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世界のあらゆる映画を偏執的に見まくる韜晦風断腸亭日乗


by sentence2307
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カテゴリ:テネシー・ウィリアムス( 1 )

実は今日、取引先の大事なお得意さん(とてもエライ人なのです)との約束の時間をすっかり忘れスッポカしてしまい、それはもう大変な目にあいました。

普段ならすぐに担当者に伝えて情報を共有するのですが(常日頃みんなにはそう言っている自分です)、大切なお得意さんでもあるので、挨拶がてら今日ぐらいは伺おうと思って誰にも言わずにいたのでした。

そんなときに限って、つまらないことで課にゴタゴタがシュッタイして、それに気を取られているうちに約束の時間がすでに30分は経ってしまったとオボシキ頃、そのエライさんから直接電話がかかってきました。

「いえ、決してお約束を忘れていたわけではございません」とかなんとか冷や汗もので誤魔化して1時間後に再び約束を取り付けることができました。

今度約束をたがえたら、もう取り返しがつきません。

年内に課せられているわが部の予算の達成が確実に危ぶまれる事態が招来します。

その会社まで歩いて5分と掛からない場所にあるのですが、約束15分前には1階のロビーで待機していました。

いかに緊張していたかがこれでお分かりいただけると思います。

しかし、いま思えばその緊張がいけなかったのかもしれません。

約束8分前に突然たまらない尿意に襲われ(ブルブルと胴震いしました)、我慢できそうにないので仕方なく焦りまくってトイレに駆け込みました。

冷静に考えれば、まだまだ時間は十分にあるのです。

「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせて、無事用も足し「さて」とチャックを上げようとしたところ、上がりません。

「よっ」とかなんとか頑張っても、何かに引っ掛かってしまったみたい(あとでよく見ると、チャックが布の部分を巻き込んでしまったみたい)なのです。

既に約束の時間まで5分を切っています。

いい歳をしたオヤジが朝顔の前で首を鋭角に俯けて何やら前のあたりをゴソゴソとやっていたのですから、第3者から見たら相当不気味な図だったに違いありません。

しかし、もうこれ以上の猶予はできない時間です。

そのままの状態でなんとか行く決断をするしかありません。

きつく締めたベルトにズボンの上の部分を託し込むようにして上に引き上げれば、閉まっていないチャックも、どうにか閉まっているようには見えます。

カバン(持っていって良かったです)を前に当てがってエックス脚歩きでエレベーターに乗り込み、ようやく約束の時間内にお得意さんの所に伺うことができました。

かつてゲリピーの時にこんなカタチで歩いたという記憶が脳裏をかすめ、我ながら実に情けない思いで接客室に通されました。

勧められたソフアに座るとき、約束の時間に間に合った安心感で少し油断していたこともあって、不用意に腰を下ろした途端、ズボンの前が全開し、慌ててカバンで前を隠しました。

カバンを頑なに膝の上に乗せて一向に手放そうとしない奇妙な訪問者に幾分怪訝な顔のお得意さんでしたが、商談も恙無くまとまりました。

帰りはエレベーターに乗る気にもなれず、非常階段で1階まで歩いて降りました。

重要な商談がまとまった安心感もあって、きっと上の空だったのかもしれません。

途中で若いOLとすれ違ったときに、脇を突然疾風のごとく死に物狂いの勢いで駆け上がっていく彼女の後姿を見ながら、ズボンの前が全開のまま歩いていたことをその時初めて知りました。

そのあと、遣り切れない思いで1階のトイレの個室の中でチャックが巻き込んだ布地を時間をかけて丹念にはずしました。

わが社に帰り、商談が無事終わったことを皆に伝えたとき、余程憔悴しきった表情をしていたと見えて、課の若い子に慰労の言葉などをかけて貰いました。

実はその彼女は、日ごろ短い休憩時間などにお茶を飲みながらよく雑談をしている若い女性たちのうちの一人です。

自分がもう少し若かったときは、一応彼女たちの「意識の対象」の端くれに位置していたときもあったのですが、いまはもうすっかり「おじん」なので、彼女たちの異性に対する余計な意識もすっかりなくなり、いまはもう彼女たちも結構本音で話してくれ、いろいろ勉強になっています。

まあ、「本音」とは言っても、もう少し上の年齢の女性たちのあからさまな「本音」と比べると、まだまだ恥じらいとか微かな見栄とかがあって、妙齢の女性たちの夢見るようなそんな感じが、また可愛いのですが。

そんな彼女たちと語らいながら、些細な言い間違い(「大河ドラマ」を「おおかわ」ドラマと言っていました)が少しずつ気になりだしました(持ち上げといて、落とすみたいでちょっと気が引けます)。

「おそかれはやかれ」の「早晩」をハヤ晩(どちらにしても、難しい言い回しですよね。なにも無理して言わなくとも)といっていました。

そして極め付けは、「横暴」を「ヨコ暴」と言い放ったときの衝撃です。

平然としている美しい彼女の顔をしばらく見とれてしまいました。

専務に急な仕事頼まれたときなんか、アクビ噛み殺した涙目でじっと見つめて脅かしてあげるの、と言っていた彼女です。

「横(よこ)暴という名の電車」―きっとテネシー・ウイリアムスだって感心しないわけがないと、しばらくの間そのことばかり考えていました。

もうなんでもいいや、というような捨て鉢な気分だったのかもしれません。

でも、ああいう人になら今にきっと、石川ブタ木だって現れてしまうかも知れないなと希望に似たような、あるいは絶望のような妙な気分にしばらくの間囚われてしまいました。

結果的に見ると、なんか彼女のことを悪く言っているみたいになってしまい、思ったことを上手く表現できないまま、あまつさえ趣旨に反して悪く言ってしまうという自分の文才のなさには、今更ながらホトホト愛想が尽きました。
by sentence2307 | 2005-10-08 00:05 | テネシー・ウィリアムス | Comments(0)