世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307

2005年 01月 15日 ( 4 )


つい先日「週刊新潮」に「原節子の映画界引退の真相」みたいな記事が出ていたので、つい買ってしまいました。

内容は、憶測ばかりの羅列で特に目新しいものはなく、あえていえば白内障にかかり、しかも足の調子も思わしくなくて立ち居にも不自由していたらしく、映画出演の激務に耐えられなくなったというあたりでしょうか。

あまりにも美しい人が、その美形をウリにしていたことで、容色の衰えをスクリーンに晒すということを俳優としての本人がどう考えるかが、女優を継続していくか引退するかの分かれ道になるのだろうななんて考えていた矢先、まあだいたいは番組をチェックしている「日本映画専門チャンネル」で、ここのところいやに原節子の映画を放映しているのに気が付きました。

いや、うっかり見過ごし続けていた自分の迂闊さに、遅ればせながら気が付いたといった方が正しいかもしれません。

とにかく、あわててhome pageを検索してみたのです。

ありました、ありました。

いつもながら彼女のコピーが物凄いです。

「輝くばかりの美貌と演技力を兼ね備え、今なおその存在感が衰えることのない永遠の処女」ですから。

いえいえ、決して揶揄しているわけではありません。

僕もまったくその通りだと思います。

自分で言うのも変ですが、僕がもっと色気のあった時分なら、「輝くばかりの美貌と演技力を兼ね備え、今なおその存在感が衰えることのない永遠の処女」などというコピーに出会ったら、ウッソだろー、女なんて結局はみんな同じだと嘯いてその仮面を引っぺがしたくなるような気持ちにかられ、つい茶化してしまっただろうなと思うのですが、最近はすっかりそういう気持ちがなくなりました。

今頃そんなふうに思えられるようになるなんて、なんて時間を無駄づかいしてしまったんだろうという後悔でいっぱいですが、確かにこの世には美形に加え気持ちもきれいな人がいるのですよね。

まあ、よく存じ上げないので、女優・原節子がそうだという意味ではありませんが。

さて、原節子特集の紹介はこんな感じで書かれていました。

「名作から知られざる作品まで、前代未聞の<全作品TV初登場>となる原節子の出演映画全24作品を一挙放送。1月から毎月8作品ずつ、3ヶ月にわたって年代順に放送」
するのだそうです。

最後には、必見の超豪華企画と書かれていました。

確かにそうですよね。

そこで、どんな作品が放映されるのか心覚えのために記しておきます。


【1月】

「田園交響楽」(38)アンドレ・ジィドの同名小説を翻案した文芸メロドラマ。敬虔なクリスチャンで小学校校長の日野東作(高田)は、身寄りのない盲目の少女・雪子(原)を引き取り世話をしている。東作は雪子を愛情を込めて育てるが、手術が成功して目が見えるようになった雪子は、東作の弟・進二(佐山)に惹かれていく。当時18才の原節子が気品ある演技を見せている。
監督・山本薩夫、原作・アンドレ・ジィド、出演・原節子、高田稔、佐山亮、清川玉枝(77分・モノクロ)

「美はしき出発」(39)原節子(19歳)・高峰秀子(14歳)の初共演作。ブルジョア一家の怠慢さを諷刺した人間ドラマ。北条家は、叔父(清川)の財力に頼りつつ、何一つ不自由のない生活をしていたが、次女の奈津子(高峰)だけは厳しい現実に目を向けていた。そんなある日、叔父の会社が突然倒産してしまう。
監督・山本薩夫、出演・原節子、高峰秀子、月田一郎、清川荘司(68分・モノクロ)

「上海陸戦隊」(39)1937年、日中戦争・上海激戦での海軍陸戦隊の活躍から、陸軍部隊の敵前上陸までの戦闘経過をドキュメンタリータッチで描く。日中戦争が始まり、日本の海軍陸戦隊は、上海で敵の猛攻撃を受ける。少数の兵力ながらも奮闘するが、上海の街まで激戦の場となり・・・。日本軍に守られて九死に一生を得る中国人避難民に扮した原節子が光彩を放っている。
監督・熊谷久虎、出演・大日方伝、原節子、清川荘司、小杉義男(96分・モノクロ)

「女の街」(40)出征した夫の留守を守る妻の姿を描いた人間ドラマ。夫・進治郎(大川)の留守を守るため、妻・いね子(原)は東京・本郷通り横町におでん屋を開業する。近所の助けもあり、商いは順調だったが、いつしか彼女の美貌を目当てにした客が出入りするようになり・・・。
監督・今井正、原作・川村花菱、出演・原節子、大川平八郎、林喜美子、沢村貞子(71分・モノクロ)

「二人の世界」原節子と島津保次郎監督とのコンビ3作目。ある軍需工場内を舞台にした群像劇。工作機械の会社・技術部長の戸塚(丸山)は会社の好況の裏側で、部下と重役との間に挟まれ苦悩していた。その中でも部下の家村(藤田)との関係は複雑。彼は戸塚の娘・さち子(原)と恋仲でもあった。原節子が颯爽とした洋装のいでたちでモダン・ガールぶりを発揮。
監督・島津保次郎、原作・山形雄策・塚本靖、出演・原節子、丸山定夫、藤田進、里見藍子(81分・モノクロ)

「姉妹の約束」(40)父の留守を守りながら、母と三姉妹でたくましく生きる姿を描いた人間ドラマ。岡村家は、軍医として父が応召され、母(英)と3人娘(花井・原・若原春江)で暮らしていた。ある日、隣りに大岩老人(小杉義男)とその孫・喬(中村彰)が越して来る。やがて互いの家族は親密になっていく。元気で勝ち気な次女・幸子役を原節子が熱演。
監督・山本薩夫、原作・山下與志一、出演・原節子、花井蘭子、英百合子、大川平八郎(72分・モノクロ)

「兄の花嫁」(41)兄夫婦と共に過ごす妹の目から、二人の新婚生活の一週間を描いた人間ドラマ。見合い結婚をした銀行員・原田浩(高田)と下町育ちの春枝(山田)。浩の妹・昌子(原)は、一度きりの見合いで結婚を決めた兄に不信感を抱く。一方、春枝の家族は、原田家の家風に違和感を感じ始める。スーツを着こなすキャリア・ウーマンを、当時20歳の原節子が好演。
監督・島津保次郎、出演・原節子、山田五十鈴、高田稔、清川玉枝(81分・モノクロ)

「結婚の生態」(41)幼な妻と理想の家庭を築こうとする男の姿を描いた恋愛ドラマ。新聞記者の佐野二郎(夏川)は、同僚から洋装店に勤める中村春子(原)を紹介される。やがて二人は惹かれ合い、結婚を約束する。そこから春子を完全な妻とするための教育が始まった。二郎の兄たちはこの理詰めの女房教育を陰ながら心配して・・・。石川達三のベストセラー小説を「また逢う日まで」の今井正監督が映画化。
監督・今井正、出演・原節子、夏川大二郎、石黒達也、高田稔(100分・モノクロ)


【2月の放送予定作品】
 指導物語(1941)、希望の青空(1942)、青春の気流(1942)、若い先生(1942)、緑の大地(1942)、母の地図(1942)、望楼の決死隊(1943)、決戦の大空へ(1943)


【3月の放送予定作品】
 熱風(1943)、緑の故郷(1946)、麗人(1946)、かけ出し時代(1947)、恋の風雲児(1953)、白魚(1953)、美しき母(1955)、女ごころ(1959)
[PR]
by sentence2307 | 2005-01-15 23:36 | 原節子 | Comments(0)
「映画のエラー」についての書き込みをしたら、物凄い数のアクセスをいただいたので、引き続き手元にあるメモから面白いエピソードを少し紹介しますね。

僕たちの印象からすると、「映画の中のエラーを数え上げる楽しみ」などと言うと、人の悪い嫌味な悪趣味と感じてしまうかもしれませんが、その辺のニュアンスをアメリカで生活したことのある知人に聴いてみると、決してそういうことではないという意外な答えが返ってきました。

映画作りというものを、アメリカ人は僕たちが考えているよりも、はるかに身近で温かな人間的な行為の作業であると捉えているというのです。

たとえ思わず失笑してしまうようなエラーやチョンボを通しても、その影でフィルムを支えている多くの裏方たちの人間ドラマを文字通り「楽しむ」のだそうです。

そこには冷笑的なものなど少しも感じられない、まるでスポーツ観戦のような、いかにもアメリカ的な楽しみ方という面もありますが、しかし、しっかりとしたスピリットに支えられているという面もまた感じることができます。

そういえば、アメリカ映画には、思いつくだけでも「イヴの総て」50とか「女優志願」58とか「キャバレー」72、そして「シカゴ」03など、日本映画にはあまり見られない業界の内幕を描いた題材が多いような気がします。

きっとそれは、ハリウッドやブロードウエイなどのショービジネスの発達と、観客の側の成熟度が、華やかな面ばかりではなく、その影にあるほろ苦い人生もまたしっかりと視野に入れた繊細で辛らつな優れた大人の映画を作らせてきたからでしょうね。

そういうことをすべて踏まえたうえで「コンティニュティ・エラーを楽しむ」という成熟した観客としてのアメリカ人の考え方には、映画との「繋がり」という部分で特別ホットなものを感じてしまいました。

日本の映画のよそよそしさを考え合わせてみれば、この感覚のもつ意味の深さが分かってきますよね、それは、僕たちが、ついぞ感じたことのなかったもののひとつかもしれません。

前フリが長くなってしまいましたが、不朽の名作「風と共に去りぬ」のエピソードの幾つかを紹介しましょう。
(難解な単語は前後の関係から当て推量で見当をつけてしまうタイプなので、誤訳があるかもしれません。なにとぞご容赦。)

まず最初は、スカーレットが戦火につつまれたアトランタの街を走り抜けるシーン、キャメラがクレーンを使って寄りから引きの画面になっていくとき、ガス灯に似せた電灯をなめてしまっているそうです。

エジソンの登場は、もう少し後の時代になりますから~。

次は、早馬で帰ってきたスカーレットの父親が南北戦争を終わったことを家族に知らせるシーン、父親が玄関のドアを開け、「戦争が終わったぞ!」と大声で叫ぶと、その声で、スカーレット、妹、そしてメラニーがフロアーに集まってくる。

この時メラニーは階段を降りきらない所で、叫んでいる父親を見つめています、手には何も持っていない。

そして、キャメラは妹のアップからメラニーの寄りに移っていくと、手ぶらだったはずのメラニーが、いつの間にか赤ん坊を抱いている、というシーンです。

前のシーンをすっかり忘れ、赤ん坊を抱かせた方が喜びの表情を効果的に演出できると考えた監督の咄嗟の思いつきだろうというのが後世の定説。

そもそも、このマーガレット・ミッチェルの原作自体に辻褄の合わない部分が幾つかあって、有名な話では、メラニーの妊娠の期間がよく取り上げられます。

北軍の猛攻撃で南軍がジョージア州から全面的に撤退したのが1864年の春。

この時、メラニーは臨月を迎えています。

そうすると63年の6月か7月頃にはアシュレイはメラニーの傍にいなければならない計算になりますが、しかし、この時期のアシュレイは、ゲッティスヴァーグの戦いでそれどころではなかったはずです。

では、アシュレイが「可能」だった時期がいつ頃だったかを推理すると、彼が南軍に入隊して初めて一時帰休することが許された1863年の暮れでは計算が合いませんので、もっと以前というと、二人が結婚した戦争開始直後1861年の夏頃までさかのぼらなければならなくなり、メラニーは実に30ヶ月にわたつて妊娠状態だったことになる。

この食い違いを生前のマーガレット・ミッチェルに問いただしたというエピソードが、ジョークっぽい答えと共に残っています。

ミッチェルいわく
「南部の人間は北部の人間なんかよりも、なんでもスローペースでのんびりしているからね。だから、戦争にも負けたのよ」だってさ。
[PR]
by sentence2307 | 2005-01-15 19:11 | ヴィクター・フレミング | Comments(1)
あるサイトの芸能ニュース欄で、2004年度に公開された映画のうち、時間の流れや背景や服装などもろもろの間違いが多く見られた作品のトップ10が発表になっていました。

アカデミー賞の話題で盛り上がっているこの時期ホッと息抜きができる話題ですよね。

その記事には、1位は、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で、投票結果によると、映画の中の誤りは232にのぼるとかで、2位の『スパイダーマン2』の約4倍の数にあたるそうです。

善意に解するとすれば、きっと急いで撮ったからでしょうか。

それにしても232箇所とはすごいです。

それがどういう所かというと、例えば、夜中にスネイプ教授に見つかったハリーが部屋に連れて行かれると、その部屋に陽が差し込んでいたりとか、本のサイズがシーンによって異なっていたりとかいうものだそうです。

そして、2位の『スパイダーマン2』では、黒ずんでいたマスクがシーンによっては綺麗に代っていたり、3位の『トロイ』では西から朝日が昇るなどのシーンが指摘されています。

実は、この記事のネタ元とされている「ムービーミステイクス・ドット・コムhttp://www.moviemistakes.com」に僕はよくお邪魔に行くサイトなのですが、僕の見たときには、

①スパイダーマン2、②キル・ビル2、③デイ・アフター・トゥモロー、④ハリー・ポッターとアズガバンの囚人、⑤シークレット・ウィンドウ、⑥トロイ、⑦ミーン・ガールズ、⑧トタスキー&ハッチ、⑨シュレック2、⑩ボーン・スプレマシー、
の順でした。

ちなみに、最優秀アカデミー賞を受賞したあの『シカゴ』にも14箇所のミステイクがあったそうです。

主人公ロキシーが護送車でコック郡の拘置所に護送される場面で、検事が自分のことを“District Attorney(地方検事)”と呼んでいますが、イリノイ州の検事は“State's attorneys(州検事)”と呼ばれており、地方検事は存在しないそうなのです。

オリジナル・シナリオには正確に書かれているので脚色のミスとされました。

しかし『シカゴ』の14箇所などは、『アズガバンの囚人』の232箇所を見ても分かるように、かなり優秀な方なので、アクションやSF映画になると100以上のミスが余裕で見つかるということです。

こうした「間違い探し」は、アメリカでは盛んに行われており(むしろ、愛されており、と書いたほうがいいかもしれませんね)、雑誌にも頻繁に記事にされていて、それだけを集めた専門の単行本も出版されています。

僕のメモでは、以前発表されていた、ミスの多い映画のトップは、『ロード・オブ・ザ・リング』が183個所だったそうですから、『アズガバンの囚人』がいかに飛び抜けていたかが分かります。

ちなみに、
2位『マトリックス』177箇所、3位『タイタニック』164箇所、4位『スパイダーマン』157箇所、5位『ハリー・ポッターと賢者の石』149箇所
だったそうです。

例えば、『タイタニック』では、船の内部の構造や食器に到るまで、完璧に当時のタイタニックを再現したのに、救命ボートに乗っている人が1912年当時にはなかったデジタル時計をしていたとか、『スパイダーマン』は、コンティニュイティーを確実にするために、2000人のエキストラを必要とするシーンを5回も撮影しなおしたとかいうエピソードが伝えられています。

映画製作時にはスクリプターというコンティニュイティー(衣装のズレや、メイク、動きの形など前ショットときちんと繋がっているかどうか)を記録するプロがいるのですが、そのように慎重にやっても間違えるのですから映画製作の複雑さ、特に最近のCG画面などの特撮を使用する難しさをつくづく実感しますよね。

狭い業界の余裕のない日本でそんなことをしたら、ただのユーモアですまされない深刻な事態を招くかもしれません。
[PR]
by sentence2307 | 2005-01-15 11:54 | 映画 | Comments(158)
全米脚本家組合賞(WGA)の候補が発表されました。


★オリジナル脚本賞

 『アビエイター』

 『エターナル・サンシャイン』

 『Garden State』

 『Hotel Rwanda』

 『Kinsey』



★脚色賞

 『ビフォア・サンセット』

 『ミーン・ガールズ』

 『Million Dollar Baby』

 『モーターサイクル・ダイアリーズ』

 『Sideways』
[PR]
by sentence2307 | 2005-01-15 11:49 | 映画 | Comments(0)