黒い画集・寒流
2004年 11月 14日
それくらい雰囲気的には、なんか似ている感じがします。
巨大な権力にひとり立ち向かっていきながら、結局押し潰されてしまうというあたりなんか、共通するものがありますよね。
たまたま、「日本映画専門チャンネル」で放映していた鈴木英夫監督61年東宝作品「黒い画集・寒流」を見ながら、ふとそんな気がしました。
「黒い画集」シリーズの完成度から言えば、やはり、堀川弘通監督の「あるサラリーマンの証言」を挙げねばならないかもしれませんが、この「寒流」も捨てがたいものがあります。
新珠三千代の熱演です。
この「寒流」は、彼女の代表作といわれている小林正樹監督の「人間の条件」と製作年度がダブっているので、もっともアブラののっていた時期の女優・新珠三千代を見ることができます。
僕としては、もう少し若い時期の、川島雄三監督の「洲崎パラダイス赤信号」で蔦枝を演じていた彼女もとても好きです。
新珠三千代の魅力は、品のよさと女らしい情感(あの楚々とした喋り方!)に溢れ、そして凛とした芯の強さ(時には、悪魔のような女も)を不自然でなく同時に演じることのできた素晴らしい女優さんでした。
惜しい女優さんが、どんどん亡くなられて、とても淋しい感じがします。
さて、こう書いてきて、一時期、盛んに作られた松本清張の小説の映画化、最近はあまり聞かなくなりました。
それにしてもどのくらい映画化されているのか、ちょっと調べてみました。
顔(57大曽根辰保)、
張り込み(58野村芳太郎)、
眼の壁(58大庭秀雄)、
共犯者(58田中重雄)、
影なき声(58鈴木清順)、
点と線(58小林恒夫)、
かげろう絵図(59衣笠貞之助)、
危険な女(59若杉光夫)、
黒い画集・あるサラリーマンの証言(60堀川弘通)、
波の塔(60中村登)、
黒い樹海(60原田治夫)、
ゼロの焦点(61野村芳太郎)、
黒い画集・ある遭難(61杉江敏男)、
黄色い風土(61石井輝男)、
黒い画集・寒流(61鈴木英夫)、
考える葉(62佐藤肇)、
無宿人別長(63井上和男)、
風の視線(63川頭義郎)、
花実のない森(65富本壮吉)、
霧の旗(65山田洋次)、
けものみち(65須川栄三)、
愛のきずな(69坪島孝)、
影の車(70野村芳太郎)、
内海の輪(71斎藤耕一)、
黒の奔流(72渡辺祐介)、
砂の器(74野村芳太郎)、
告訴せず(75堀川弘通)、
球形の荒野(75貞永方久)、
霧の旗(77西河克己)、
鬼畜(78野村芳太郎)、
わるいやつら(80野村芳太郎)、
疑惑(82野村芳太郎)、
天城越え(83三村晴彦)、
迷走地図(83野村芳太郎)、
彩り河(84三村晴彦)
の35作だそうです。