世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307

2005年 01月 08日 ( 5 )

半落ち

たまたま時間ができたので、録画したまま見られないでいたこの作品「半落ち」をやっと観ることができました。

僕の周囲での前評判は賛否両論といったところでしたが、相異なるその意見の隔たりとはいっても、きっと、ほんの僅かなものにすぎなかったように思います。

「よかったけれども、あえて言えば」みたいなところから、「どうということもなかったけれど、幾度か泣いてしまいました」といった感想までが、微妙に交錯している印象です。

そのかすかな「揺れ」の状態を明確な言葉で言い表すとすれば、たぶん、映画的な感動には程遠いけれど、深刻な社会問題という重厚なテーマなので、気楽にはやり過ごすことができなかった情緒的な「迷い」みたいなものだったのだろうと思います。

なにしろ、この映画のテーマといえば、やたらに重い「白血病」と「アルツハイマー」と「妻殺し」のつるべ打ちです。

最愛の息子を白血病で失い、そのショック(息子の死をどうしても受け入れられない拒否反応)によってアルツハイマー病を発症した妻は、そのために息子の死を完全に忘れ果てて、まるでまだそこらに生きて居るかのように呼びかけ探し回るその度に、夫は息子の死を妻に教え諭し、それを聞いた妻はその度に子供を失った悲しみを受け入れ、改めて打ちひしがれて悶え泣くという、この悲痛な繰り返しの日常を生きています。

本来なら悲しい思い出の傷の総てを忘れて、目先を変える希望を何か見定めて新しい生活を始めねばならない夫婦にとって、逆に、その悲しい思い出=最愛の息子の死は、常に思い出し、いつも確認しなければならないものでしかなかったのです。

この作品が、このあたりを映像としてどう消化しているのか、実際に見た僕の第一印象は、交通整理ができていない率直さに欠けた粗雑な未完成品を見せられた思いでした。

欲張りすぎた多くの登場人物の出入りを捌き切れないこの監督の混乱振りが、観客の視点をテーマから反らせ、そして見失わせてしまったのだと思います。

それは、多分、なぜ妻殺しを犯した被疑者が黙秘し続けるのかというその理由の「何故」を中心にすえ、あえて謎解きめかした構成に組み立てたことが、この作品のテーマから観客の目を霞ませてしまった総ての誤謬の原因だったと思わざるを得ません。

最愛の息子を中にして過ごした家族の幸せな日々の思い出が、その息子を失い、その家族の思い出も失おうとしているとき、その思い出は残された夫婦にとって、ただの耐え難い「痛み」でしかなく、「せめて意識のあるうちに殺して欲しい」→「妻が妻でいるうちに死なしてあげたい」という痛ましい夫婦の合意があり得たのだろうと思います。

妻のアルツハイマー病も、亡き息子のために為されたと思しき見知らぬ青年への骨髄移植も、なぜ黙秘するほどのことなのか、この映画からは、どうしても納得できないままの疑問として僕の気持ちの深い部分に滓のように残ったままで終わりました。

かつて「あった」家族の幸福を納得させられない限り、それを失ったときの空虚感を納得させられるわけがありません。
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by sentence2307 | 2005-01-08 23:28 | 映画 | Comments(0)
米アカデミー賞の前哨戦と位置づけられている米監督組合賞(DGA)のノミネートが、6日発表されました。

ノミネートされた監督は、

マーティン・スコセッシ(アビエイター)、

クリント・イーストウッド(ミリオン・ダラー・ベイビー)、

テイラー・ハックフォード(Ray/レイ)、

アレクサンダー・ペイン(サイドウェイズ)、

マーク・フォ-スター(ネバーランド)

の5人です。


なお、受賞者は29日に発表される予定です。

 これまでの受賞者56人のうちの、なんと50人がアカデミー監督賞を獲得しているということですから、この賞を受賞することは、まさに賞レースのポール・ポジションを獲得したと同じと言えるくらいの確実性を持った賞ですね。
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by sentence2307 | 2005-01-08 07:35 | 映画 | Comments(0)
ケン・ローチ監督が、ロンドン映画批評家協会賞生涯功労賞を受賞

『大地と自由』『SWEET SIXTEEN』などで知られるイギリスの社会派監督、ケン・ローチ監督が、ロンドン映画批評家協会賞の生涯功労賞を受賞することになりました。

ローチ監督の新作『エイ・フォンド・キス』(原題)も、最優秀英国映画賞にノミネートされています。

授賞セレモニーは2月9日に行われる予定です。
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by sentence2307 | 2005-01-08 07:32 | 映画 | Comments(0)
★「SCREEN」2004年度・外国映画ベスト10

①ミスティック・リバー

②モーターサイクル・ダイアリー

③ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

④殺人の追憶

⑤父、帰る

⑥ビッグ・フィッツュ

⑦シービスケット

⑧ラブ・アクチュアリー

⑨スクール・オブ・ロック

⑩グッバイ・レーニン!

ベスト女優=スカーレット・ヨハンソン(ロスト・イン・トランスレーション)
ヘスト男優=ショーン・ペン(ミスティック・リバー、2.1グラム)



★「ROADSHOW」2004年度・外国映画ベスト10

①ミスティック・リバー

②ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

③モーターサイクル・ダイアリー

④ビッグ・フィッツュ

⑤父、帰る

⑥スパイダーマン2

⑦ラブ・アクチュアリー

⑧スクール・オブ・ロック

⑨インファナル・アフェア/無間序曲

⑩ロスト・イン・トランスレーション
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by sentence2307 | 2005-01-08 07:31 | 映画 | Comments(0)

クルーシブル

まあ、だいたいは、手当たり次第に録画して、それを片っ端から見ようと思っています。

録画は、ただセットするだけで済むのでとても楽なのですが、いざそれを見るとなると、それはもう大変な苦行です。

片っ端からとは言っても、録画するときには、個々の作品について比較検討をしたりして、そこにはある程度の選択もあるわけで、例えば、無名の作品よりも話題作を、とか、駄作よりも名作を、とかの判断の結果、録画されている作品は、かなり重たい充実した作品が多くなってしまい、そういうものを、雑誌の飛ばし読みみたいにパッパッと見ることができるかと言うと、なかなかそうもいかないのが現実ですよね。

それに、昔と較べたらテープが驚くほどの安値になったことも「在庫」を増やしてしまう原因になっているのでしょうか。

それでまあ、そんな具合に溜まってしまった作品群を、なにもわざわざ秩序なく出鱈目に見るとこもないじゃないか、というわけで、僕なりの基準を定め、ある程度系統立てて作品鑑賞をすることとしました。

例えば、そう、ダニエル・デイ・ルイスの出演作を見てしまおう(消化試合みたいで不謹慎に聞こえるかもしれませんが)とかね。

しかし、考えても見てください。

「クルーシブル」を見てから、「存在の耐えられない軽さ」と「ラスト・オブ・モヒカン」を続けて見て、そして仕上げに「マイ・レフトフット」をやっつけてしまおうだなんて、そんなこと出来ると思いますか。

まともな感性をもっていたら、この珠玉の作品群に、そんな「はしご」的な見方が通用するわけがありません。

当然、僕も、まず最初の「クルーシブル」に引っ掛かりました、当然ですが。

中世のこの密告と暗黒裁判による魔女狩りを描いた映画を見ながら、すぐに赤狩りの話しだな、と直感し、スタッフを見直して、アーサー・ミラーの戯曲なのを確認しました。

生きるために、方便ならばと、悪魔と契約したことを一度は認めようとするダニエル・デイ・ルイス扮するジョンが、拒絶に翻意する理由というのが、信念を曲げたことを村中に「公表」しようとする裁判官に対する拒否でした。

密告が嘘っぱちであり、彼が無罪であることも十分に分かっていながら、権力者は、自分では自身の非を正すことができず、裁かれる者の虚偽の告白と、その告白を公衆に晒すことがどうしても必要だったのでしょう。

「命惜しさに信念を曲げたそんな父親を、息子たちはどう思うか」と権力の辻褄あわせを拒否し、彼は、むしろ誇り高い死を選びます。

現実の赤狩りの凄まじさとともに、誤りを自認しながらも、引っ込みのつかなくなった権力の開き直りが、アメリカ映画界にどれ程の深刻な傷跡を残してきたのか、僕たちは「追憶」や「真実の瞬間」で知ることができます。

この映画、ひとりの少女のヒステリーが、集団ヒステリーと化していくところが圧巻なのですが、それにしても、ウィノナ・ライダーが、ラストで、突然、金を持ち逃げして、あっさり雲隠れしてしまうという終わり方は、あの過剰な熱演を納めるには、なんとも腰砕けで、本当に力が抜けてしまいました。

まあ、この調子なので「消化試合」は順調にいきそうもありません。

これでまた、映画の在庫が増えてしまいそうです。
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by sentence2307 | 2005-01-08 00:31 | 映画 | Comments(140)