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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:ウォン・カーウァイ( 1 )

2046

この作品が、「花様年華」の続編的な位置にある作品だという「いらぬ予備知識」を吹き込まれていたので、カーウァイの難解さに身構えずに見た分だけ、ずいぶんと損した気持ちが残ってしまったのも事実でした。

そんな知識などなければ、もっとシュールなウォン・カーウァイを愉しめたかもしれません。

しかし、この作品が「花様年華」を引きずっているとなれば、カーウァイの疾走感や映像のシュールを愉しむ以上に、正直なところ、下世話な大時代な悲恋物語とか、セクシーなチャイナドレスを気楽に鑑賞できる気分で、身構えることなく見ることができました。

でも、この作品「2046」を見て、例えば、こんなこと考えたこと、ありませんか?

近くにとても気になる女性がいて(女性の場合なら男性ですが)、勇気を出して交際を申し込んだら、その人には付き合っている恋人が既にいて断られたとか(断る理由に「架空の恋人」がいると嘘をつかれるのは、また別の話です)、好意を抱いた女性に交際を申し込むと(こんなふうに書くと、やたら気の多いナンパ男みたいですが、長い期間にわたって・・・と考えてください)ことごとく断られ、すべての女性にはすべて「先約」があるような強迫観念にとらわれ、気楽に話し掛けられなくなってしまった女性恐怖症というか対人恐怖症みたいな気持ちの塞がれた身動きできない心理状態に追い詰められたことがありました。

きっと、鬱病の一歩手前だったかもしれませんが・・・。

また逆に、普段これといった特別の感情なんか意識したこともない女性から、たまたま隣り合わせた飲み会の時なんかに、「あなたのこと以前から好きだったの」なんて突然サプライズな告白をされて困惑し、仕方なく現在付き合っている女性のことを(現実には、それほど親密ではなくとも、少しオーバーに)延々と話しながら、泥酔の果てにやっと断ることができたなんて奇妙な立場に追い込まれたこともありました。

そんなときに考えたことです。

もし、この断ってしまった(あるいは、断られた)出会いの方が、「真実の愛」だったとしたら、なんて。

でも、その未知の可能性は、誰にも否定できないことですよね。

この「2046」が、「花様年華」の後日談的な繋がりの中で作られた作品だとすれば、むかし失った恋を忘れられないまま、目の前に現れる新たな女性たちの愛も受け入れることができない憐れな男の話ということだと思うのですが、それにしても、この作品が、かつての失った恋を引きずり続けて忘れることの出来ない男の憐れさも頽廃も描き切れていなかったために、この映画が、「ナンパ男に振り回される女たちの哀愁を描いた作品」みたいな散々な評価も生まれたのだと思います。

失速したウォン・カーウァイなんて、もう見ないと言った友人までいました。

思い出だけを大切に抱き締めて過去に生きる男(だから「いま」を生きるトニー・レオンは、冷酷で無関心でクールなのですが)なんて古めかしい設定に、いまどきの人々の理解を得るのは、かなり難しいことなのかもしれません。

僕が見ても、憐れなチャン・ツィイーを棄てる酷なトニー・レオンは、単なる調子のいいナンパ男にしか見えませんでした。

いまは、なりゆきや偶然の出会いのなかでの臨機応変なパフォーマンスに価値を見出している時代です。

誰もが感じたこの映画「2046」への違和感は、その恋愛の形のあまりの時代遅れさにあったのかもしれません。

しかし、友人たちはどうあれ、「花様年華」をこよなく愛した僕にとって、この作品も個人的には、とても好きな映画でした。

この映画を見ながら、僕にとってもう二度と会うこともない、もはや過去になってしまった人たちのことに思いが飛び、同時に場違いな当時の熱い思いのヨミガエリに少し戸惑って、その度にひとり苦笑してしまいました。

(04香港)監督製作脚本・ウォン・カーウァイ、撮影・クリストファー・ドイル、クワン・プンリョン、ライ・イウファイ、美術編集・ウイリアム・チャン、
出演・トニー・レオン、木村拓哉、コン・リー、フェイ・ウォン、チャン・ツィイー、カリーナ・ラウ、チャン・チェン、ドン・ジェ、マギー・チャン、

2004年カンヌ国際映画祭パルム・ドールノミネート(ウォン・カーウァイ)、2005年NY批評家協会賞外国映画賞・撮影賞(クリストファー・ドイル、クワン・プンリョンライ・イウファイ)受賞、2005年LA批評家協会賞美術賞受賞(ウィリアム・チャン)、2004年ヨーロッパ映画賞インターナショナル(非ヨーロッパ)作品賞(ウォン・カーウァイ)受賞、2005年放送映画批評家協会賞外国語映画賞ノミネート
by sentence2307 | 2006-01-01 23:15 | ウォン・カーウァイ | Comments(0)