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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:スピルバーグ( 1 )

宇宙戦争

同僚の女性に熱狂的な映画ファンがいます。

会合で顔を合わせる機会があれば、必ず二こと三こと言葉を交わして最近の注目の映画を教え合ったりしています(本当のところは、僕の方が教えてもらってばかりいるのですが)。

映画好きの彼女たちのネットワークは実に広範囲にわたっていて、しかもきめ細かく、普通なら当然見逃してしまうような単館上映のマイナーな作品なども、しっかりとカバーしているのには、ただただ驚かされるばかりですが、もっと感心させられるのは、良質の作品を嗅ぎ分ける女性の直感の鋭さと、見掛け倒しの作品を斬り捨てる歯に衣着せぬ批評の辛辣さと潔さで、僕なども彼女には随分勉強させてもらっています。

いえいえ、これは決して皮肉でもなんでもありません。

並みのヒモつき映画批評家なんかより、よっぽど胸がスッとするような的を射た指摘をします。

むかしこんな話を聞いたことがありました。ある映画批評家が、本音でコキオロシの批評を雑誌に書いたら、掲載した雑誌の広告主が、その映画の出資者でもあったことから、編集長とともに本音批評家氏は散々な目にあって、結局仕事を失ってしまったとかいうキナ臭い話です。

映画の批評で飯が食えるようになるためには、「ヒモ」をたくさん掴まなくてはならないわけですから、思うように口が回らなくなるのも、生きるためには無理からぬことかもしれませんが。

その点彼女たちは立派です。

ところで映画好きの彼女、自他共に認めているほどのスピルバーグ・ファンで、僕なども以前「インディ・ジョーンズ」はじめ多くの作品に貫かれている子供たちに注がれているスピルバーグの優しさについて熱っぽく語っている彼女の話を聞いたことがありました。

それが頭の片隅に残っていて、「宇宙戦争」を見たとき、真っ先に彼女がこの作品についてどう思うか、感想を訊いてみたいと思っていたのですが、その後、機会がないままに、ついに忘年会まできてしまいました。

席次は男女別の籤引きで(男女を交互に座らせる幹事の策略です)、偶然に彼女と隣り合いました。

乾杯が終わり、早速(唐突だろうとなんだろうと構うものですか。訊きたくて訊きたくて仕方なかったのですから。)スピルバーグの「宇宙戦争」の感想を彼女に訊いてみました。

僕はただ彼女の感想を聞きたかっただけで、彼女を困らせる積りなんか、当然のことながら、これっぽっちもありません。

彼女は言葉に詰まり、言葉を探し、そして、ひと言も発することが出来ませんでした。

彼女が話すことが出来るのは、「未知との遭遇」であり、「E.T」であり、「ジョーズ」であり、「インディ・ジョーンズ」であり、「ジュラシック・パーク」についてであることまでは分かりました。

つまり彼女にとってのスピルバーグは、それらの作品のなかにしか存在しないわけで、その後のスピルバーグの姿を見失ってしまっている(あるいは理解できなくなっている)ことが十分に分かりました。

血みどろの肉片が散乱し目をそむけたくなるような惨状を描いた「宇宙戦争」と、憎しみと殺意とに満たされた虚しい死の報復を描いた「ミュンヘン」のルーツをたどるとき、それはまっすぐに「シンドラーのリスト」に繋がっていることを思えば、スピルバーグが最早、彼女が大好きだったあの愛と冒険を夢見るように語っていた少年の心を持った映画監督などではなくなり掛けていることに薄々気づき始めているのかもしれませんね。

(05パラマウント=ドリームワークス)監督:スティーブン・スピルバーグ、製作:キャスリーン・ケネディ、コリン・ウィルソン、製作総指揮:パウラ・ワグナー、原作小説:H・G・ウェルズWAR OF THE WORLDS、脚本:ジョシュ・フリードマン、デヴィッド・コープ、撮影:ヤヌス・カミンスキー、編集:マイケル・カーン、音楽:ジョン・ウィリアムス、衣装デザイン:ジョアンナ・ジョンストン、視覚効果スーパーバイザー:デニス・ミューレン、パブロ・ヘルマン、アニメーションスーパーバイザー:ランディ・M・ダトラ(ILM)、視覚効果プロデューサー:サンドラ・スコット(ILM)、SFX:インダストリアル・ライト&マジック、コンセプトデザイン:ダグ・チャン、アイス・ブリンク・スタジオ、ライブアクション「トライポッド」効果:スタン・ウインストン・スタジオ、フェイクボディ制作:スティーブ・ジョンソン、特殊メイク効果:ハーロウ・エフェクツ社
出演・トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ジャスティン・チャトウィン、ミランダ・オットー、ティム・ロビンス、リック・ゴンザレス、ユル・ヴァスケス、レニー・ヴェニート、モーガン・フリーマン(ナレーター)
上映時間:114分/テクニカラー/ドルビーデジタル/DTS/SDDS
by sentence2307 | 2006-12-31 21:42 | スピルバーグ | Comments(10)