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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:根岸東一郎( 1 )

加賀見山 

根岸東一郎監督は、マキノプロに俳優として入社したのちに監督に転じ、1930年から1936年までの間、量産監督として年間十数本のペースで撮りまくりました。

この「加賀見山」は、その内の1本ですが、この同じ年に撮られた「ごろんぼ街」という作品を最後に、根岸監督の記録はことごとく映画史から途絶え消息をたどることができない、と年譜には記されています。

この作品は、加賀百万石の相続問題を背景に、女同士の対決で知られる芝居「加賀見山旧錦絵」の映画化で、いわば、女優の顔見世映画という要素の強い作品と言えます。

藩の忠臣・佐上兵庫と中老の尾上(松浦築枝)は桜姫を後継ぎにしようと画策しますが、それを妨害しようと大槻伝右衛門と局の岩藤(原駒子)は楓姫を擁立して、藩の実権を握ろうとします。

尾上は度重なる岩藤の仕打ちに耐えられず自害を選ぶというストーリーです。

不完全版ですが、結末の女ばかりの乱闘シーンは残されており、特に悪役岩藤と尾上の敵討ちを誓ったお初(マキノ智子)との闘いが見所になっています。

岩藤を演じた原駒子は、当時「女来也」や「天人お駒」などに主演し、その頃妖婦女優として名を成していた酒井米子、鈴木澄子、伏見直江らに比べても少しもひけをとらない第一級の妖婦女優として評価を得ていました。

そういえば、実際、手元にある「新版大岡政談」のスチール写真の伏見直江は、三白眼でじっと正面を睨み据える鬼気迫る形相の物凄いド迫力です。

ほかに「続大岡政談・魔像」や「御誂次郎吉格子」など伊藤大輔監督との作品に傑出した名演が多いといわれている伏見直江に立派に伍していたというのですから、原駒子もなかなかの女優だったんだろうなと思います。

そして男優ではなんといっても、怪優團徳麿を挙げないわけにはいきません。

竹中労の労作「日本映画縦断2異端の映像」所収の聞き書きルポ怪優ダントク一代記で初めて團徳麿のことを知ったのですが、
《本書は、「和製ロン・チャニー」、「百化け」と謳われ、日本映画の傍流に怪奇スターとして一時代を築きながら、傍流ゆえに黙殺され、初代丹下左膳役者としての栄誉まで大河内傳次郎に持っていかれたまま、寺男として隠棲していたこの怪優を掘り起こした竹中の手柄(孫引きです)》といわれました。
そして
《團徳麿のケレン、邪道と呼ばれるまでにメイクアップに淫したその変身振りは、まさに壮観。
不審尋問にあたった巡査をして「嘘つけ! なにが團徳麿じゃ。あれはせむしじゃ(原文ママ)」と言わしめた素顔なき百化け役者の迫力は、凡百の言辞をはるかに凌駕する。》
のだそうです。

(1936マキノ・トーキー製作所) 監督・根岸東一郎、原作・立春大吉、脚本・玉江竜二、撮影・大森伊八、西本良生。
出演・原駒子、松浦築枝、マキノ智子、浅野進二郎、葉山純之輔、光岡龍三郎、團徳麿、マキノ博子、達美洋子、宮古世里江、大内照子、里見良子、一條桂子、川島圓子、池澤笑子、吉田禮子。
(51分・35mm・白黒・不完全)
by sentence2307 | 2007-01-26 23:56 | 根岸東一郎 | Comments(5)