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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:廣木隆一( 1 )

この映画「彼女の人生は間違いじゃない」を見てから、もうかなりの時間が経ちました。

見た直後、自分は、主人公の「みゆき」が、なぜデリヘル嬢にならなければならなかったのか、その「唐突さ」がどうしても理解できず(というか、消化できずに)そのことばかりが気になり、結局、自分が納得できるだけの結論を得られないまま、ついに「棚上げ状態」で、ほかの多くの作品を見重ねていくうちに(事実、身動きが取れずに、そういう「逃げ」しか選べなかったわけですが)、取り紛れていつの間にかこの作品のことも、そしてそのとき抱いた疑問のこともすっかり忘れてしまいました。

しかし、あるときふっと、その「なぜ彼女はデリヘル嬢になったのか」は、この作品にとって、作品の根幹にかかわるほどの重要なことではないと、なんの脈絡もなく突然思いあたりました。

この作品において「風俗」というものが、あまりに突飛で唐突だったから(イメージとしては鮮烈です)、見せ球を目で追ってしまう感じで、思わず「なぜだ?」とリアクションしてしまいましたが、本当は、ここで問題としなければならないことは、「彼女が自分自身を傷つけ罰せずにはいられなかったほどの」贖罪感のほうにあるのであって、特定の「風俗」ではなく、「自分を傷つけ破滅させることができさえすれば、風俗でもなんでもよかった」のだと気がついたのでした。

問題は、「贖罪感」の中身でなければならなかったはずです。

自分が、この映画に描かれている「風俗に走る少女」の意味を、理解もイメージも持てず、しかし、理解できないながらも、もうひと粘りして思考し続けられなかったのは、きっと、みゆきの持った「贖罪感」にリアルを感じることが出来なかったからだと思います。

震災に遭い、そして5年の歳月が経過しても、なお寒々しい仮設住宅で暮らさなければならない過酷な境遇にある一家と、その娘が、たとえ生活が苦しいからと言って、その延長線上に「風俗」に思い至るだろうかと考えたとき、即「あり得ない」という思いが、自分に「突飛」とか「唐突」とかを感じさせた理由だったと思います。その隔たりを埋めるためには、映像的には相当の説明が必要とされたはずです。

ここでは、みゆきの自分を罰せずにはおられないほどの喪失感と「罪の意識」の深刻さは十分に描かれており理解できましたが、娘をそのような思いにさせた母親がいったいどういう人物だったのか、みゆきが深く後悔しなければならないような、なにか重大な仕打ちを母親に行い、そのことで母親を死なせてしまって、その罪の意識にさいなまれて自分をとことん罰せずにはおられない、死んでも詫び足りないくらいの、この深刻な描き方は尋常ではありません。

それにひきかえ、一方の母親の描き方の淡白どころか、なにひとつ説明のない、いわゆる「優しいお母さん」くらいのお座なりなイメージに寄りかかるようにしか描かれていないそのアンバランスが、ぼくたちに深い違和感を抱かせたのだと思います。

ステレオタイプの母親のイメージを描くなら、もう一方で、「なにもあなたが悪いわけじゃない、そんなふうに思っちゃダメよ、お母さんはいつもあなたたちのことを天国から見守っているからね」の方だってリアルを持たせるためにバランス的に付け加えたってよさそうなものと感じました。

なにしろ高良健吾演じる三浦秀明をあれほどの善人として描くのなら、肉親である母親のほうこそ、さらに「もっと善人」に描くべきと思いました。

ラストで風俗の世界からミゴト堅気の一般人へと転身をみせる三浦に対するみゆきの無防備な微笑に対して、ネットの書き込みに、みゆきを演じた瀧内公美の演技について、「シーンが変わるたびに、まるで別人のように見えた」という投稿を読みました。

これを演技に対する「絶賛」と見るか、最後まで役をつかみ切れなかった「迷い」と見るかは、たぶん意見の分かれるところかもしれません。

(2017)監督・廣木隆一、脚本・加藤正人、原作・廣木隆一『彼女の人生は間違いじゃない』 (河出書房新社)、脚本・加藤正人、主題歌・meg「時の雨」(作詞:lili-an/作編曲:山崎泰之)、提供・ギャンビット、ギャガ、配給・ギャガ、製作プロダクション・ダブル・フィールド、アルチンボルド、ザフール、製作・「彼女の人生は間違いじゃない」製作委員会(ギャンビット、ギャガ)
出演・瀧内公美(金沢みゆき)、光石研(金沢修)、高良健吾(三浦秀明)、柄本時生(新田勇人)、篠原篤(山本健太)、蓮佛美沙子(山崎沙緒里)、戸田昌宏、安藤玉恵、波岡一喜、麿赤児、小篠恵奈、毎熊克哉、趣里、
2017年7月15日 上映時間119分

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by sentence2307 | 2018-10-09 19:37 | 廣木隆一 | Comments(0)