありませんし、きわどい絡みの描写もありません。
しかし、この作品には、沖縄の大自然の一部のように、何の気取りもない性の気配がしっかりと描かれています。
ここには、僕たちが日本映画の中で数多く見てきたこそこそと隠れて行われねばならなかった陰湿な恥ずべき行為としての特別な性は、どこにもありません。
庶民が生きている傍らに自然にあって、それも単に風土の中に自然に溶け込んでいる性、です。
性こそ庶民のものだと、まるで、その理念を謳い上げるような象徴的なシーンがありました。
奈々子が庭で洗濯物を干しているのを見ながら、恵達オジイが、青年に語りかけます。
「どや、あの娘と結婚せえへんか。ええ尻してるやろ。」
こんな刺激的なセリフを映画の中でいままで聞いたことがありますか。
僕たちは、きっと次の瞬間オジイの言葉にうながされ、まぶしいものを見るように奈々子さんのお尻を見たに違いありません。
結婚というものが、気持ちの問題だけでなく、お尻の問題であることをも教えてくれている貴重な場面でした。
土俗的でありながら、ひたすらカラっと乾いていて、そして、べたついてない日本映画には稀有な、それでいて性的にも知的にも十分に刺激的な映画でした。
いままで不当に切り離されていた「性」と「愛」とが、少し距離を縮めたように思えました。