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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:グリフィス( 1 )

国民の創生

1915年に製作されたグリフィスのこの作品が、映像処理の基本的技法(フラッシュ・バックによる映画的時間の処理とか、クロス・アップや超ロングによるモッブ・シーンの使い分け、様々な形のマスキングの使用、ふたつの場面進行を交互に見せるクロス・カッティングなど)を確立した作品といわれるだけに、その優れた映画話法の完成度の高さと饒舌とにより、いま見ても左程語り口の古さを感じることなく鑑賞できるので、逆に、そこで描かれている強烈な人種的偏見も一層生々しく感じてしまうのかもしれません。

この作品は、南北に分かれて戦った二つの家族の若者同士が、南北の和解を象徴するかのように結ばれ結婚するというのが主要な話しの部分なのですが、それとは別に、北軍の勝利により、解放された黒人たちの凶悪な暴動に対処するために、自衛のため仕方なくKKKが組織されたという理由付けもなされています。

結成のタテマエは、自由の身となった黒人たちが白人に対し激しい憎悪をもって対抗し、その脅威に、やむを得ず白衣覆面のKKK団が暴徒と化した黒人に制裁を加えるためと説明されています。

実際に南軍の大佐だったという父親をもったグリフィスが、南軍的雰囲気の環境の中で育まれたに違いないこの暴力的な白人優越主義の人種偏見を、ごく日常的な常識として身につけていたことに驚くと共に、それを抵抗なく受け入れていた社会にも脅威さえ感じます。

そこには黒人を奴隷として虐待していた記憶に根ざす白人の根深い恐怖感が当然あったでしょうが、一方黒人自身のなかにも階級化された選民意識のようなもの(自分だけは特別白人に近いというような一種の優越感のようなもの)を持っていたらしいのです。

例えば1930年代のある黒人劇場では、冷酷で無知で野蛮なステレオタイプの堕落した黒人が、金髪の美女に襲い掛かろうとしている描写とのクロス・カットで、その黒人を制裁するために馬で駆けつけるKKK団の描写の場面が大写しになった時、黒人の観客が抗議どころか、KKKへ熱狂して喝采を送っていたという当時の新聞記事が紹介されており、黒人の中にもそれぞれ階層があって、ある選民意識を持った者の存在もあったことが窺われます。

しかし、これとても形を変えた「奴隷根性」でしかなく、黒人たちの隷従に甘んじた精神の打撃がいかに深刻なものであったかを示唆したエピソードだと思いました。
by sentence2307 | 2004-11-06 08:06 | グリフィス | Comments(0)