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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:ジョージ・スティーヴンス( 1 )

女性No.1

僕にとっては、少しまとまった休暇だったので、録り貯めていた「仁義なき戦い」のシリーズを最初から完結篇まで通して見てしまいました。

いままで「ぶつ切り」状態でバラバラに見ていて気が付かなかったことが、いろいろ分かりました。

例えば、事態を混乱させた主要因が山守のオヤジの老獪さにあったとしても、さらにそれを複雑にしたのは、広能が敵対する組の幹部(「旧友」ですが)と広く交友関係を結んでいたことにあったことが改めて分かりました。

以前の印象では、親分・山守とソリの合わない大幹部・広能が、次第に状況が険悪になっていくにつれ、自分の身の安全をはかるために密かに敵対勢力と手を結んだことで誘発された内紛の物語だとモロに考えていたのですが、むしろ、戦後すぐの焼け跡闇市の混乱期に共に青春を過ごしてきた若者たちが、それぞれチカラをつけていく過程で、たまたま敵対する組織に属したことで、否応なく対立抗争に巻き込まれてしまう物語の大前提として、絶えず「出会い」の原点から目を離さないようにしておかないと、広能もまた打本と同じように自分の立場を有利にするために敵対する勢力と密かに打算的な関係を築いたことと、なんら区別が付かなくなってしまうことに気が付きました。

その辺の微妙な部分が、もしかすると「広能」ばかりが「イイ子」に描かれてしまっているという印象を与えたひとつの理由となったのかもしれません。

しかし、いま改めてこの作品を見てみると、まるで神話のような荘厳な物語なのだなあと感動を禁じ得ませんでした。

こう書いてきて、この一文のタイトルが「仁義なき戦い」ではなく、「女性No.1」となっていることに疑問を持たれてしまうかもしれませんね。

実は「仁義なき戦い」を5本(仁義なき戦い、広島死闘篇、代理戦争、頂上作戦、完結篇)立て続けに見た後で、まだ少し時間があったので手近にあったジョージ・スティーヴンス監督の1942年度作品「女性No.1」という作品を何の気なしに見てしまったのですが、これがまたとんでもない映画でした。

折角見た「仁義なき戦い」の感動を台無しにされてしまった苛立たしさ(「感想」を書くとなれば、褒めるよりコキ下ろす方がナンボか楽しいのですが)をバネにして「女性No.1」を書き始める前に、ひとまず「仁義なき戦い」の所感を書かずにいられなかったというわけなのです。

この「女性No.1」を見たのは至極シンプルな理由からでした、ハリウッドのベストカップルといわれたキャサリン・ヘップバーンとスペンサー・トレーシーの初共演作というこの作品を、僕が未見だったからです。

しかし、その内容は、せっかく通して見ることのできた「仁義なき戦い」の感動をことごとく汚されてしまったような、すこぶる俗悪な映画でした。

内容は、ごく普通の恋愛映画です。

同じ新聞社でコラムニストとして働く男女(キャサリン・ヘップバーンとスペンサー・トレーシー)がお互いに興味を抱いて接近し、デートを重ねて結婚に至ります。

しかし、バリバリのキャリア・ウーマンであり続ける妻に失望した男は「結婚とは、こんなものじゃない」と別れを切り出します。

しかし、彼女が専業主婦になれないことくらい最初から分かっていたことではないか、という気もします。結婚するまえにそういうことは、ちゃんと彼女に伝えておくべきことだろうとも思います。

まあ、とにかく「ひどい」のは、ここから強引にハッピーエンドに持ち込んでいく終息のラストです。

親の結婚式に列席し、「結婚のなんたるか」を話す牧師のスピーチを聞いて彼女は結婚の意味に目覚め、男の愛を取り戻すべく彼の家に押しかけます。

そして、男が寝ているあいだに彼の好きな料理を苦労して作り始めますが、ことごとく失敗、それを見ていた男は、「こんなに駄目な君を見たのは初めてだ。」と言って彼女を許します。

彼女は泣きながら彼の寛容さに感謝するというラストです。

この映画の前半部分にも、男たちの会話に「女の可愛らしさは、無知なところにあるのだ」という意味のセリフがあるくらいですから、いわばこの映画の主張は、終始一貫しているといってもいいでしょう。

無知で馬鹿な女ならば、愛されもするし尊敬もされる。

少なくとも、そのような振りをしなければ、あの国では、なかなか女性が自立した評価を受けるということが、どうも困難らしいのです。

あの国が培ってきた「レディ・ファースト」って一体なんなんだ、という気がしてきました。

おとなしい「家畜」で満足できる女性ならば、きっと居心地もよかったということなのかもしれませんね。

(42アメリカ)監督:ジョージ・スティーヴンス、製作・ジョセフ・L・マンキーウィッツ、脚本・リング・ラードナー・ジュニア、マイケル・カニン、撮影・ジョセフ・ルッテンバーグ、音楽・フランツ・ワックスマ
出演・スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、フェイ・ベインター、レジナルド・オーウェン、マイナー・ワトソン、ウィリアム・ベンディックス、グラディス・ブレイク、ダン・トゥバイン、ロスコー・カーンス
by sentence2307 | 2006-07-18 21:56 | ジョージ・スティーヴンス | Comments(0)