世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

カテゴリ:リチャード・リンクレイター( 1 )

この作品が、映画批評家や観客に大きな衝撃を与え高く評価された理由は、ある家族の12年間を描くにあたって、すべての俳優を実際と同じ12年間という「時の経過」の中に晒しながら、そのままドラマを進行させて撮った斬新さにあったからだと思います。

もちろん、いままでの映画の「時間の経過」を表現する技法といえば、「子役を使い、やがて青年の演者に交代させて」成長の姿を見せるとか、若い俳優に「老けメイク」をほどこすとか、あるいは字幕による「時間とばし」やCGを駆使するといったことが常識だったわけですから、長大な時間のなかで実際に成長したり老いたりする姿をその都度ドラマの中に織り込みながら撮るなどということは、ある意味、根源的なカルチャーショックみたいなものを含んでいて、その辺が多くの観客や批評家に評価されたのだと思います。

映画製作には莫大な金がかかる映画経済の面からいえば、各界から資金を集めて製作し、できるだけ早く興行をうって資金の回収をはかりたいという産業システムからいえば、映画の「製作期限」に余分な時間など与えられないというのが資金提供者からの喫緊の要請なのであって、それを考えれば、この「12年間」という空費は、どう考えても常識外れで、まずは「有り得ない」衝撃だったのかもしれません。

まさに、フェリーニ作品やヴェンダース作品にも、その辺の切迫・焦慮した裏話を描いた映画がありましたよね。

しかし、この作品の「衝撃」がどの程度のものだったかというと、一本の映画を12年間にわたり、すべて同一スタッフ・キャストで撮るという、その超アナログ的な考え方に対してよりも、まずは、その「期間」の不安定な悠長さ(例えば、その12年の間、はたして演出者は、演出の意図を同じレベル・同じテンションで保つことができただろうかなど)に対してだったでしょう。

すべて同一スタッフ・キャストを12年間コウソクするというのは、人事的に大きなリスクがあるわけですし(生死も含めてです)、演出者の忍耐とか、厳しい経済条件など、そのどれもが映画制作的な「時間の観念」という常識枠から大きく逸脱する考え方なので、その意味でちょっと考えられない「期間」への驚きだったのですが、しかし、ノンフックションの製作では別に珍しいケースでもないらしいので、その意味からすれば、この映画に携わった関係者の考え方に「軽く驚いた」くらいが、まあ適当だったかもしれません。

むしろ、もっと「大きな衝撃」は何だったかといえば、冒頭、草原に寝転びながら、真っ青な空に浮かぶ白い雲を夢見るように微笑して眺めていた愛くるしい少年メイソン(6歳)が、ラストの方では、いかにも扱いにくそうな、むさくるしい髭モジャの気難しげな青年に変貌していることにあるのだと、多くのメディアやサイトにもそのように書いてありました。

僕たちの日常には、確かに時間の境目なんか、どこにも記されているわけではありませんし、実際急に老け込むなんてことも滅多にあることではなく、普段の生活で実感することなどもないので、まあ、あるとすれば、久しぶりに会った親戚のおばさんに「あんたもずいぶん老けたわね」などと嫌味ったらしく言われるくらいで(カゲで僕のことを「若年寄」と言いふらしていたことは知っていました)、思わずカッとしながらも、改めて「時の経過」を苦々しく実感するのがせいぜいです。

その意味では、この作品は目からウロコ的に「映画の嘘」を教えてくれた画期的な作品といえるのかもしれませんが、しかし、僕的には、正直いうと「教えてくれなくとも、よかったかなあ」という感じをもってしまいました。

「時間の経過」を表現する「子役」や「演者の交代」や「老けメイク」や「字幕による時間とばし」などは、創成期から映画が持っていた愛すべき技術であり(それを「嘘」といってしまえば、「映画」芸術の単なる否定にすぎません)、もちろん「長所」なのであって、この映画のように、その辺をそれほど責め立てることにどんな意味があるのか疑問です。

それに、たった一本の映画の中で、どこの誰とも分からない外国人俳優の「12年間」を追体験できたからといって、それほど感動すべきことだともトウテイ思えませんでした。

などなどと考えながら、別の意識の部分で、最近亡くなった原節子の幾本かの映画を、ぼんやりと思い返していました。

この映画でいわんとしていることなど、自分などはアタマの中でとっくの昔に実行してるワイ、少女だった頃から、壮年に至るまでの原節子の映画群をいままで繰り返し何度も見てきた自分にとって、「時間の経過」など、なにも「一本の映画」である必要など、どこにもないわけで。

この作品風にいえば、「自分は、いつまでも、草原に寝転びながら、真っ青な空に浮かぶ白い雲を、夢見るように微笑して眺めていた愛くるしい少年メイソンのままでありつづけたい」と思うばかりです、少なくともあの・・・いやいや、やめておきましょう、この作品でいっているように、そんなことはトウテイ不可能ことと大いに分かっていますから。

(2014)監督脚本製作・リチャード・リンクレイター 、製作・キャサリン・サザーランド、ジョン・スロス、ジョナサン・セリング 、撮影・リー・ダニエル、シェーン・ケリー、編集・サンドラ・エイデアー
出演・エラー・コルトレーン(メイソン・エヴァンス・ジュニア、主人公)、パトリシア・アークエット(オリヴィア・エヴァンス、メイソンの母親)、ローレライ・リンクレイター(サマンサ・エヴァンス、メイソンの姉)、イーサン・ホーク(メイソン・エヴァンス・シニア、メイソンの父親)、リビー・ヴィラーリ(キャサリン、オリヴィアの母親)、マルコ・ペレッラ(ビル・ウェルブロック、オリヴィアの二番目の夫)、ジェイミー・ハワード(ミンディ・ウェルブロック、ビルの娘)、アンドリュー・ヴィジャレアル(ランディ・ウェルブロック、ビルの息子)、ブラッド・ホーキンス(ジム、オリヴィアの三番目の夫)、ジェニー・トゥーリー(アニー、メイソン・シニアの後妻)、リチャード・アンドリュー・ジョーンズ(アニーの父親)、カレン・ジョーンズ(アニーの母親)、ビル・ワイズ(スティーヴ・エヴァンス、メイソン・シニアの兄弟)、ゾーイ・グラハム(シェーナ、メイソンの彼女)、チャーリー・セクストン(ジミー、メイソン・シニアの友人、ルームメイト)、リチャード・ロビショー(メイソンの上司)、スティーヴン・チェスター・プリンス(テッド、オリヴィアの彼氏)、トム・マクテイグ(ミスター・ターリントン、メイソンの写真の先生)、マクシミリアン・マクナマラ(ダルトン、メイソンのルームメイト)、テイラー・ウィーヴァー(バーブ、ダルトンの彼女)、ジェシー・メクラー(ニコル、バーブのルームメイト)、バーバラ・チザム(キャロル、オリヴィアの友人)、キャシディ・ジョンソン(アビーキャロルの娘)、ウィル・ハリス(サマンサの彼氏)、アンドレア・チェン(サマンサのルームメイト)

2014第64回ベルリン国際映画祭 監督賞受賞、Prize of the Guild of German Art House Cinemas 受賞、Reader Jury of the Berliner Morgenpost 受賞、金熊賞ノミネート、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭 Louis Black Lone Star Award 受賞、Special Jury Recognition 受賞、サンフランシスコ国際映画祭 Founder's Directing Award 受賞、シアトル国際映画祭最優秀作品賞受賞、最優秀監督賞受賞、最優秀女優賞受賞、国際映画批評家連盟賞グランプリ受賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞作品賞ノミネート、男優賞ノミネート、女優賞ノミネート、ブレイクスルー演技賞ノミネート、観客賞受賞、ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、助演女優賞受賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、主演女優賞受賞、英国インディペンデント映画賞外国映画賞受賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞2014作品賞トップ10受賞、ボストン映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、アンサンブル・キャスト賞受賞、脚本賞受賞、編集賞受賞、カンザスシティ映画批評家協会賞監督賞受賞、助演女優賞受賞、サンフランシスコ映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、助演女優賞受賞、編集賞受賞、助演男優賞ノミネート、オリジナル脚本賞ノミネート、ダブリン映画批評家協会賞作品賞 受賞、監督賞受賞、トロント映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、助演女優賞受賞、脚本賞次点、2015ノーステキサス映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、助演女優賞受賞、ゴールデングローブ賞作品賞 (ドラマ部門) 受賞、監督賞受賞、助演男優賞ノミネート、助演女優賞受賞、脚本賞ノミネート、放送映画批評家協会賞作品賞受賞、監督賞受賞、助演女優賞受賞、毎日映画コンクール外国映画ベストワン賞受賞、おおさかシネマフェスティバル2014年度ベストテン外国映画(作品賞)1位、アメリカ映画編集者協会エディ賞 最優秀作品賞(ドラマ部門)受賞、サテライト賞作品賞ノミネート、監督賞受賞、助演男優賞ノミネート、助演女優賞受賞、脚本賞ノミネート、編集賞ノミネート、主題歌賞ノミネート、インディペンデント・スピリット賞作品賞ノミネート、監督賞受賞、助演男優賞ノミネート、助演女優賞受賞、編集賞ノミネート、アカデミー賞作品賞ノミネート、監督賞ノミネート、助演男優賞ノミネート、助演女優賞受賞、脚本賞ノミネート、編集賞ノミネート
[PR]
by sentence2307 | 2016-03-14 13:12 | リチャード・リンクレイター | Comments(0)