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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:アルネ・マットソン( 1 )

沈黙の歓び

小学生の頃から映画が大好きで、暇があると手当たり次第に映画は観てきました。

洋画も邦画も大人が連れて行ってくれたので、封切でかなりの作品を見ることができました。

子供へのサービスで連れて行ってくれるときは、東宝の宇宙戦争と相場が決まっていたのですが、大人たちが猛烈に忙しかったその時代、家族で映画館へ行くなんてことはほんの数回しかありませんでした。

だいたいは、ご近所の妙齢の女性の護衛に(当時の映画館の混雑ぶりは物凄いものがありましたから、ケシカラン痴漢もいたのでしょう)、東映映画や日活映画ばかりですが、頻繁に連れていってもらいました。

そのとき、松竹作品や大映作品をあまり見ていないのは、想像ですが、松竹の「高尚さ」、大映の「どぎつさ」のイメージが、そのお姉さんの敬遠した理由かと考えられます。

いま思えば、静謐な小津調とエネルギッシュな増村のイメージを、ともに敬遠し(新東宝作品は、すでに論外でした)、ひたすら中村錦之助と石原裕次郎を愛した当時の平均的なそのお嬢さんの可愛らしさは、思い出すだすだけで微笑ましく優しい気持ちにさせてくれます。

あのお姉さん、いまでも元気にしているでしょうか、遠い甘美な思いに誘われながら、きっとこれが郷愁というものなんだろうなあなどと考えています。

やがて、見る本数がどんどん多くなるにつれて、面白かった作品の題名を少しずつメモするようになりました。

その習慣はいまでもずっと続いていますが、少し経ってそのメモを眺め返すと、羅列された名作群の中に、どこにも資料が存在しないようなマイナーな作品が時々紛れ込んでいたりします。

そのひとつに、「沈黙の歓び」という作品がありました。

孤独な青年が次第に狂気に囚われていくという、闇の中をのた打ち回るようなドストエフスキー的な作品だったことを覚えています。

印象としては、ポランスキーの「反撥」に近いものがあったような気がします。

しかし、必死に探したのですが、その作品「沈黙の歓び」の情報は、どこにも存在していません。

その「存在しない」ということが10年ほど前から気になって、図書館に行ったときなど、映画作品の名作ガイドブックを手当たり次第に繰って探したのですが、やはり、そんな作品はどこにも収録されていませんでした。

かつて自分が感動した映画であることだけは確かなのですが、こう見つからないのでは、やはり自分の記憶違いか、もしかしたらそんな作品など、もともと存在しなかったのではないかとだんだん自信がなくなってきました。

そして、ここ暫くそのことを忘れていた昨夜、パソコンの前に座った時にたまたま思い出したので、あまり期待もせずに「沈黙の歓び」と入力をしてみました。

そしたらなんと3件もヒットしたではないですか。

gooとyahoo!の映画検索にちゃんと載っていました。

10年来の胸の痞えが一挙に氷解しました。

それは、1962年のスウェーデン映画で、63年度スウェーデン・フィルム・アカデミーの最高演技賞を獲得した作品だそうです。

そうですか、作品の身元がはっきりしただけで十分です。

少年の頃の自分の「感動」は、確かにちゃんと存在していたのですから、中途半端だった気持ちの落ち着き場所がしっかりと定まり、安らぎを得ることができただけでも大満足です。

そうですか、そうですか。これは嬉しい。

嬉しさついでに、心覚えのためにストーリーなどを書き留めさせてください。

アシカラズ

【ストーリー】
若い男(ペール・オスカルソン)は百貨店の夜警である。
彼は毎夜、空虚な店内に投げ出されてあるマネキン人形の群を見ているうちに、いつしかその中のひとつに烈しい恋をした。
彼には生身の女性よりもマネキン人形の方がはるかに美しく理想的に見えた。
そしてついにある夜、彼はその人形を盗み出し、自分のアパートの部屋へ持ちこんだ。
一瞬にして殺風景な男の部屋に花が咲いたようになった。
彼はその人形を狂おしく愛撫した。
そして沈黙の支配する中で彼は生れて初めて愛する歓びを知った。
ある夜、固く動かなかったマネキン人形(ジオ・ペトレ)が彼の愛撫に応えた。
アパートの住人たちは彼の不可解な様子をいぶかった。
ひとりの荒くれ男は、好奇心をおさえかねて、夜警の部屋におしいった。
男がベッドの中に見たのは冷たい石のマネキン人形だった。
仕事から帰ってきた夜警は皆から笑われ、その上人形をぶちこわされてしまった。
愛人をこわされ、夢を破られた男は怒り狂い拳銃でその男を殺そうとしたが、失敗した。
夜警の部屋には、手も足も胴もバラバラになったマネキン人形が散らばっていた。
だが暗い片隅にころがっている首だけが、ニコッとほほ笑み、夜警の愛撫を求めていた。

(1962フローラフィルム(スウェーデン))監督:アルネ・マットソン、製作:ローレンス・マルステット、原作脚色:ラース・フォルセル、脚色エヴァ・ゼーベルグ、撮影:アーケ・ダルクビスト、編集:インゲマル・イヴ、音楽:ウーリック・ノイマン
出演・ペール・オスカルソン、ジオ・ペトレ、トール・イセダル、エルザ・プラヴィッツ、ベングト・エクルンド、マロウ、ミミ・ネルソン、リック・エクスバーグ、ダグマール・オルソン
原題:VAXDOCKAN アメリカ公開版題名:THE DOLL 製作年:1962年 スウェーデン劇場公開:1962年7月30日 アメリカ劇場公開:1964年1月13日 日本劇場公開:1966年12月 上映時間:96分/モノクロ/モノラル 配給:NIC
by sentence2307 | 2008-06-07 12:31 | アルネ・マットソン | Comments(108)