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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:北野武( 4 )

TAKESHIS’

かつてゴダールやベルイマンなど超難解な作品を見たとき、よくこんな思いを持ったことがありました。

たとえば、映画のなかの設定で、何十年も平穏に暮らしてきた夫婦が、何かのきっかけで、お互いに対し抑え続けてきた鬱屈した憎しみが突然噴出し、相手に対する怒りを猛烈かつ一気にぶつけ合う凄まじいシーンがあるとしますね。

妻が夫に、呻くようにして長年蓄積してきた悲憤を鬱々と搾り出すのに応えて、夫が妻に積年の憎しみを浴びせかけるという、その怒りと罵りの応酬が際限もなく延々と展開されるシーンに出会ったときなど、僕たちは、その諍いの細部にわたる内容を忠実に辿ることが、果たしてその作品を理解するうえにおいて本当に意味のあることなのかどうか、訝しく感じてしまうことがあったりします。

長年、暮らしを共にしてきた過程で、そこで交わされたに違いない数々の悪意に満ちた嘘や密かな背信行為など、そうした相手の裏切りに幾たびも傷つきながら自分はこんなにも耐え続けてきたのだという悲しみに直結する怒り(こんな相手のために空費した人生への悔恨と傷つけられた自尊心)が憎しみをバネとして繰り返し執拗に相手にぶつけられるとき、意思の疎通を失い、行き違う空疎な言葉のひとつひとつを、あえて「理解」しようとすることに、なんの意味があるのかという思いに囚われてしまうのです。

きっと、そのシーンで感じ取ればいいのは、言葉の端端で語られているコト細かな「誰がどうした」という説明的な部分ではなく、相手の裏切りを罵倒する怒声の響き、蔑ろにされたことで傷ついた「相手への思い」と「ずたずたにされた自尊心」への悔しさと悲憤に打ち震える声音、そして自分の気持ちが伝わらないことの苛立ちと孤独など、それ以上のものがあるとは思えません。

ですので、僕はこんなふうに考えてみました。

この「TAKESHIS'」の幾重にも錯綜する物語を追って迷宮を彷徨うよりもむしろ、物語を追うことを放棄し、「錯綜」のなかに身を委ねたときに、きっとこのタケシ映画の本質が見えてくるのではないかと。

「TAKESHIS'」の目指すものが、ゴダールやベルイマン作品と同じ地平で語り得るだけの視座を持っている作品であるかどうかはともかく、もしここに拳銃があれば周囲の人間を悉く皆殺しにしてしまいたくなるような怒りの衝動を抱え持つこの作品の、この衝動の在り処を知ることは、死に場所を失い、いまや余生を生きているだけのような「タケシ」を知る上で、決して意味のないことではないような気がします。

北野武がここ数年撮り続けてきた諸作品は、殺意にまで昇華してしまう世間に対する根深い憎しみと炸裂する怒りが描かれている一方で、一貫して彼の自殺衝動(その実態は、僕には「願望」ではなく「恐怖」であるように思います)が同じテンションで描かれていることを見過ごしにするわけにはいきません。

この映画を「ふたりのロッテ」や「影武者」と同じような虚構として見るにはその殺気はただごとではなく、生きている実感の持てない空虚な「現在」から振り返る怒りと苛立ちの苦渋の中で生きた「過去」を、まるで「未来」を描くように描かきながら、しかし、そのいずれも、もはや既に「失われたもの」でしかないことに、ある種の痛ましさとを感じずにいられませんでした。

自分で死ぬことができなければ、誰かに殺してもらうしかない、みたいに描かれるこの「TAKESHIS'」は、まさに「廃馬たる自らを自らが撃つ」という映画なのかもしれませんね。

(05松竹・オフィス北野)監督・脚本・編集:北野武、撮影:柳島克己、照明:高屋 齋、美術:磯田典宏、録音・整音:堀内戦治、編集:太田義則、助監督:松川嵩史、スクリプター:吉田久美子、キャスティング:吉川威史、製作担当:森 賢正、音響効果:柴崎憲治、ライン・プロデューサー:小宮慎二、プロデューサー:森 昌行・吉田多喜男、音楽プロデューサー:野田美佐子、音楽:NAGI、サウンドトラック:TOSHIBA-EMI LIMITED
製作:バンダイビジュアル・TOKYO FM・電通・テレビ朝日/オフィス北野
出演:ビートたけし、北野武、京野ことみ、岸本加世子、大杉漣、寺島進、渡辺哲、美輪明宏、六平直政、上田耕一、武重勉、ビートきよし、高木淳也、木村彰吾、津田寛治、芦川誠、THE STRiPES、石橋保、松村邦洋、國本鍾建、内山信二、TOSHI、DJ HANGER
by sentence2307 | 2006-09-03 16:05 | 北野武 | Comments(0)

たけしメモ Ⅱ 海編


【こんな人は「海の若大将」になれない!】
*家から海が異常に遠い。
*陽射しに弱い。
*外国の警備艇に撃たれたことがある。
*水に弱い。

【沖縄の海でこんな光景はイヤだ!!】
*ペットにハブを連れてきている。
*海パンを交替ではく。
*昼寝して、はみ出している。
*首まで砂で埋められても立っているのが分かる。
*チャイナドレスで泳いでいる。
*貝とヒモで作った水着である。
*ケツの穴を「イソギンチャクだ」と言い張っている親父がいる。
*海に向かって「オヤジを返せ」と叫んでいる。
*学生服を着て座っているヤツがいる。
*自衛隊が機雷を回収している。
*死んでいるのに相手にされない。
*皮膚病を治そうとしている。
*海に骨をまいている。

【こんなサーファーはイヤだ!!】
*塩水に弱い。
*浮き輪を離さない。
*理屈っぽい。
*足がボードよりデカい。
*「ポックリ」を履いている。
*いつも立っている。
*カツラである。
*準備体操が異常に長い。
*潜水服を着ている。
*塩水につかると体が縮む。
*波に名前をつけている。
*すぐに友達になって金を借りようとする。
*ふだんはアワビを採っている。

【こんなサーフボードは困る!!】
*サメが噛んだ跡がある。
*鼻緒が付いている。
*ふたつに分かれる。
*空気でふくらます。
*お経が書いてある。
*お線香が刺さっている。。
*沈む。
*野菜をのせて売りに来る。
*横にしか進まない。
*全く進まない。
*盗品。
*ハンドルがついている。
*船にひいてもらう。
*ウンコが付いていて裸足で乗れない。
*「笹カマボコ」と書いてある。

番外編【こんな人は牧場にお嫁に行けない!】
*インディアンが攻めてくると思っている。
*馬の種付けだけが見たかった。
*牛と馬の区別がつかない。
*馬糞と肥料の区別がつかない。
*動物愛護の団体に入っている。

番外編【こんなボディービルダーはイヤだ!!】
*頬がたるんでいる。
*顔が面白い。
*「坊ちゃん刈り」である。
*胴より首が太い。
*肌を見せたがらない。
*ポーズのかたちを知らない。
*仲間に泥棒がいて、おちおちポーズをとれない。
*背が異常に低い。
*歯ぐきの筋肉も鍛えている。
*体に不吉な斑点が出ている。
*元捕虜である。
*お灸の後が多い。
*寝たきりである。
by sentence2307 | 2006-07-24 23:51 | 北野武 | Comments(1)

たけしメモ

天気もぐずついているので、折角の日曜日ですが、今日は外出をやめて、一日中部屋の掃除でもしようと思い立ちました。

まずはじめは読み散らかした本の整理からです。

これから手をつけないことには、なにも始められません。

とにかく場所ふさぎなので、不要な本や小冊子類はひと括りにして図書館のリサイクル棚に持っていく積りです。

床に散らばった本をそのまま積み上げていくだけでも随分整理できたように見えるものですよね。

一冊一冊取り出しては「これは不要」・「これはもう少し」と選り分けていきます。

そんな中に珍しい本を見つけました。

「たけしメモ」です。

確か日曜日の8時に日本テレビでやっていた「天才たけしの元気が出るテレビ」を書籍化したもので、パラパラとめくって拾い読みしていくだけで、あの頃のことをだんだん思い出して、腹を抱えて笑ってしまいました。

例えば、こんな感じです。

【これが時代劇の悪役だ!】
*必ずスケベである。
*殺されると、必ず池に落ちたり、障子を破ったりする。
*拳銃を持っていると、必ず手を撃たれる。
*他の奴は殺すが、主人公だけは殺さず、自分の罪を長々と語る。
*顔を見て分からないのに、イレズミを見て分かってしまう。
*必ずカメラに近づいて死ぬ。
*一回ターンしてから死ぬ。
*斬っても斬っても死なない。
*ヤクザの役を本物がやっている。
*一度斬られていなくなってから、帽子を被って出直す。
*初めて台詞を貰い、徹夜で練習したら声が出なくなった。
*どうしても本気で闘ってしまう。
*主役を本名で呼んでしまう。
*悪役なのに十手で闘っている。
*「御用だ」と叫んでいるのにピストルを持っている。
*「御用」のちょうちんの中に「おでん」がいる。
*セットの長屋に家族が住んでいる。
*常に主役にぴったりくっついている。
*掛け持ちしすぎて自分の役がわからない。

【こんな人は悪人になりきれない!】
*妙に色白である。
*おちょぼ口である。
*髭が薄い。
*ほっぺが赤い。
*声が甲高い。
*絵が好き。
*肉・魚がまったく駄目である。
*名前が「一郎」である。
*やけに姿勢がいい。
*目が常に笑っている。
*エクボがある。
*八重歯がある。
*妙に人なつっこい顔である。
*睫毛がやけに長い。
*襟足がかわいい。
*たまに血を吐く。


まあ、こんな本を読み耽っていたら、掃除はまた来週になると思います。
by sentence2307 | 2006-07-23 21:13 | 北野武 | Comments(86)

キッズ・リターン

この作品、「挫折しても,諦めずに、またイチから頑張ればいいじゃん」みたいな結論の映画なわけ? 

そんなふうには、どうしても思えないけどね。

マサルの行動は単純に納得できるよね。

ボクサーにのされた復讐のためにボクシングを始めたものの、スパーリングでシンジに殴り倒されたことでヤクザになり(シンジを恨んだかな?)、やがて自分を拾ってくれた若頭の仇を取ると息巻いて組長を毒づいたために半殺しの目に遭う。

彼が信じていたものは、いつもストレートな暴力への憧れなのに、逆にいつも管理された「暴力」そのものに裏切られてしまう。

それに引き換えシンジの方は、もう少し複雑かもしれないね。

ボクシングを始めて、自分には人を簡単に殴り倒せる優れた才能があるらしいと気づき、少し嬉しくなるけど(その代償に孤独の苦さも知る)、彼は決してボクシングに誇りを持ったり神聖化したわけじゃない。

ジムから強い選手を出すことしか考えていない会長が、試合のための体重管理の節制を口うるさく言う度に白けてゆくシンジが、何故ジムの先輩ハヤシに惹かれていったのか分かる気がする。

ハヤシは、有望な新人の足を引っ張る小ずるい落ち目のボクサーとして描かれていて、こういう得体の知れない悪魔的な人物をさりげなく要所に配するあたりがタケシ演出の老獪なところだけど、彼は単なる悪役じゃなく、彼なりにちゃんした自己主張をしてるんだ。

シンジは、彼の悪魔的な囁きに耳を傾け、こっそり教わる反則テクニックや体重管理の裏ワザを、過度な節制を強いる会長への当て付けのように受け入れていくけど、なぜ、約束された栄達を選ばずに、ハヤシに近付いていったのか考えてみたんだ、ひとつには、選手を駆り立て、チャンピオンを出してジムを大きくしたいという会長の身勝手な夢のために管理され犠牲を強いられることへの反抗もあるだろうけど、やはり、シンジは、ハヤシのような生き方を本質的なところで受け入れることができたんだと思う。

マサルやシンジやハヤシたちは、いつのときも決して頑張らなかったという意味でね。

「頑張る」という観念から、彼らは最も遠くにいたんだ。

ボクシングをしてた時も、ヤクザの世界で凄んでた時も、彼らは、学校にいた時と同じように、少なくとも「頑張る」ことだけはしなかったと思う。

彼らにとって「頑張らない」ことが、管理されることに対するひとつの抵抗だったからだよね。
学校でさんざん管理され、うんざりして自由を求めて入っていったはずのボクシングやヤクザの世界でも、しかし実際は、どこも更にシビアでダーティな管理社会だったわけ。

ラストで、学校の校庭で吐かれる「ばかやろう、まだなんにも始まっちゃいないぜ」という言葉には、管理されることを拒み、そして彼らがいつの時も自由な世界に走り出そうとする限り、彼らは決して傷つくことがない真っ白な状態でいられるという意味が込められていると自分なりに納得したわけだけれどもね。
by sentence2307 | 2004-11-06 12:02 | 北野武 | Comments(191)